株式会社ヒューマンアフィニティー はすぬま訪問介護事業所vol.1 ヘルパーのほとんどが男性という強みと高いサービス理念で黒字経営を可能に


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東京・板橋区にある「はすぬま訪問介護事業所」は、職員の平均年齢が30代と若く、困難事例も積極的に受ける。「365日サービス提供」「ヘルパー全員が常勤で、サービス提供責任者と同じ仕事を行う」「直行直帰をしない」など、高い理想を掲げ、事業に取り組んできた。代表取締役を務める萩原健市さん(27歳)と、専務の斉藤有俊さん(39歳)に、ぶれない理念と黒字経営の秘訣を3回にわたって聞く。

「もし失敗してもやり直せる」そこから会社設立を決意

――株式会社ヒューマンアフィニティー(はすぬま訪問介護事業所)の皆さんは、ほとんどが東京福祉専門学校の卒業生だそうですね。現在代表取締役の萩原さんは27歳とお若いですが、なぜ介護の仕事を志し、会社も設立したのでしょう?

 

萩原 僕は、大学を中退してメガネチェーン店に勤務していたのですが、だんだん「このままでいいかのかな」と疑問を持つようになりました。たまたま僕の母と姉が介護の現場で働いていたので、僕も介護の資格を取れば仕事には困らないかなと思って、2010年に東京福祉専門学校の2部(夜間)に入学しました。
ですから当時は、とにかく資格を取ることが目的で入学したという感じですね。そのとき、同じクラスにいた現専務の斉藤と出会い、2年生の前半のころだったか、「一緒に介護の会社を立ち上げないか」と誘われたんです。

 

斉藤 僕は、ビジネスとして介護事業をやりたいと思って、東京福祉専門学校に入学しました。特別養護老人ホームで実習をしたとき、介護という仕事には決まった答えがないというか、こちらの対応で相手の反応が違ってくるのでおもしろい、本格的にやれば楽しみながらビジネスができるのではないか、と思ったんです。
ただ、施設などハコモノのなかでのサービスには制約や違和感を覚えていたので、ハコの外のサービスがいいと思い、やるなら訪問介護事業にしようと考えました。

 

萩原 最初に専務から誘われたときは、正直を言って迷いました。僕には就職という道もあったし、会社を作って経営していくとなるとリスクもある。安定を求めるなら就職のほうがいい。でも、介護業界は給料が低いといわれている。会社を立ち上げればその逆もあるかもしれない。自分も成長するかもしれない。そう考えて、会社を立ち上げることを選びました。

 

――お2人は、もともと仲が良かったんですか?
萩原 専門学校時代、一緒に住んでいました。ある日突然、専務が「一緒に住まわせてくれる?」って僕の家にやってきたんです(笑)。
斉藤 そうです(苦笑)。

――でも、単に仲が良いだけでは会社を一緒に立ち上げるというのはできないですよね。なぜ斉藤さんは、萩原さんに声をかけたんですか。しかも、いきなり社長職を任せるとは。

 

斉藤 会社設立に際して僕が目標としていたもう1つは、「人を育てる」ということだったんです。萩原はのほほんとしているようでスジが通っていて、自分がこうだと思ったことは譲らない。そのスジを太く育てるとおもしろい人間になると思いました。
でも、立ち上げ時の萩原は経営感覚がまったくなかった。「立ち上げに必要なお金がない」と僕が言ったら、萩原は「あるよ。30万円」と言う。30万円あれば大丈夫だと思っている、まずその感覚から直さないといけないなと思いましたね(笑)。

 

萩原 専務はそれまでに料理店も複数経営していたりと、経営の知識と経験はすでに持っていたので、もし失敗したら自己破産という方法もあることなども教えてくれました。僕はまだ20代なので、何かあってもやり直しができると思ったことも、会社立ち上げを決意した理由です。

 

斉藤 自己破産の話をしたのは、そこまでリアルに想定しておいてもらわないといけないと思ったからです。一緒に会社を経営するということは、「いざとなったら一緒に死んでくれ」ということですからね。利益がマイナスになったときの負担も全部自分で負うんだということを納得のうえで経営していくんだということ。実際いまも僕ら2人は、自分が給与を得る前にまずスタッフに給与を払うことを優先しています。

 

会社設立の準備と、365日サービスを提供、ヘルパー全員が常勤で責任をもつ理念について

 

――会社を立ち上げると決めてからは、どのように準備を進めたのですか。

 

