柏市の取り組みを追うVol.2 柏市の地域医療の中核 柏地域医療連携センターの鹿野さんに聞く


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全国の行政が参考にする柏市の在宅医療とは?

千葉県柏市は東京都心から約30キロに位置し、高度成長期に人口が増加しました。柏市の「2010年人口を1.0とした場合の2030年の75歳以上人口の増加率」は全国平均と比較して高く、全国の伸び(1.61倍)に対して、柏市の延び(2.17倍)となっています。

 

柏市には、なかでも高齢化率が高い豊四季団地があり、さらなる対策が必要と考えられていました。そこで医師会と行政が中心となり、在宅医療を積極的に推進することで課題解決を図ろうとしています。柏市の資料に公表されている、具体的な対策は次の5つです。

 

①在宅医療に対する負担の軽減

・かかりつけ医のグループ形成に(主治医、副主治医制)

・急性増悪時等における病院のバックアップ体制確保

②在宅医療を行う医師等の増加及び多職種連携の推進

・在宅医療他職種連携研修の実施→在宅医療を行う医師を増やし、多職種連携を推進

・訪問看護の充実強化

・医療職と介護職との連携強化

③情報共有システムの構築

④市民への啓発、相談・支援

⑤上記を実現する中核拠点(柏地域医療連携センター)の設置

※柏地域医療連携センター

今回の取材では、柏市の医療・介護の中心的な役割を担う柏地域医療連携センター(柏市地域医療推進室)の鹿野さんに、在宅医療・介護の推進の中から、特に介護職がどのように地域包括ケアシステムの中に入っていくのかを中心にインタビューを行いました。介護事業者にとって、どのように医師や行政と連携していけばよいのか参考になるお話をうかがうことができました。

※柏地域医療連携センターの鹿野さん

「柏地域医療連携センター」の役割と設置後の変化は?

柏地域医療連携センターは、在宅医療を推進し,地域医療機関をサポート及び多職種連携のための中核となる施設として設置されました。センターには柏市医師会、柏市歯科医師会、柏市薬剤師会が入っていて連携しやすい体制を整えています。1階には総合窓口として、柏市保健福祉部地域医療推進室を設置して相談業務を行っています。

 

現在、窓口にくる相談内容は,受診に関することから在宅医療のコーディネートまで様々な相談があります。ひと月の相談件数約60件程度です。少ないと思われるかもしれませんが、医療職・介護職同士の連携がはかれていることで,こちらのセンターを介さなくても直接解決してくれるケースが増えているのだと思います。

 

柏市では豊四季団地が一足先に本格的な高齢化を迎えました。このセンターも豊四季団地の中にあるのですが、相談業務をうけていて感じることは、介護状態になるまえの啓発活動が非常に大切だということです。

老いが来ることを準備している人は多くありません。介護状態になる前、健康な時の情報収集はその後の治療や介護に影響を及ぼします。一人一人がこれからをどう生きるか、どういう最後を迎えのるかと考えなければならない時代ですね。市としては、きっかけになる啓発活動をより活発に行っていきたいと思っています。

 

センターの開所記念講座として「かしわ元気塾」というものを始めました。毎月のテーマはかわりますが,先日「マイドクター(かかりつけ医)を探そう」というテーマで開催しました。かかりつけ医を見つけることは、健康や介護予防にもなるし、ご自身の治療に対する納得感にもつながります。今後はかかりつけ医や在宅医と患者さんがより密接な関係になっていきます。

 

自らの生き方を自ら決定する。

医療・介護サービスの提供の前にまずはそこが必要だと思います。そして、決定に沿った形で納得感が伴った支援を、医療職、介護職が行っていく流れを作りたいと思います。そのための研修も増やしていきたいですね。研修にはぜひ介護サービス事業者の方も参加していただきたいと思います。

 

「顔の見える関係会議」が多職種連携のベースに

柏市の多職種連携に背景には、「顔の見える関係会議」があります。会議には毎回150人以上参加していて、医師でも介護従事者でもフラットに意見交換をすることができます。

 

