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石井英寿さん(宅老所・デイサービス/いしいさん家 代表)お年寄りも子どもも、いろんな人が、みんな一緒に「ありのまま」でいられる居場所vol.3


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「老いる」ということは素敵なことだし、さまざまな経験や歴史を積んできた人を、介護する側が思うようにすることはできないし、またしてはいけないことだ、と石井さんは話す。そして介護の仕事の面白さはまさにそこにある、と。最終回では、自らの家族と仕事、そして利用者家族とのかかわりあい、制度改正後どんどん厳しくなっている“経営”と、事業所としての未来について伺った。

お年寄りも子どもも「今を大事に生きる」ことが大切

―「いしいさん家」には、ときおり石井さんご自身の4人のお子さんや、妻の香子(こうこ)さんもいらっしゃっていると聞きました。お年寄りも含めいろいろな人たちとかかわることで、ご家族やご自身の心の中にも何か変化や気づきのようなものはあったのでしょうか。

そうですね。1つ挙げるとすれば、お年寄りも子どもも、介護する家族も、子育てをする親も、みんな同じなんだということです。親は子どもに「こうなってほしい」と思うけれど、子どもは親の思うとおりにはならない。それは、認知症のお年寄りにして周りの人が「こうしてほしい」と思っても、思う通りにはならないのと同様です。つまり、子どもに対してもお年寄りに対しても「こうしてほしい」と思うのは、本人に対する「押し付け」になるんだということです。

 

そして、「今を大事に生きる」ことが大切だという点も同じです。お年寄りが明日どうなるかもわからないから「今を楽しく生きる」のが大事なように、子どももどんどん成長して「子ども」として過ごす時期は限られているので「今」が大事。抱っこも今しかできませんしね(笑)。

だから、お年寄りも子どもも、今この「時」が二度と来ることがない最後の「時」だと思って接して、「今」本人がしたいようにしてあげたい。泣きたいときは泣いてもいいし、自分の感情に素直になっていいんだと思うようになりました。

 

―「みもみのいしいさん家」では、認可外保育所(定員3名)も開設していますが、現在の利用状況はどうなのでしょう。

いまはスタッフの子どもが利用しているだけです。近隣にも営業しているのですが、最近はリトミックや英会話などの学習を行う保育所に人気があるみたいで、うちの保育所に対する反応はいま一つです。

 

うちはリトミックや英会話はしません。でも、子どもたちはおじいちゃんやおばあちゃんなどたくさんの人に囲まれて育つから、いろいろな人と交流することを自然に学べるし、それによって、昔のように人同士が温かくつながる文化が取り戻されていくと僕は思っているんですけどね。また、亡くなっていく命もあれば、新しく生まれてくる命もあって、それが繰り返されて……とすべてはつながっていることも実感できて、そこからもたくさんのことを学べると思っています。

 

介護は家族を巻き込んで行うもの。家族によく連絡をし、来てもらうようにする

―「いしいさん家」では、「泉湧会」という家族会も設けていますね。

泉湧会は、同じ境遇にいる家族の皆さんが、悩みや感じていることを吐き出せる場所として作りましたが、と同時に、僕ら介護職と家族の皆さんとがつながる場所でもあります。

 

「介護」の「介」という字は「支える」という意味。介護職の役目の1つは、家族で介護するのは大変なときに文字どおり「支える」ことです。でも、「お金を払うから、あとは事業者にすべてお任せします」とか、「専門職がやってくれているのだから、素人の家族が口出ししてはいけない」などと家族に思わせるような介護の仕方や、家族を横に置いて介護職が中心に立つようなやり方はしてはいけないと僕は思っています。

家族も巻き込んで介護して、だんだんと家族のもとに返していくことが大切だと考えますし、ご本人もそう思っていると思う。だから、家族会を作ったり、家族にもよく電話したり、来てもらったりするようにして、家族との関係を築いていくように努めています。

※みもみのいしいさん家の1階には家族が相談できるスペースが設けられている

―介護現場では、気をつけてはいても転倒などの事故が起きることもありますよね。そういう場合にも、日ごろから家族と連絡を頻繁に行っていたかどうかで、解決がスムーズに行く・行かないが変わってくる気がします。

それは言えます。その意味でも、僕らがふだんしている介護の様子を家族の皆さんに把握してもらうことは大事だと思います。

例えば、どうしてもお風呂に入りたくないというお年寄りに、なんとかお風呂に入っていただこうとした際に問答を繰り返すうち、ふと気がついたら、いつの間にかお年寄りの体にあざができていたということはあるんです。そういうときはもちろんご家族に隠さずに理由を説明しますが、日ごろから家族と関係を築いているかどうか、が誤解や不信感を与えないことにもつながるのだと思います。

 

2つの小規模デイを1つの通常型デイにまとめて、スプリンクラー設置を検討中

―今回の介護報酬改定は事業者にとって厳しい内容となりましたが、それも踏まえ、今後の経営についてはどう考えていらっしゃるでしょうか。

「いしいさん家」も「みもみのいしいさん家」も小規模デイサービスなので、制度改正により今後は地域密着型に移行していく予定です。そうなると、いままで「どうしても『いしいさん家』を利用したい」と言って市外から通ってきた人たちは、通えなくなってしまいます。

また、宿泊を行うデイサービスには平成30年までにスプリンクラーの設置が義務化されましたが、小規模のデイサービスに高額なスプリンクラーを設置することは難しいです。

 

そこで「いしいさん家」では2018年ごろまでに、いまの2つの小規模デイサービスを1つにまとめて通常型のデイサービスにし、スプリンクラーを設置したいと考えています。そうすると、厳しい報酬改定下での経営もスプリンクラー設置も、なんとか可能になると思いますし、「市外から通いたい」という方も引き続き受け入れていくことができます。

 

―介護のあり方全体について言いたいことは。

介護する側はこちら側の世界が正しいと思いますが、お年寄りの世界も正しい。それを正しいと思えないのは、「老い」を受け入れていないという意味だと思います。老いるということは、それだけさまざまな経験や歴史を積んでいることだから、本当は素敵なことなのに。

そして、そのように経験を積んできた人たちを、こちらの思うようにするなんでできないし、していいはずもないと、僕は思っています。そこに介護の仕事の面白さがあるんだと…。もちろん、光の部分だけではなく影の部分もあるけれど、それでも介護という仕事は魅力があって面白いということを、「いしいさん家」の活動を通してこれからも発信していきたいと思います。(完)

<事業所プロフィール>
いしいさん家(有限会社オールフォアワン)

平成17年10月、有限会社オールフォアワン設立。同年12月1日、指定通所介護保険事業者として許可を取得し、平成18年1月1日、千葉市花見川区柏井町の民家で、「宅老所・デイサービス/いしいさん家」を始める。お年寄りだけでなく子どもや、障がいのある人がスタッフとして働いていたり、利用者家族も働いていたり、とにかくにぎやかだ。同年5月より「いしいさん家居宅介護支援事業所」を併設。平成20年2月に、住んでいた自宅を開放して「みもみのいしいさん家」を習志野市に開所。ここでは、主に若年性認知症の人や高次脳機能障害がスタッフと一緒に仕事をするための取り組みを行ったり、うつなど心の病気を持つ人も、ここを利用しながらお手伝いをしている。外国人のスタッフも自然と働くように。その子どもたちも通ってくる。毎日いろいろな人が集まってくる。スケジュールも何もなく「ありのままに」過ごせる。石井英寿さんの「お年寄りたちともっと深く関わる介護がしたい」という想いを具現した「場」でもある。

※一軒家を利用した「いしいさん家」



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