株式会社カラーズ(東京都大田区)Vol.1 理念の浸透は、採用時から始めることが大切


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「有資格者であれば採用し、すぐに現場へ」、これでホントにいいの?

カラーズの理念は実にわかりやすい。「身内や大事な人に紹介したい会社であること」。

この理念には、田尻さんが初めて介護業界に入ったときの経験が大きく影響している。

 

田尻さんは、母親の病気・死をきっかけにIT企業から訪問介護の大手企業に転職。そこで任された仕事は採用担当だった。

 

「会社の方針は、とにかく資格さえあれば誰でもいいから採れというものでした。研修もそこそこに即現場に出していました。当然ながら採用された人は戸惑います。結局、大半の人がすぐに辞めてしまい、そしてまた穴を埋めるために新しい人を採用する・・・この繰り返しでした」

 

こういった現実は、田尻さんにとって大きなショックだった。田尻さんが想像していた『介護業界は人にやさしい業界』というイメージから、あまりにもかけ離れていたからだ。採用当初、職員は皆、介護という仕事を通して、高齢者や病気をもっている方に少しでも役立ちたいと、目をキラキラさせている。そうした人が、しばらくすると介護業界に失望して、他の業界へ移っていく。

 

このままでホントにいいのだろうかーー

 

2012年、田尻さんは志を同じにするメンバーとともに、自分たちが理想とする介護事業所を立ち上げた。社名はカラーズ。利用者一人ひとりの個別性(カラーズ)を大切に、最適な介護を提供したいという思いを込めた。

あなたは、自分の事業所を身内や大事な人に紹介したいですか?

田尻さんが描いた理想とする介護事業とは、「質の高いサービスを提供する」というものだった。しかし、サービスの質は数値で測れるものではない。では、どうやって「質が高い・低い」を判断すればよいのか。

 

そこで、田尻さんは質の基準を「身内や大事な人に紹介したいかどうか」に置き、これを事業所の理念とした。理念は掲げるだけでは意味がない。その理念をサービスとして実践できてこそ、はじめて生きた理念となる。

「それには、スタッフが理念を理解し、体に浸透させる必要があります。そのために、当社では開設当初より、研修に力を入れています」という。

 

しかも、その研修は採用後ではなく、採用の面接時から始まっているというのだ。

 

「面接時から当社の理念をしっかり伝えます。理念から外れると思われるような髪の色や化粧だったら、入社したら変えてもらいたい、とはっきり言います」

 

面接では、資格の有無や技術の高さなどよりも、自分たちの理念に合うかどうか、人間性を重視する。採用という入口の段階で厳しく人材を厳選しておけば、入社後、会社側あるいは採用された人が「こんなはずではなかった」というミスマッチが起こりにくくなる。実際、カラーズに入社した人は、よほどの理由がない限り辞めることはなく、定着率は90%以上を誇っている。

 

入社後も、事あるごとに田尻さんは理念を口に出す。そして、こう付け加える。「ヘルパーはとても専門性の高い、在宅のプロフェッショナルです」。

 

そしてカラーズのスタッフは、文字通りプライドをもって仕事に臨んでいる。

 

今回の取材先:株式会社カラーズ

 

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