介護関係者における参加は、ケアマネの方が多かったのですが、最近はサービス事業者さんの参加も増えてきました。事業者の方と話していると「なるほど」と思うことがたくさんあります。現場でしかわからない具体的なことなどをどんどん会議でシェアしていただきたいと思います。

医師やケアマネもそれを求めています。逆に医師やケアマネからの意見をヒアリングしてもらうことも、サービスの質を高めていくうえで大切なことだと思います。会議に参加して意見交換するだけで、お互いに信頼につながっていきます。信頼につながると仕事にも繋がっていくと思います。

 

サービス事業者さんの参加により、今までは医師とケアマネジャーさんだけだった連携がデイサービスの生活相談員の方、訪問介護のサービス提供責任者や、ヘルパーに方にまで輪が広がってきていると感じます。介護サービスを受ける方たちの安心感につながってほしいと思います。

 

職種ごとの事業者団体がさらなる連携のカギに

柏市医師会には、在宅プライマリーケア委員会(20~30人くらいの医師が在宅医療の進め方などを話し合う組織)が存在しています。過去には、現在の仕組みにつながる「地域医療の提言」を提出していただき、柏市での在宅医療のルール作りに非常に貢献していただいています。

 

ケアマネジャーにも団体があります。団体としては,医療と介護の連携によって,介護者に寄り添ってしまうケアプランから「自立支援」を目指したケアプランがすすむと話しています。

 

サービス事業者の協議会がありますが、組織としての体系化した連携がとれるようになると、一気に仕事がしやすくなると思っています。各職種団体が立場と役割を明確にすることが必要になっていくと思います。もっと輪を広げるとなると、医療従事者、介護従事者だけではなく、生活に必要なサービスを提供している地域の方の力も必要になってきます。その考え方が予防事業にもつながっていくかもしれません。

 

「柏市の地域包括ケアシステム構築のカギになったのは医師会ですか」と、多く質問をいただきます。もちろん医師会の力は大きく,その存在が各職種の連携のしやすさにつながっていると思います。その中で行政は裏方に徹して、調整役に回るというのが本来の役割だと思っています。

 

具体的な調査でニーズ、リソース、アウトカムを測定していく。

今回初めて介護保険の計画(第6期柏市高齢者いきいきプラン21)に、訪問診療ニーズの推計を示し,2015年から2020年にかけて,600名強の在宅医療在宅医療の需要増が生じる可能性があります。

 

どれだけのニーズに対して、どれだけのリソース(資源)があれば良いのか、量的な予想に加えて、本当に住民の方に必要なサービスなのか、幸せになるのかという質的なところもアウトカムに加えていきます。

 

医療だけでなく、介護やその他の支援も含めた「多職種連携」だからこそ支援ができる地域包括ケアシステムの構築を進めていくことになると思います。アウトカム調査のフォーマットは、いま決めているところです。行政だけでなく、各団体や東大と調整をしています。

※豊四季団地 建て替え前の施設(店舗)


※建て替え後の住居

※介護保険サービスの事業量等の見込み(単位: 1月あたり/人)

・特定施設入居者介護施設

平成27年度 496人 平成37年度 863人

・認知症対応型共同生活介護

平成27年度 345人 平成37年度 584人

・特別養護老人ホーム

平成27年度 1,232人 平成37年度 1,970人

・介護老人保健施設

平成27年度 761人 平成37年度 1,288人

・訪問介護

平成27年度 2,508人(58,489回) 平成37年度 4,371人(133,660回)

・訪問看護

平成27年度 867人(5,848回) 平成37年度 2,023人(16,428回)

・訪問リハビリ

平成27年度 346人(4,151回) 平成37年度 990人(23,152回)

・居宅療養管理指導

平成27年度 2.069人 平成37年度 4,916人

・通所介護

平成27年度 3,650人(34,876回) 平成37年度 2,818(28,426回)

・福祉用具

平成27年度 3,921人 平成37年度 7,904

・居宅介護支援

平成27年度 6,474人 平成37年度 12,643

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

平成27年度 202 平成37年度 701

・認知症対応型通所介護

平成27年度 54 平成37年度 394

 

※柏市の資料から

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