マイナンバー対策~何をどうする?~
パート職員の給与支払いにもマイナンバーが必要に
しかし、事業主にとっては便利になってよかったと、喜んでばかりいられない一面もある。
たとえパート職員数人しかいない事業所であっても、給与支払いの際などにマイナンバーが必要となり、目的外利用の禁止や廃棄、番号漏洩に対する安全管理体制の構築など、その取扱いにはかなりの慎重さが求められるからだ。
そのため、実際に職員からマイナンバーを集める前に、さまざまな準備をしておかなければならない。
関連業務の洗い出しと収集・保管方法の確認が大切
では、具体的に事業所では、どんな準備が必要になるのだろうか。
1.関連業務の洗い出しおよび担当者の確認
「関連業務」というと漠然としてわかりづらいかもしれないが、以下のように「どんな場面で、どのような書類に記載するのか」を挙げていくことで、自ずとその範囲と担当者(担当部署)がはっきりしてくる。
・t雇用保険の加入と脱退(資格取得届、資格喪失届)、育児休業給付(育児休業給付受給資格確認票
・(初回)育児休業給付金支給申請書)など(平成28年1月1日以降に発生する手続きから)
・t社会保険の加入と扶養、脱退の手続き(資格取得届、被扶養者異動届、資格喪失届)など(平成29年以降)
・t税務関連:扶養控除申告書、給与や退職所得の源泉徴収票(税務署へ提出する分)など
(平成28年1月1日《一部は29年1月》以降に支払いなどするものから。)
ちなみに介護保険の分野では、今後保険給付や保険料の徴収といった事務にマイナンバーを活用することが決まっている。また、2021年以降、預金口座とマイナンバーの連携義務化も検討されており、補足給付の判定にもこれらを利用していくことになるであろう。
2.収集や保管など、取扱い方法の確認
しかし、事業主にとっては便利になってよかったと、喜んでばかりいられない一面もある。
マイナンバーを扱う業務の特定ができたら、次はマイナンバーをどのように集め、保管するのかを考えてほしい。
収集の方法としては、漏えいリスクを考えると、非常にアナログだが、専用封筒にマイナンバーを書いた紙を入れて封をしてもらい、それを直接事業所に持ってきてもらうか、郵送の場合は簡易書留等送受の記録が残る方法で送ってもらう、というのが一番確実ではないかと思う。
保管については、カギ付のキャビネットで保管する場合にはカギの管理者を決める、また、データとしてパソコン内に保管しておく場合にはアクセス制限をかけるなど、マイナンバーを扱う部署の責任者や事務担当者以外は直接触れられないよう、対策を施しておく必要がある。
管理するのはあくまでも人であり、組織であるという認識こそが大事
マイナンバー制度開始に合わせ、事業所のセキュリティ強化のための商品や、ITサービスなどの営業が激化している。「マイナンバーを漏らしたら、すぐに刑務所行きですよ」などと間違った情報で不安ばかりを煽り、高額なシステムの導入を迫る悪質な業者もいると聞く(故意・悪意なくうっかり漏らしてしまった場合であれば、すぐに実刑になるということはないのでご安心を)。
もちろん、インターネットやIT機器にセキュリティ対策を施すのは非常に大切なことだが、だからといってすべての漏えいリスクを排除できるわけではない。
いくら高額なシステムを入れても、そこに携わる人間が危機意識を持ってそれらを扱わなければ何の意味もない。書類でもデータでもそうだが、扱うのは人であり組織なのだ。
「うちでは誰が(どこが)、どんな手順で収集し保管するのか」「そこにどんな漏洩リスクがあるのか」をまずはしっかりと考えたうえで、足りない部分をITで補う、というのがマイナンバー対策の基本である。
「このシステムさえ導入すれば安心」などという業者の口車に乗せられることのないよう、ぜひ冷静に対応していただきたい。
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執筆者:五井淳子