【取材レポ】両論表記で整理 介護福祉士養成校の国家試験義務化


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12月16日の社会保障審議会・福祉部会では、いわゆる「養成施設ルート」の国家試験義務化の先送りについて、賛成意見・反対意見の両論を記載する形で、議論の整理がされました。今後は福祉部会の手を離れ、政府与党の議論も踏まえて、取りまとめへと進みます。最後まで賛否両論が飛び交った、議論の内容を確認しておきましょう。

国家試験の義務化の背景

介護福祉士の資格取得には、下記の4つのルートがあります。

●養成施設ルート…介護福祉士養成施設で知識・技能を修得すると、国家試験を受験しなくても、卒業後5年間は、介護福祉士の資格を有する。5年以内に国家試験に合格する、もしくは5年間続けて介護等の業務に従事すると、介護福祉士の資格を保持できる。

●実務経験ルート…3年以上の業務経験と実務者研修等で知識・技能を修得した後、国家試験に合格する。

●福祉系高校ルート…福祉系高校で知識・技能を修得した後、国家試験に合格する。

●経済連携協定(EPA)ルート…EPA介護福祉士候補者として3年以上の業務経験を積み、国家試験に合格する。

資料:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)」より

2016年、介護福祉士の質や、国家資格としての価値の向上を目的に、養成施設ルートにも国家試験を義務化する法案が成立しました。2017年度から5年間の経過措置を経て、2022年度から、国家試験を義務化するというものです。

しかし、介護福祉士養成施設では、日本人の入学者が減少、国家試験の合格率が低い傾向にある外国人留学生が増加しているという現実があります。経過措置を終了してしまうと、人材不足が加速するという懸念がでてきました。

そこで、国家資格としての価値向上と、介護人材の確保という、質と量の観点から、経過措置を2022年度以降も延長するかどうかの議論が進みましたが、福祉部会では結論がでず、両論表記という形でまとまりました。

義務化延期への反対意見・賛成意見

養成施設のひとつである桃山学院大学の川井委員や、全国福祉高等学校長会の奥山委員からは、国家試験義務化の延期に対して、下記のような反対意見がありました。
●介護福祉士の資格の質を下げることになる
●福祉系高校は、学校数を減らしながらも、試験の合格率はあがっていて、卒業生は地域の介護を支える人材として活躍している。養成施設も合格率をあげる努力をすべき
●外国人留学生でも国家資格を目指してがんばっている人はいる。目指す価値のある国家資格であるべき

延期がやむを得ないのであれば、国家試験の受験だけでも義務化し、養成校ごとの合格率を公表することで、養成校を評価していくということも必要では、という意見もあがりました。

全国老人福祉施設協議会の鴻江委員や、全国介護福祉士養成施設協会の小林委員からは、下記のような、延期に賛成する意見がありました。
●現場では人材確保ができずに事業が継続できないような状況。人材を輩出する養成施設を存続させるためにも延期してほしい
●外国人留学生の受け皿としての役割も踏まえて議論を進めてほしい

福祉系高校の学生の声

全国福祉高等学校長会の奥山委員からは、福祉系高等学校に通う高校生たちのリアルな声が共有されました。
●国家試験義務化の延期の話を聞いて「福祉業界ヤバい」と思った。質の高い介護を提供するためには、全員が国家試験を受けるべきだと思う
●恒久的な延期に反対。資格を取るのは誰のためか、利用者のためだと思う
●これからは介護福祉士がリーダーにならないといけないのに、国家試験の義務化延期はいけないと思う
●福祉業界の評判が下がり、志望者が減り、悪循環になると思う

奥山委員は、「真摯に福祉を学んで、介護福祉士を目指す学生たちを失望させないためにも、国家試験を義務化すべき」と強く主張しました。

田中部会長は厚生労働省に対して、賛否両論の意見を踏まえて検討を進めることを求め、福祉部会での議論は終了しました。最終的な結論がどうなるのか、動向をチェックしておきましょう。

取材 :(株)エス・エム・エス 取材チーム

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