【取材レポ】「補足給付」見直し案で負担段階に新区分 食費負担の上限アップも


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12月16日の社会保障審議会・介護保険部会では、次期介護保険制度改定に向けた見直し案が厚生労働省から提示されました。

低所得者の施設入所に関わる食費・居住費を補助する「補足給付」では、利用者の負担段階が見直され、対象となる条件が細分化されています。

また、補足給付における食費の利用者負担額をアップする形で見直し案が示された一方、多床室の室料負担は据え置かれる方向で検討が進んでいます。利用者負担に直結し、各種請求業務にも関わる今回の見直し案を具体的に確認していきましょう。

利用者負担段階の見直し内容

現状の見直し案では、利用者負担段階を保険料の所得段階と整合させ、また応能負担の観点から年金等収入と資産基準のバランスを勘案します。その結果、利用者負担の第3段階が2つに区分され、第1段階~第4段階までの5段階に変更となります。

●第3段階の新たな区分条件
▼第3段階 ①…世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円超120万円以下
▼第3段階 ②…世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等120万円超

預貯金等の資産基準は、これまで負担段階に関わらず単身者で1千万円以下でしたが、補足給付を受けながら本人の年金収入で施設に15年(ユニット型個室であれば10年)入所できる水準を考慮した新たな基準が設定されました。

●資産基準の変更点
▼第2段階…預貯金等が単身で650万円(夫婦で1,650万円)以下
▼第3段階 ①…預貯金等が単身で550万円(夫婦で1,550万円)以下
▼第3段階 ②…預貯金等が単身で500万円(夫婦で1,500万円)以下

15年という数字の根拠は、介護保険三施設いずれの場合も、約98%の入所者が15年以内に退所しているというデータに基づいています。

食費の自己負担変更額

食費の補足給付は、一日あたり利用者上限額見直し案が以下のように示されています。
▼第1段階…変更なし
▼第2段階…600円(210円アップ)
▼第3段階 ①…1,000円(350円アップ)
▼第3段階 ②…1,300円(650円アップ)

所得段階ごとの均衡を図るため、第1段階から第3段階 ②まで、段階区分毎の差が300円~400円となるよう調整が行われています。

補足給付に関しては、これまでの介護保険部会の議論でも下記の意見があがっていました。
・介護給付費の増大に伴う給付と負担のバランスを確保すべき
・在宅介護サービスの利用者との公平性を考慮すべき
最終的にはこれらの意見が取り入れられた形となります。

多床室の室料負担は据え置き

補足給付の食費に利用者負担アップが提示された一方、多床室の室料負担見直しについては見送られる方向です。

見送りの主な理由は下記になります。
・医療サービスや在宅支援も提供する施設に、生活の場としての室料負担はなじまない
・介護療養型医療施設から介護医療院への転換を進めている中、その推進にブレーキをかける

これらの見直しに慎重な意見が考慮され、介護医療院など施設の機能や医療保険制度との関係も踏まえて「負担の公平性の関係から引き続き検討を行うことが適当」とされました。

今回の補足給付見直し案について、日本医師会常任理事の江澤委員からは「利用者に対して直接説明するのは現場職員。補足給付の導入時には現場が大変苦労した。現場の負担を抑える方策も検討してほしい」と、利用者負担増で生じる説明対応などへの配慮を求める声が上がっています。

また、利用者負担段階が資産基準でも変更となる点については、預貯金等の増減による負担段階の変更を懸念する声も委員からあがっていました。

介護保険部会では、次の介護保険制度改定に向けた取りまとめが佳境を迎えています。2040年まで持続可能な制度を見据え、利用者負担、事業所運営に関わる制度にも様々な変更が入ることが予想されます。引き続き、議論の様子をチェックしていきましょう。

取材 :(株)エス・エム・エス 取材チーム

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