介護事業所の人財育成―1


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介護業界の「人財育成」とは?

そもそも介護業界における「人財育成」とは、職員に何を教え、何を育むことなのだろうか?

多くの事業所では能力開発のために、スキルアップ研修等を行っている。しかし、いくら介護の技術が優れていても、それだけで果たして「良い介護」と言えるのだろうか?

もっと大切なものがあるのではないだろうか。

 

ある事業所に、AさんとBさんという、介護職としての経験もスキルレベルも、まったく同じ二人の職員がいたとしよう。

この二人が、ご利用者に同じ介助サービスを提供している。

 

まずAさん・・・

ご利用者の横に寄り添い、手を握る等のスキンシップを図りながら、目線の高さを相手に合わせ、にっこり笑って

○○さん、昨夜はゆっくり眠れましたか?朝ご飯は美味しかったですか?どこか痛いところはないですか?」など、優しい言葉がけをしながら介助をしている。

 

そしてBさん・・・

Aさんと、全く同じ介助をしているのだが、無表情、無言で「何やってんのよ、早くやってよ。私だって忙しいんだからさぁ」という思いでご利用者に接している。

 

さて、ご利用者の受けているサービスの質は同じだろうか?満足度はどうだろう?

まったく違うはずである。

では、この違いはいったいどこから生じるのだろう?

それは、職員の「表情や言葉、態度」の違いなのである。

 

表情や言葉も立派な「スキル」

サービスを提供する際の職員の表情や使用する言葉というのは、そのサービスの質を左右する重要な技術だと、私は考えている。それはまさに、職員とご利用者の「こころ」と「こころ」を結ぶ、大切なスキルである。

 

介護や福祉のお世話になっている方々というのは、一人で自立して生活することが難しい。人様の支援を受けなければならない方たちは、他人や世間に、ちょっとした引け目を感じながら生きている。

 

施設に入所されているご利用者に「どこか行きたい所はないですか?」と聞いても、ほとんどの方は「いつもこんなにお世話になっているんだから、これで十分です。行きたい所なんてありませんよ」と答えると思う。

それは本心だろうか?

「昔よく遊びに行ったあの場所へ、もう一度だけ行ってみたい」

「ひ孫の運動会を見に行きたい」

実はそう思っていても、口に出さない方が多いのではないか。

 

なぜなら、自分が希望を言うことで、周りの人に負担や迷惑がかかる、日ごろ世話になっているのに、これ以上贅沢を言ったら罰が当たると遠慮し、周囲の人に気を遣っているからだ。それゆえに、なおさら相手の言葉や表情から、敏感にその人の心を読み取ってしまうのである。一般の人よりも心がデリケートになっているのだ。

 

だからこそ、対人援助の職にある者には、以下の二つのスキルを「教え」「育む」ことが重要なのだと私は思っている。

1.技術力や専門知識などのスキル=ご利用者の体のケアのため

2.真心や思いやりを、正しい表情や言葉で伝えるスキル=ご利用者の心のケアのため

 

大切なのは「心のケア」ができること

先に、「お金をいただいて介護の仕事をするのがプロ」だと書いた。

プロである以上は、どちらも欠かすことのできない大事なスキルだと思う。

 

でも、あえて問いたい。

この二つのうち、より大切なのはどちらなのか?

 

こう質問すると、99.9%の方が、後者と答え、同時にこうもおっしゃる。

「ご利用者の心のケアができる、そんな立派な職員がいてくれたら苦労しないよ。問題は、そういう職員が育たないことなんだよ」

そう、皆さんわかっているのだ。介護の技術よりも何よりも、ご利用者の気持ちに寄り添い、真心を込めてお世話することのほうが何倍も大切だということを。

でも、どうしたらそんな職員を育てることができるのか、その方法がわからなくて困っている。

 

多くの事業所が悩み、苦しんでいるこの課題に、社会保険労務士として人財育成に関わるなかで、私が得た一つの答えがある。

 

その答えについては、次回書き記したい。

 



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