在宅医療を支える新しい製品開発とは?日本のイノベーションを支えるNEDOの取り組み


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在宅介護にかかせない福祉用具 その最先端は?(NEDOの動向)

石塚 訪問介護のスタッフの方に福祉用具のイメージを聞くと、車いすや介護用ベッドと答える方が多いのではないだろうか。 しかし、利用者の自立支援に役立ち、介護者の負担を減らしてくれる福祉用具は実はたくさんある。
NEDOは1980年に発足し、経済産業省や大学やベンチャー企業などと連携を取りながら、エネルギー・地球環境問題の解決、産業技術力の強化を目的に活動している機関だ。とくに産業技術力開発の中で、政府や経産省は医療・介護におけるロボット技術開発も注目している。いままでNEDOでどのような開発をサポートしてきたのだろうか。

 

NEDOの行っている具体的な支援とは

村越正毅さん 我々が介護分野で行っている事業は「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」です。開発期間は3年以内で、年間最大 2000万円以内(3年最大6000万円)で、助成率2/3以内で支援を行います。いままでの実績としては、平成5年度から平成26年度までに216件を採択してきました。
審査に協力していただいている先生たちは、人間工学、機械工学、リハビリなどの領域を研究している方たちです。日本生活支援工学会とも連携をしながら審査を進めています。「課題解決型福祉用具実用化開発支援事業」の基本計画の中で助成の対象となる研究内容を下記のように定めています。
開発助成事業の内容(概要)
i)「少し不自由な高齢者」を対象とした福祉用具の研究開発
今後、急増が予想される「少し不自由な高齢者」(要支援および要介護度1の人のことをいう)の身体機能の維持、要介護状態の予防、自立支援対策等に役立つ福祉用具の開発。

ii) 高齢者および障害者のQOL向上を目指した福祉用具の研究開発
高齢者や障害者にとって日常生活動作がより円滑になったり、就労が可能になったりするなどQOLの向上に資する福祉用具の開発。

iii) 高齢者および障害者の社会参加を支える福祉用具の開発
急速な高齢社会の進展に伴い、バリアフリーの推進等、高齢者や障害者の積極的な社会参加(ノーマライゼーション)を支援し、豊かさを実感できる社会の実現に資する福祉用具の開発

動機器、パーソナルケア製品などが支援の対象に

石塚 NEDOが支援した福祉用具は「福祉用具の実用化を助成」という冊子にまとめられている。NEDO事業の中では機器類は7つに分類されている。
1、リハビリテーション
2、義肢、装具
3、パーソナルケア関連用具(ベッド周り、トイレ・おむつ、入浴、日常生活、健康データ計測機器)
4、移動機器(車いす、車いす関連用品、移動・移乗補助、障がい者用自動車運転装置)
5、建築住宅設備
6、コミュニケーション機器
7、スポーツ・レクリエーション機器

開発比率をみてみると、移動機器が66件、パーソナルケア関連が60件、コミュニケーション機器が40件、義肢・装具が21件と続いている。「福祉用具の実用化を助成」の中では全ての製品概要が紹介されているが、その中でも最新の注目用具はなんだろうか。

車いすのまま乗車できるバイク(ホイールチェアビークル)

重本明彦さん ご紹介したい製品の一つに電動三輪車「ホイールチェアビークル」があります。簡単に説明すると、車いすのまま乗れる原付バイクです。この製品は、販売開始してみると実は高齢者の方にニーズがあることが分かりました。
地方在住で、高齢者で一人暮らしになった場合ですが、近所のスーパーまで3キロあるという状況は今後増えてくるでしょう。電動車いすでカタコト、1時間くらいかけてスーパーなどに通っていた方などはかなり不便さが解消されると思います。
※「WCV ホイールチェアビークル」のウェブサイト
http://yds-wcv.jp/”>http://yds-wcv.jp/”>http://yds-wcv.jp/

筋隆起センシングにより操作する対向3指の電動義手(Finch)

重本明彦さん いままでの義肢は神経系の電気信号を使ってセンシングする義肢がほとんどでした。神経系のセンシングには比較的高価な仕組みが必要で、また見た目にもこだわっていくと価格が数百万円になっていました。我々の支援した製品は筋肉の隆起をセンシングに利用して、さらに見た目は人の手に似せずに、機能性とデザイン性を重視しました。
また3Dプリンタを使って制作することを可能にして、コストと販売価格を大幅に下げることができました。実際の手と同じような外観でなくても、生活を支援するという意味では非常にすぐれた電動義手です。今後の潜在的な需要が非常に高い製品だと思っています。
※「Finch:筋隆起センシングにより操作する対向3指の電動義手」のウェブサイト
http://homepage2.nifty.com/d-design/research.html
http://www.design-lab.iis.u-tokyo.ac.jp/project.php?id=finch

現場と開発者の連携から発想が生まれる

村越正毅さん いままでは利用者さん個人にパーソナライズするものが多かったのですが、介護保険の中で使われる製品だけに特化していると開発・販売事業者の利潤は少なくなります。今後は、我々の方でも高齢者・障がい者の方たちに共通する課題を見つけて、さらには福祉の領域だけでなく、健常者の方たちにも使ってもらえる製品開発につなげていきたいと思っています。
例えば、ウォシュレットや電動アシスト自転車のような製品です。これらはもともと、疾病のある方や高齢者の方たちのために開発されて、それが便利ということになり改良されてマーケットが広がりました。介護保険の中だけで完結するよりも、一般的に普及していくことがコストを下げて、より良い社会発展につながると考えています。

 

重本明彦さん より良い製品開発のためには、現場の声がもっと必要だと考えています。今まで介護の現場を取材して分かってきたことは、現場の方たちにテクノロジーの導入による効果を理解してもらうことでした。マネジャーの方たちを含め、施設のキーマンとなる方への事前の情報提供や、現場のやり方をブラッシュアップしながら連携を強めて、ヒアリングを強化したいと思っています。
ホイールチェアビークルを支援したときにも感じたのですが、インフラが整った都心部と、地方での介護課題は異なっています。地方の課題解決で役に立つ製品は、世界で広く通用する製品になる可能性が高いと思っています。

 

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