地域の問題を解決する人は地域から輩出される

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社会保障分野では、介護だけでなく子育てにもニーズがたくさん

これから子育てをしていこうという女性に話を聞くと、「出産を機に職場を退職して、保育園に上がると同時に同じ仕事に復帰する。」と答える人が多い。しかし、子育てには「保育園入園の壁」、「小1の壁」、「小4の壁」と呼ばれる3つの壁があるといわれている。

まずは入園の壁。無事に子供を出産したとしても、公立の保育園を見つけるのが難しく、入園のタイミングを逃すと、仕事への復帰も遅れてしまう。また無事に入園できたとしても、延長保育を利用しても18:00、19:00までのタイムリミットがあり、移動時間を考えると17:00、18:00の定時にしっかりと業務を終わらせないといけない。職場からの理解をもらうのも一苦労だ。子育てを先行している友達から話を聞いて、子育ては大変という負のイメージがついてしまい、「キャリアを捨てないといけないのでは」と思い、結婚・育児に積極的になれない方もいるだろう。

 

延長保育には助かっていたけれど、小1になると授業が15:00頃に終わってしまう。その場合は、新たに学童を探さなくてはならない。しかし、この学童が保育園と比べて手間がかかる場合があるのだ。保育園の延長保育よりも、預けられる時間が時間が短くなってしまったり、夏休みは朝の預かりが9:00からになったり、夜は17:00までしか対応してもらえない場合があったりする。また、夏休み期間中はお弁当持参になるのも負担と感じている方が多いようだ。

 

学童は基本的に低学年向けのサービスになるため、小4で突然定員オーバーで預けられないと通知がくる場合があるようだ。その場合は習い事に一人で行ってもらったり、祖父母の家で預かってもらうなどで対応してもらうケースが多いようだ。しかし、このような壁を乗り越えられない場合、女性の方がしかたなく仕事を辞めてしまうことになる。

 

また、学童などは基本的に見守りサービスとして機能しているが、「学童は見守りだけを行うのではなく、民間の講師などを入れて、英語やコンピューターの授業などを入れて、学びの質を向上させてほしい」などの発展的な意見が聞かれるようになってきている。

 

介護事業者も視野を広げれば問題解決で事業が拡大できる

現在の介護の問題と、子育ての問題、その両方の問題解決にアプローチしている方がいる。千葉県柏市を中心に学習塾・学童保育を運営する「ネクスファ」代表の杉浦さんだ。ネクスファでは地域に眠る経験豊富なシニア人材と連携して、これからのグローバル化された社会で役に立つスキルである「サスティナビリティ」を教えることを標榜している。

 

(杉浦さんのコメント)

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私のやりたいことですが、根幹にあるのは環境問題や複雑化した社会問題を解決に導く力を子ども達に身に付けてもらいたいという思いです。
我々はこの力をつけるための学びを「サス学」と呼んでいます。塾ではサステナビリティ=つながりと伝えています。子どもたちは、学校では触れる機会の少ない問題を考えながら、世界のつながりを学んでいます。塾では「シニアの社会キャリアを活かしたプログラム」というものがあって、「エネルギー」や「ロボット」「未来の仕事づくり」などといったテーマが与えられ、それについて自分自身で調べて、最終的に色々な人に伝わるように資料化してアウトプットしています。

 

また、英会話ではなく英対話という考え方で英語教育にも力を入れています。文法や発音の上手さも必要ですが、日本人は英語ができないと世界で評価されてしまうのは、色々な文化背景の方たちの中で、自分の考えをしっかり言える能力を磨いていないことが要因だと思っています。学校は読み書きが中心で、こういった能力は教えてくれないのです。

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サス学を教えてくれる場所は子育てをしている親にとって、公文や学習塾とは違った魅力がある。そして注目したいのは、「シニアの社会キャリアを活かしたプログラム」に参加している地域にいるシニアだ。参加したシニアには変化が訪れるという。

 

予防事業とのつながりや介護とも連携した地域サービスの展開

柏市の地域包括ケアシステムの構築には東京大学高齢社会総合研究機構が参加しているのだが、東大がネクスファに調査に訪れて、片足立ち・立ち上がってすぐに歩く、ゆっくり歩く・全力で歩くなどの体力測定や、記憶力テストなどの知能測定をしているそうだ。脳や身体データ能力の維持・向上にどれだけ影響があるのか調べていると思われる。

 

結果がでてくると、おそらく予防事業とのつながり、介護とも連携をした地域サービスの展開を視野に入れているのではないだろうか。予防事業になる前から、杉浦さんは連携を視野に入れているようだ。

 

(杉浦さんコメント)

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介護事業者との連携も考えていますよ。少し前に介護事業者の方から”連携できないか”と連絡を頂いたことがありました。その時の話では介護施設を作ったときに学童を一緒に併設することでした。我々の塾の運営が今ほど落ち着いていなかったので話は流れてしまったのですが、今後は条件次第であるとおもっています。サス学というコンセプトを理解してもらえる方であれば、先進的なトライアルをどんどん進めていきたいと思っています。

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地域に眠っている力を使って、地域の問題を解決する。そのコンセプトと場を提供する側に介護事業者もいる。介護事業者の方が、少し視野を広げて教育・子育ての分野に出て行くことは地域にとっては大歓迎のはずだ。介護報酬が厳しくなっていく中で、事業を継続するための一つの方法と考えることもできる。

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