飯島惠子さん(NPO法人ゆいの里 代表)地域の”もったいない力“を活かして。互いにささえ合うまちに Vol.2「街中サロンなじみ庵」


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飯島さんインタビュー2回目は、西那須野駅のすぐ近くにある「街中サロンなじみ庵」。ここの会員数は100名以上、70歳~100歳の要支援や要介護の方、障がいをもった方が、たがいにゆるやかにささえ合う「居場所」として、ここにやってくる。主役はあくまでも地域のみなさん、自分たちスタッフは「つなぎ役」であると飯島さんは語る。

「きょういく」と「きょうよう」が大事

デイホームホットスペースゆい」から車で3分ほどのところにある「街中サロンなじみ庵(以下、なじみ庵)」。オープン時間の9時を過ぎると、徒歩や、家族による送り、あるいは会員や地域のボランティアによる無料送迎車「なじみ庵号」で、会員が三々五々集まってくる。

なじみ庵の食堂では、すでにランチの準備が始まっている。取材の日のメニューは、月に一度の手打ちそばランチ。ボランティアのそば打ち名人が心を込めてつくったざるそばで、好評だ。そばに添えられるてんぷらの食材は、会員が自分の畑から届けてくれたもの。配膳や食器洗いなどを担当するのも女性会員を中心としたボランティアたちだ。

 

食堂の隣の部屋はフリースペースとなっていて、午前には「転ばぬ先の知恵教室」と「もの忘れ知らず教室」が開かれていた。まずは80歳代、90歳代の会員のリードで、自分たちがつくった「なじみ庵の歌」を合唱し、「なじみ庵体操」で体を動かす。もの忘れ知らず教室は、なじみ庵を運営するNPO法人ゆいの里代表の飯島惠子さんがファシリテーターとなって進められていく。その中で飯島さんは、「70年前、何歳で何をしていましたか」と皆に問いかける。折しも、終戦記念日を過ごしたばかりのこの日、東京大空襲に遭い池袋から本郷まで歩いて逃げた人、女子挺身隊に入っていた人、シベリアに抑留された人など、一人ひとりが自分の人生を語り、同じ時代を生きた仲間たちが耳を傾ける。すでに成人して職場にいた人、まだ小学生だった人、お父さんを戦争で失った人。さまざまな人の大切な人生が浮き彫りになる。お互いの70年前と向き合うことで、一人ひとりの存在がくっきりと鮮やかに蘇る。

 

おいしいざるそばと天ぷらに舌鼓を打ち、皆でワイワイお喋りして、コーヒーやお茶でくつろいだ後、フリースペースの一角では、折り紙が始まった。はさみで切りこみを入れた複雑な折り紙を器用な指先で折っていく。男性会員たちは、というと真剣な眼差しで麻雀卓を囲み始めている人も・・・。なかには女性会員もちらほらまざる。

 

会員たちの合言葉は「年をとると、“きょういく”と“きょうよう”が大事」。行きたい場所がある、会いたい人がいることを楽しみに、今日もなじみ庵に会員たちは集まってくる。

そば打ち名人のお二人のざるそばは大好評だ

──なじみ庵の会員の皆さんは、「年をとると、“きょういく”と“きょうよう”が大事」と口々におっしゃいますが。

“きょういく”と言っても”教育“ではありませんよ(笑)。「今日、行くところがある」ということ。”きょうよう“は「今日、用事がある」です。今日行く場所があり、今日すべき用事があり、見守ってくれる仲間がいれば、たとえ高齢であっても、認知症であっても、ささえられる人ではなく、互いにささえ合う人になれると思っています。

 

──「デイホームホットスペースゆい」も“互いにささえ合う”ことを大切にしていますね。

たとえ介護度が高くても、その方はまだまだ“もったいない力(自己資源)”をたくさん持っています。要介護の方ばかりの「デイホームホットスペースゆい」では、皆さんそれぞれに役割を担っています。ならば、街中の居場所に集うもう少し元気な高齢者であれば、もっともっとたくさんの“もったいない力”を持っているはず。そういう地域の高齢者の力を活かしたら、介護保険サービスじゃない地域の居場所で、お互いにささえ合うことができるのではないかと2005年に、街中サロンなじみ庵は開店して10年になります。

 

でも、現状はなかなか出かけて来る気持ちにならなかったり、足を運ぶことが面倒だったり、まだ、自分は大丈夫と“きょういく”と“きょうよう”がない高齢者は家に閉じこもりがち、足腰が弱くなってますます引きこもってしまいます。意欲は低下し、うつ状態に陥ったり、認知症を発症したり。その結果、介護保険の申請をして要介護認定を受け、介護保険サービスを利用するという流れをたどりがちです。公民館での趣味活動ができなくなって、次に出かけるのがデイサービスというのは、なんか変ですよね。要介護認定を受けて、共助の介護保険サービスを利用する前に、高齢者の自助と互助を活かす取り組みや安心して集える居場所が大切ですね。なじみ庵は、地域の中で互いにゆるやかにささえ合い、たとえ老いても、認知症になっても、今までどおりにすこやかに生活できるよう、さりげなくささえていく“居場所”であり続けたいと考えています。

