NPO法人シニアライフセラピー研究所 Vol.2 ボランティアを積極的に育成し、“おたがいさま”の風土をつくる高齢者から“子育ち”の親たち、さらに障害者支援へ。「夢をかたちに」事業を拡大


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傾聴ボランティア養成講座を始めた2007年、鈴木さんは左目を障害するという大きな事故に見舞われる。いつ仕事ができなくなるかわからないと悟った鈴木さんは、『使命感』をもって新たな事業に取り組みはじめた。

要支援の人たちのデイサービスや生きがい対応型デイサービスなどを開設

左目に障害を受けるという大きな事故に遭遇した後、鈴木さんが最初に立ち上げたのが「カルチャースクール亀吉」(デイサービス事業)である。2006年の介護保険制度改定で要支援1と2が設けられたものの、当時、要支援の利用者を受け入れるデイサービスはほとんどなかった。「地域包括支援センターから、ぜひつくってほしいと言われたので」と鈴木さんは話し、こう続ける。

「カルチャースクール亀吉に限らず、当法人のほとんどの事業は自分からというよりは、他から要請されてつくったものです」。

 

カルチャースクール亀吉のクラスは現在40ある。カルチャー式のデイサービスとしては神奈川県で第1号でした。その内容を見てみると、麻雀倶楽部、太極拳、料理倶楽部、フォークダンス、ヨガ、遊びリテーション(遊びの要素を取り入れたリハビリテーション)と実に多彩だ。「行政から麻雀は娯楽だと言われ、なかなか認められませんでした」と鈴木さんは笑いながら話す。

 

介護度が高い人や認知症の人向けには、「ネイチャーセラピー亀吉」を2009年に開設した。地域に一緒に出て買い物をしたり、畑で野菜を育てたりといった生活リハビリを中心にしたデイサービスだ。ただし、これは2015年7月いっぱいでクローズする。「赤字ではないし、今締める必要はないのですが、2年後の制度改正で小規模デイが認められなくなる可能性があります。また、当施設は、土日が休みでお泊りデイもなく、利用者さんやご家族にとって使い勝手がよいとはいえません。最近は質の高いデイサービスが増えているので、そちらに移っていただいたほうが利用者さんにとってプラスになるだろうと、先手の決断をしました」と鈴木さんは明かす。

※ネイチャーセラピー亀吉での生活リハ

 

2010年には、さらに新たなデイサービスを開設した。介護認定を受けていない元気な高齢者が対象の「生きがい対応型デイサービス」だ。活動メニューは自分たちで決める。囲碁を打つ人もいれば、雀卓を囲む人たちもいる。部屋の一角ではウクレレを楽しむグループも。ここでウクレレを教えているのは、傾聴ボランティア修了生の知人である音楽学校の先生だ。この人もまたボランティアである。

 

「生きがい対応型デイサービス」の利用料金は1日100円。朝から夕方までいても構わない。ほとんどの利用者は弁当持参で訪れ、1日仲間たちとワイワイ言いながら楽しく過ごしている。

 

“子育ち”支援にも乗り出す

同研究所のある鵠沼地区は若い世帯の転入が増えている。そうした人たちは地域の人たちとのつながりがなく、孤立しやすい。そこで、鈴木さんは子育て中の親のために、「子育ちサロン亀吉」を開設した。子育てサロンではなく、あえて“子育ち”としたのには鈴木さんなりのこだわりがある。「子どもは自分で育つ力を元々もっています。子どもが健全に育つのを邪魔しないように親も一緒に育たなくてはいけません。だから、“子育ち”としました」。

 

同法人は場所を提供するだけ。運営は親たちのボランティアによる自主的な活動にゆだねられる。「自分たちで運営することで、仲間意識や皆で子どもたちを育てているという意識が皆さんの間に生まれています。例えば、誰かが風邪で寝込むと、皆が心配して、元気が出るような食べ物を自宅まで届けるといったことが自然に行われています」と鈴木さんは喜ぶ。

※子育ちサロン亀吉のアクティビティー「親子でフィットネス」

 

「子育ちサロン亀吉」には、妊娠期から1歳半ころまでの子どもをもつ親を対象とした「星の子ロッジ」、1歳半くらいから就学前の子どもをもつ親が対象の「亀の子ロッジ」という2つのクラスがある。星の子ロッジには、ヨガやフィットネスなどに交じって、ベビー手話という珍しいメニューも組み入れられている。手話を通じて、言葉を話し始める前の赤ちゃんと大人、また、赤ちゃん同士でもコミュニケーションが取れるという。そうすると赤ちゃんも意思の疎通がかなえられるので、癇癪をおこしたり、無駄に泣いたりしなくなるという。

 

「福祉コミュニティカフェ亀茶房」からスタートした障害者就労支援事業。7月には障害者グループホーム開設も

高齢者から子育ての世代と活動の領域を広げてきた同法人は今、障害者支援に力を注ぎはじめている。高齢者や子どもの親などに比べ、障害者への支援があまりにも少ないという思いがあるからだ。実は、前述のデイサービス「ネイチャーセラピー亀吉」を7月に閉鎖するという決断の裏には、障害者支援にシフトしたいという鈴木さんの想いもあった。

 

その想いの実現に向けた第一弾が、2013年に開設した「福祉コミュニティカフェ亀吉」だ。障害者就労支援事業の場ではあるが、地域の高齢者、ボランティア、子どもなど老若男女、ハンデの有無・国籍などの関係なく集える福祉コミュニティカフェでもある。

 

あるとき、ここで働いていた身体障害の人がパン屋を開きたいという夢を語った。それを知った鈴木さんたちは元パン屋だった物件を探して歩き、コミュカフェのすぐ近くに偶然、居抜きで借りられるような店を見つけ、交渉した。そしてついに「パン遊房 亀吉」を開店させ、その人の夢をかたちにした。天然酵母・国産小麦を用いて焼かれるパンが美味しいと、近所でも評判だ。

※パン遊房亀吉の厨房にて

 

今年7月には、障害者が自立に向けて準備ができるようにと、障害区分1・2の人向けのグループホームも開設させる。

「次は、障害区分の高い人たちがうさぎの世話をしたり、地域の子どもたちが遊びに来る“うさぎカフェ”を作ろうかなと考えています」。鈴木さんの頭の中には次々と新たな計画が生まれている。

 

今回の取材先:NPO法人シニアライフセラピー研究所(神奈川県藤沢市)

 



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