介護事業所の人財育成―2


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「人間力」の向上は「形」から

そのためには、まず職員自身の「人間力」を向上させなければならない。

 

人間力とは、「人間性+形(態度・表情・所作・言葉・行動)」のことを言う。

介護職である皆さんが、今持っているご利用者に対する「やさしい心」=「人間性」を、正しい「形」=「態度・表情・所作・言葉・行動」に表す。それができる職員こそが、ご利用者の心のケアにまで及ぶ質の高いサービスを提供できるのだ。

そのためには、最初は心がこもっていなくてもいい、まず「形」を作ることから始めてほしい。

「心がこもっていなくてもいい」などというと、お叱りを受けるかもしれない。

だが「形を作る」「形から入る」、これこそが、人間力を高める唯一無二の方法だと、私は確信している。

「水は方円の器に従う」と言う言葉がある。環境に合わせて、柔軟に自分を変えなさいという意味なのだが、この「水」という字を「心」に変えてみてほしい。

「心は方円の器に従う」

器とは、形そのものだ。つまり、「心」とは「形」次第でどのようにも変わる。

それが人間の心というものだ。

もちろん、最初から「形」に心がこもっているに越したことはない。

でも、「心」を作るために「形」にこだわるのだから、初めは心なんてこもっていなくてもいい、と私は言い切っているのである。

 

人は、形を通じてその心を知る

たとえば、読者のあなたが一日の仕事を終え、クタクタにつかれて電車に乗ったとしよう。目の前の席が空いて、やっとのことで座ることができた。

すると、かなりお年を召したお年寄りが乗ってきて、あなたの前に立った。あなたはこう思う。

「おばあちゃん、立ってるの辛そう・・・。でも私も疲れてるし・・・」

そしてあなたは目をつむって寝たふりを始める。しばらくして目を開けると、おばあちゃんは居なくなっていた。

電車から降りたあなたは、自分をこう褒めた。「私って、なんて優しいんだろう。疲れてるのに、おばあちゃんに席を譲りたいと思ったなんて!」

 

どうだろう? 通用するだろうか? するわけがない。

 

人は、形を通じて人の心を知る。形がなければ、心を込めることはできない。

どんなに素晴らしい心(=人間性)を持っていても、それを正しい「形」(=態度・表情・所作・言葉・行動)に表せなければ、それはないのと同じなのだ。

皆さんが持っている、優しく、素晴らしい人間性を正しい形に表す。

それを実践する方法は、弊所で行っている「介護人間力向上研修」

http://www.acty-kaigo.com/lp/ningenryoku/に詳しいが、いちばん大切なことは、朝出勤したら挨拶をする、人に何かをしてもらったら「ありがとう」と言うなど、「当たり前のことが当たり前にできること」である。

 

「形」を極めることこそが人財育成の極意

まずは挨拶。

例えば事務職の方。朝、パソコンを打っているときに誰かが「おはようございます」と入ってきたとき、パソコン画面に向かって「おはよう」と挨拶していないだろうか?

たまたま机の上を拭き掃除しているときに誰かが入ってきたら、ブスっとした顔で、机に向かって挨拶していないだろうか?

誰かが「おはようございます」「行ってきます」と挨拶しているにもかかわらず、相手の顔を見ないで返事をしている、これがふつうの職場だろう。

だからこそ、相手の顔を見て、笑顔で挨拶するだけでも皆さんへの、そして皆さんの職場に対する印象は格段に良くなり、雰囲気も変わってくるはずだ。

 

次に「ありがとう」。

私は、お金を払うときにも必ず「ありがとう」と言う。そして、「ありがとう」の後に「お蔭様で○○です」という言葉を添える。

なぜなら、お金を払うときと言うのは、人様に何かをして頂いたときだから。お金を払うたびに「ありがとう。お陰様で○○です」と言っていると、ここでもお蔭さま、あっちでもお陰さま、こっちでもお蔭さまと、いろいろなことに気づくようになる。

最初は心がこもっていなくてもいい、まずは感謝の気持ちを口に出してみることだ。これを続けることで、「ありがたい」という「心」が生まれてくるのである。

 

お茶の世界には「心は形をもとめ、形は心を作る」という言葉がある。

すべての形には意味があり、その形を極めることで、その意味が理解でき、本質を身に付けることができるというのだ。

まさに、これからの時代の人財育成の極意が、この言葉に込められていると言えよう。

 

これを職員の間に浸透させていくことが重要なのだが、ただ口で言って聞かせてもなかなか続かない。

従って、この「形」が「評価」につながるような仕組みを作っていくことが大切だ。

そのしくみ作りについては、また次回、お伝えしたいと思う。

 



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