平成25年度 高齢者虐待防止法等の対応状況に関する調査結果について


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年々増加している通報件数、虐待判断件数

平成18年4月1日に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」いわゆる「高齢者虐待防止法」が施行されてから国は毎年度ごとに対応状況をまとめ資料を公表しています。

 

高齢者虐待と一括りに表現していますが、対応状況の調査結果の内容を見てみると『養介護施設従事者等による高齢者虐待』と『養護者による高齢者虐待』というふうに大きく分けて2つに分類されています。
『養介護施設従事者等による高齢者虐待』とは特養や老健等の介護施設や有料老人ホームまたは、訪問介護や通所介護などの介護事業に従事した職員が起こす高齢者虐待であり、一方『養護者による高齢者虐待』とは高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等が起こす高齢者虐待のことを言います。
今回は『養介護施設従事者等による高齢者虐待』を主体として取り上げたいと思います。

図1を見てお分かりのように平成25年度の相談・通報件数は平成24年度の736件を大きく上回る962件となっており、虐待判断件数も平成24年度の155件から60件以上も増加した221件と大幅に増えております。また、平成18年度の高齢者虐待防止法が施行後、相談・通報件数、虐待判断件数ともに、平成21年度を除くと毎年のように増加の一途を辿っております。

 

養介護施設従事者等による高齢者虐待

養介護施設従事者等による高齢者虐待における相談・通報者の内訳は、相談通報者の合計1,154 人に対して、「当該施設職員」が34.9%と最も多く、次いで「家族・親族」が19.2%、「当該施設元職員」が10.1%となっており、「本人による届出」は2.1%となっています。

※ 1 件の事例に対し複数の者から相談・通報があった場合、それぞれの該当項目に重複して計上されるため、合計人数は相談・通報件数962 件と一致しない形となっています。

事実確認の状況については、相談・通報の受理から事実確認開始までの期間の中央値は、回答のあった781 件では4日となっており、このことから行政も虐待の通報受理から事実確認までは素早く対応していることが伺えます。また、相談・通報の受理から虐待確認までの期間の中央値は、回答のあった159 件では13 日となっています。

市町村の任意・自由記載を集計した虐待の発生要因として最も多かったのは「教育・知識・介護技術等に関する問題」で、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ」となっています。

教育・知識・介護技術等に関する問題がトップにきていますが、私も職員研修などをさせてもらう時に、職員間における身体拘束の知識差を感じることがあります。介護経験が少ない新人さんやまだきちんと研修を受けていない職員さんなどは何が身体拘束にあたるのかを知らないことが多々あります。
そのため、自分が大変だからという理由で安易に拘束を行ったりすることがあります。経営者さんや管理者さんはこの辺の知識は入職後速やかに教えることをお勧めします。

 

基準省令上、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」には身体拘束が認められていますが、これは、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たし、かつ、それらの要件の確認等の手続きが極めて慎重に実施されているケースに限られています。また、教育する際は併せて言葉による身体拘束という考え方も教えておくほうが良いです。

虐待の内容

虐待の内容について、被虐待高齢者が特定できなかった9 件を除く212 件の事例を対象に集計を行い、1 件の事例に対し被虐待高齢者が複数の場合があるため、212 件の事例に対し被虐待高齢者の総数は402 人となっています。
その結果、虐待の種別(複数回答)は、「身体的虐待」が64.2%と最も多く、次いで「心理的虐待」が32.8%、「介護等放棄」が16.7%となっています。

 

私が行う研修でこの虐待種別の順位当てを職員さんに行ってもらいますが、予想のなかで1位に予想されるのが「身体的虐待」と「心理的虐待」となっております。
「心理的虐待」とは威嚇的な発言、態度、侮辱的な発言、態度、高齢者の意欲や自立心を低下させる行為などが含まれます。先程述べた言葉による身体拘束というのがこれにあたる部分です。身体的虐待などは傷痕などの証拠が残るため発見が比較的容易ですが、心理的虐待は隠れた場所で行われると非常に発見がしにくいものです。
そのため、正しい知識や経営者さん、管理者さんがいない場面でも職員同士きちんと監視しあえる環境を作っておく必要があります。

虐待を受けた高齢者の性別割合を見てみると「男性」が27.9%、「女性」が71.9%と、全体の7 割強が「女性」という結果がでています。ただ、これは介護サービスを受けている男女比がほぼ同じぐらい割合なので特別に女性が多いというわけではなさそうです。

 

要介護状態及び認知症具合で見てみると「要介護5」が28.1%と最も多く、次いで「要介護4」が25.6%、「要介護3」が24.4%であり、合わせて「要介護3 以上」が78.1%と8 割弱を占めています。また、「認知症高齢者の日常生活自立度?以上」の者は84.8%となっており、重度者で認知症がある方が虐待を受けているケースが多いという結果になっております。

 

虐待を行った養介護施設従事者等(虐待者)の状況

虐待者の性別は、不明を除くと「男性」141 人(51.8%)、「女性」131 人(48.2%)となっており、虐待者の男女比については、介護従事者全体(介護労働実態調査)に占める男性の割合が21.4%であるのに比して、虐待者に占める男性の割合が51.8%であることを踏まえると、男性の割合が高いという結果になっております。職種においては「介護職」が78.3%、「管理職」が7.7%、「看護職」が5.5%という結果になっております。

 

以上が、簡単ですが平成25年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果をまとめた内容となっております。

 

最後に虐待は絶対にしてはいけない事項です。私も『高齢者の尊厳』というテーマで虐待や身体拘束における研修を職員さんに行うことがあります。多くの職員さんは真剣に聴講し、現場へと持ち帰ってくれていると思っています。ただ、虐待には1人1人の職員さんの意識を高めるだけは限界があり、組織として迅速に対応すべき面があるものだと思っています。

 

例えば虐待を起こしそうな可能性もしくは疑わしい職員がいた場合にどのように組織として対応するか?職員に暴力、暴言を振るう利用者さんがいた場合にどのように組織として対応するのか?どちらも放置すればいずれ虐待が起こるだろうと思われます。とくに経営者さんや管理者さんは新聞やニュースでは取り上げられない暴力、暴言を振るう利用者さんや何もフォローをしてくれない家族さんの問題等に対応していかなければなりません。

 

虐待については1人1人の職員さんの意識を高めるとともに組織として迅速に対応する。例えば困難利用者さんなどは行政に連絡して一緒に対応を考えてもらうなど、現場だけでは対処しきれないなら他を巻き込む必要性があります。経営者、管理者さんはその辺も意識しなければいけないと思います。

 

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