介護事業者は、行政との協働で地方への移住を回避しよう

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どうする?高齢化のピークを迎える2025年。介護施設や高齢者住宅不足が深刻化

そう感じさせられた一つは、この6月に出された日本創成会議首都圏問題検討分科会(増田寛也座長)による「東京圏高齢化危機回避戦略」である。

http://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04.pdf

 

厚生労働省の統計をもとに推計したものだが、それによると、高齢化がさしあたってのピークを迎える2025年までの10年間で、東京など介護サービスの利用者が東京都や埼玉・千葉・神奈川の三県の東京圏で45%増え、近畿36%、北海道32%それぞれ増加する。

 

とりわけ東京圏での状況は深刻となる。具体的には東京区部で現在でも介護施設や高齢者住宅が大きく不足しているために、他県に移る高齢者が増え続けているが、2025年になるとその不足は埼玉、神奈川、千葉県にも広がる。

 

医療も深刻である。医療需要を入院患者数で推計すると2025年までに東京圏22%、近畿圏16%、北海道16%それぞれ増加する。国は慢性期を中心とした病床数の削減を進めているなかで、このギャップをどう埋めるのか。

 

結論として、同報告は外国人介護人材の受け入れやロボットの活用とともに「地方への移住」を勧める。具体的には移住先の候補地を探すために全国を344に分け、医療と介護の「余力」を評価。医療は車で1時間以内に行ける急性期病院の過不足、介護は2040年時点の介護需要を満たすかで判定し、全国41地域を「余力がある地域」に該当するとした。

 

そうはいわれても、住み慣れた地から地方に移住できるのか。当然ながら、この提言にはそうした反発も強い。増田座長らはそうした反発も承知のうえで、この高齢化の加速に対する医療・介護の供給体制は、首都圏でとりわけ危機的な状況にあることを訴えたかったのだと、思われる。

 

高齢者の「地方移住」の前になすべきことは住み慣れた地域での受け皿づくり

「東京圏高齢化危機回避戦略」における提言を否定的に見るべきではない。だが、現状、市町村では、むしろ住み慣れた在宅での受け皿づくり、つまり地域包括ケア体制づくりを本格的に進めようとしている。

「提言」で主張されている「地方移住」だが、私たちが住む市町村では、むしろ出ていくことがないように、地域での「受け皿」づくりを官民挙げて取り組むことが喫緊の課題である。

 

その視点から、各自治体の取り組みの現状をみてみると、「受け皿づくり」を着々と進めている市町村は、どれだけあるだろうか。

もちろん、行政だけでは限界がある。事業所、NPOもできるだけ協力していかないと2025年までに「受け皿づくり」はできるわけがない。それにしても、いまだに動きが遅々として進まないし、進められない市町村も少なくないのが現状だ。

事業者との連携・協働作業抜きには語れない和光市の例。行政がリーダーシップを取り、地域を活性化

一方で、早くから地域包括ケアづくりを先進的に進めてきた自治体もある。その一つが埼玉県和光市である。先日同市を訪れ、2週間に1回開催している地域ケア会議を傍聴し、「和光方式」の先頭に立ってきた東内京一・保健福祉部長の話を聞く機会があった。

同市の特徴の一つは、介護保険が始まってからニーズ、日常生活圏域ごとに高齢者を対象とした日常生活の自立度調査をきめ細かく徹底して実施することにより、高齢者の自立度、生活実態を詳細に把握している点にある。

 

それに基づき、本人の自立度に合わせた介護予防サービスや介護予防対策を地域包括支援センター、介護事業者のケアマネと連携して実施、その結果、要介護(要支援)の認定率は、介護保険が始まった2000年に11.5%だったのが、2014年には9.4%にまで下がった。

全国平均の認定率は2000年14.4%だったのが2014年には18.2%にまで上がってきたのと比べると和光市の認定率の下がり方は際立っている。

 

「市独自の特別給付(食の自立栄養改善サービス、地域送迎サービス等)、地域支援事業による和光市での自立支援型マネイジメント効果です」と東内部長はいう。

 

それを可能にしたもう一つの柱は、地域包括支援センターのケアマネら担当職員及び介護事業者のケアマネ、関係職員が参加する週2回のコミュニティケア会議である。

 

個別ケースについて課題を整理し、支援方針の調整、決定をするものだが、東内部長を中心にシビアな議論が交わされる。あいまいな支援のやり方、不十分な点があると容赦のない指摘がなされる。担当職員にとっても、この会議で取り上げられた個別ケースを担当するケアマネ、事業所にとっても厳しい会議だが、この会議を通じて多職種の連携、それによる利用者へのよりよいサービスの徹底が図られている。

 

空き家対策も同市は保健福祉部で取り組む。空き家情報をつかむと担当者が出向き、高齢者が利用できるデイサービスやグループホーム、高齢者住宅に転換できないかを調べ、転換できるものから空き家活用をしているという。

 

こうした和光市のような形で、行政がリーダーシップをとることはもちろんだが、地域の事業者との連携、協働作業抜きにはできない。多職種間との連携と同時に行政と事業者との協働もますます重要になってくる。

それを軌道に乗せていかないと、「東京圏高齢化危機回避戦略」報告で提言する「地方への移住」を回避させることはできない。

 

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