萩原 まず事業計画書を作って専門学校の先生に見てもらい、「こんなの現実的じゃない」と何度もダメ出しされて書き直して、2年生の後半あたりにようやく現実的な事業計画書ができました。その先生も、自分で訪問介護事業所を立ち上げた経験のある人だったので、その指導は参考になりましたね。また、男性ヘルパーが多いと女性ヘルパーでは難しい力仕事などに対応でき、事業所として大きな売りになるということもその先生から教わって、僕らも男性ヘルパーを多くそろえようと決めたんです。
その後、2013年春に卒業して介護福祉士の国家試験にも合格し、同じ年の5月に会社の登記をして、7月に「はすぬま訪問介護事業所」の開業にこぎつけることができました。また、卒業してから会社設立までの空いた数ヵ月間は、アルバイトもして設立資金をためました。

 

――はすぬま訪問介護事業所(以下、「はすぬま」)では、365日休まずにサービスを提供していますね。

 

萩原 365日サービスを提供しているのは、専門学校の先生たちから「人の生活に休みはないのだから、サービスにも休みはない」と教わっていたからです。また、ヘルパー全員が高いスキルと責任を持って仕事をしなければいけないと僕らは考えているので、すべてのヘルパーが常勤でサービス提供責任者(サ責)と同じ仕事をし、訪問介護計画書も作ります。もちろん、最終的なチェックやサポートはサ責が行いますけどね。
直行直帰も認めておらず、ヘルパーは訪問する前に必ず事務所に立ち寄り、訪問が終わったら事務所に戻ってその日の報告や記録をします。そのためか、ご利用者からのクレームは少ないですし、「このご利用者は何か不満を抱えていそうだな」というときは早く気づいて対応できるので、クレームになる手前で解決することができています。こうしたサービス理念の統一は、ふつうの事業所ではなかなか難しいはずですが、うちの場合はスタッフのほとんどが同じ専門学校出身者なのでしやすいといえます。

 

――専門学校の先生の存在は、皆さんにとってとても大きなものだったようですね。

 

萩原 そうですね。僕らの卒業した年は、介護福祉士国家試験が専門学校修了者にも課されるようになった最初の年だったので、先生たちも全員合格させようといつもの年以上に真剣だったといえます。僕らも2部の学生だったので、クラスメートはみんな社会経験があって、「ここで資格を取って、介護の仕事をするんだ」という目的をはっきり持っている人たちばかりだから真剣だった。だから、開業した今でも先生たちは僕らがどうしているか気になるようで、「はすぬま」によく顔を出してくれますし、そのたびに「これはもっとこうしたほうがいい」と厳しく指導してくれます。

斎藤 専門学校の先生だけでなく、ご利用者の皆さんや、町会の皆さんにも、僕たちは育てられています。うちの事業所は地元の町会にも参加していて、夏祭りになると「はすぬま」のスタッフたちも焼きそばを焼いたりしている。町会は高齢化していて若い人が少ないので、うちのスタッフは貴重な若手ということで期待されているようです。
また、東京福祉専門学校の学生にもボランティアで来てもらって、一緒に焼きそばを焼いてもらっています。それがきっかけで卒業後はうちの会社に就職する学生もいるので、町会のおかげでうちの会社は人材の確保や育成ができているともいえますね。萩原もご利用者や町会の皆さんにもまれて、社長らしくなってきました(笑)。僕が楽になる状況まで成長してくれているなと思います。

職員の平均年齢は30台と若い

スタッフをのせて楽しませて良い人間関係をつくる

 

――スタッフ同士もいい関係ができているようですね。
萩原 みんなの性格や持ち味がそれぞれに違って、いいバランスが保てていると思います。例えるなら、専務はアクセルで、僕はブレーキ、あるスタッフはもっと強いブレーキ、また別のスタッフは組織の精神的支柱になっている……というように。

斎藤 組織をまとめるには、「ノリ」も大事だと考えています。僕らが楽しくしていると、スタッフたちも楽しくなると思う。だから、僕がバカになってみんなをのせて楽しませるようにしています。言い換えると、萩原が厳しいお父さん役で、僕はほめてほめてほめまくるお母さん役をやっているという感じですかね。

萩原 うちは365日サービスを提供しているので、大みそかもスタッフが事務所に集まるんですが、そのときは専務がかつての料理店経営の腕を生かして、鍋料理を作ってくれるのが恒例なんです。

斎藤 5時間ずっとコンロに張り付いて鶏白湯(とりぱいたん)を作り、訪問から帰ってきたスタッフにふるまっています(笑)。

――本当にお母さんみたいですね(笑)。

株式会社ヒューマンアフィニティー
はすぬま訪問介護事業所

●所在地
〒174-0052 東京都板橋区蓮沼町73-13 102
TEL. 03-6279-8341
●会社設立:2013年5月
●はすぬま訪問介護事業所の開設:2013年7月
●従業員数:2015年9月現在13名(うち正社員5名、アルバイト4名)

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