NPO法人シニアライフセラピー研究所 Vol.3 皆が「良い人生だった」といえる地域福祉の実現に向けて


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高齢者から子育て、そして障害者へと事業の領域を広げているNPO法人シニアライフセラピー研究所。開設以来、売上はずっと右肩上がりだ。また、職員の平均給与は一般企業に近い。福祉事業の経営は厳しいと一般的にいわれるにもかかわらず、なぜ同法人はこのような経営ができているのだろうか。

給料の額を自分で設定し、公開

同研究所の今期の売上は1億円以上。収益の主な柱は介護保険事業と障害者事業だ。職員は80人(うち常勤10名)で、平均給与は介護業界ではトップクラスだ。鈴木さんは「人員配置基準があるので最低限で行っていますが、本当は利用者やボランティアの方たちだけでも運営していけるからです」とその理由を明かす。

 

同研究所の職員の給与設定のしかたは、きわめてユニークだ。

幹部が決めるのではなく、職員自身が自らの給与額を設定する。しかもその金額は全員分、法人内に公開される。「例えば私は、3人分働いていると思っているので、自分の給料を常勤職員の平均給与の3倍に設定しています。もちろん、全職員がこのことを知っています」。人によっては、給料を高く設定したものの、その額に見合うだけの働きをしていないと、途中で引下げを申し出る人もいるという。

 

また、主任以上の役職はタイムカードがない。自由な働き方ができるが、その分、責任も伴う。「スタッフには自分で考えて行動できる人になってほしい。人として成長することを期待しています」と鈴木さんは言う。

 

副主任以上は全員大学に通って学習し、勉強習慣を身につける

“人財”の育成法も独特だ。月1回全体研修会を開き、毎回、職員が講師となって皆の前で話をする。講義のテーマと担当者は鈴木さんが決める。

「衛生管理が苦手な人に『衛生管理』というテーマを与えると、その人は自分を振り返り、猛勉強をして衛生管理がきちんとできるようになります」とその狙いを話す。

 

今年8月に傾聴ボランティアの補足研修を新規開講した。この研修の講師を職員が担当することにした。

「人に教えるためには、自分が勉強しなくてはなりません。ですから講師を務めることは、勉強する良い機会になるんです」。

※法人外部で行われる研修の講師も職員が担当する

 

勉強の機会を今期からさらに増やした。副主任以上の人は、全員、放送大学の学生になってもらうことにしたのだ。成績がA、Bであれば、同研究所が授業料を全額負担、Cだと半分だけ負担する。

「“More than more”の法則どおり、勉強する習慣がある程度つくと、自然に勉強するようになります。それを意図的につくりました」

 

地域福祉業はサービス業ではない “おたがいさま”の関係がとても大切

鈴木さんはきっぱりと言い切る。自分たちがしているのはサービス業ではなく“福祉業”であり、もっと正確に言えば“地域福祉業”なのだと。

 

サービス業だと、サービスの提供者と受益者の関係になってしまう。それに対して、福祉業はともに支え合う“おたがいさま”の関係と鈴木さんは主張する。

 

「介護保険制度の大きな失敗は支援をサービスにしてしまったことです。それまで地域で支え合っていても、ケアマネジャーが関わったとたん、地域と離れ、サービス業の輪の中に入れられてしまいます。地域の人たちも、専門職が支援するから自分たちは手を出さなくてよいと思ってしまう。そのため、孤立化が進んでしまいました。それは福祉とはとうてい言えません。

福祉とは『幸せ』や『幸福』という意味です。皆が『良い人生だった』と心から言えるような地域を創っていきたい。それが私の夢です」

 

鈴木さん自身は、3年前に40歳になったら同法人の理事長を辞めることを公表した。今年はちょうどその年齢になることから、現在、自分の後任を募集中だ。学歴、職歴等は不問だが、20歳代であることを条件の一つにした。

「若い世代へ引き継ぐ文化を創りたいから」と鈴木さんは爽やかな表情で話す。

 

今年9月、以前から海外支援しているタイへ、参加者を募って鈴木さんたちは研修旅行に出かける。タイにいる同法人の里子2人と再会するのが皆の大きな楽しみだ。

 

夢をかたちに・・・鈴木さん自身の次なる夢は何か? そして、それがかたちになるのはいつだろうか?

※タイにいる里子のひとりと一緒に写る鈴木さん

 

今回の取材先:NPO法人シニアライフセラピー研究所(神奈川県藤沢市)

 



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