なじみ庵体操で楽しく体を動かす

──なじみ庵の概要をご紹介ください。

なじみ庵の会員は市内居住の65歳以上で、なじみ庵規約に賛同した方たちです。福島から避難されている方は特別会員です。現在、会員数は100名以上で、平均年齢は男女共に約80歳です。会員には、要支援や要介護の方、障がいをもった方も多くいます。月会費は250円で、会員は支えあう人である印にボランティア保険(300円)に入っていただきます。昼食は会員の方は一食300円(一般500円)で提供しています。ちなみに、ここは、飲食店営業許可を取っているので、どなたにも利用していただけるまちの食堂です。なじみ庵は月曜日から金曜日の午前9時から午後5時までオープンしていて、毎日、「切り絵を楽しむ会」「踊りを楽しむ会」など何かしらの自主活動が行われています。皆さん、好きな日に来て、好きな活動に参加されています。

 

──なじみ庵のスタッフはどんな方たちですか?

ゆいの里の職員がコーディネーターという形で、必ず1名がここに張り付いています。スタートした当初は非常勤も含めて2、3名のスタッフを配置していましたが、会員の自主的な動きを尊重するために、そして、人件費の抑制のために、必要なときにゆいの里の本体にいる看護師、ソーシャルワーカー、介護支援専門員、介護福祉士が裏支えしています。元気な会員さんたちですが、皆さん、病気は持っていますし、要支援や要介護の方もいて、デイサービスやショートスティ、訪問介護を利用しながら、ここに通っている人もいます。地域包括支援センターからの紹介や相談も多く、連携や情報共有が欠かせません。コミュニティ・ケアマネジャーの立場で、会員の心身の様子や体調の変化に、目を配っています。表情や会話の様子、歩行、食事量など、必要のある方はアセスメントします。これがとても重要で、必要に応じて家族や地域包括支援センターと連絡をとり、医療や介護保険につないでいます。いままでにもそういったケースがいくつもありました。

 

──すると、運営は主に会員のボランティアによって成り立っているのですね。

はい。毎日のランチづくりや食器洗いだけでなく、会員がなじみ庵に来るための送迎車の運転も会員が行っています。なかには、なじみ庵の上にあるマンションからランチを食べに来られたのをきっかけに会員となり、送迎の手が不足しているのを知って自ら送迎を買って出てくださった方もいます。また、皆さん、たいがいは、なじみ庵に着くなり、「何か私のやることない?」と聞かれます。芋の皮むきをしたり、お皿を並べたり、自主活動のために椅子を用意したり。朝早めに来て、掃除やふきん干しを手伝うなど、一人ひとり自分のできることを見つけて何かしらの“用事”をこなしています。もっと言えば、仲間がいて互いに気遣うだけでも立派な用事。まさに、「“きょうよう”がある」、です。

 

──なじみ庵には男性会員がたくさんいるのも印象的です。

ここには気立てのいい女性会員が多いですから(笑)。用事をする、しないはその方に自主性に委ねていて、ここでは何々をしなくてはいけないという強制はありません。ここは自由だからいいんだよという声を聴いたことがあります。ひとり暮らしの男性には、熱い味噌汁とおふくろの味のランチもかなりの魅力になっていると思います。家に閉じこもっていた方がここで麻雀仲間を見つけ、毎日のようになじみ庵に来るようになったり、気づいたら、なじみ庵の前のマンションに引っ越ししてきてた方もいます。「仲間がいる、居場所がある」ということは、それぐらいに行動変容を促すものなんですね。

 

──ここを運営するうえで心がけていることは何ですか。

ここの主役はあくまでも地域のみなさん、高齢者のみなさんです。地域でささえ合うひとづくり、まちづくりの「場」として機能できるように、と考えています。なじみ庵のスタッフはコーディネーター、人と人をつなぐ「つなぎ手」です。会員のみなさんの主体性と自己決定を尊重しながら、なじみの関係をつくるための「居場所」づくりを心がけています。「ここに来るとほっとする」「自分でできることをして活動したい」「何かお役に立ちたい」そんな地域のニーズを見つけて、社会資源を探し出したり、自己資源を活かして、自らがやりたいと思うこと、自主的な活動ができるような場所や仲間ができたらいいなと、その環境づくりをしています。

会いたい人がいる 行きたい場所がある幸せ・・

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