なぜ必要!?地域包括ケアシステムの構築


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地域包括ケアシステムの構築について

本文 近年、介護業界に携わる者なら必ず耳にしている地域包括ケアシステム。そもそもなぜ、地域包括ケアシステムの構築が必要なのか、皆さん疑問に思ったことはないだろうか?

 

2010年3月に発表された地域包括ケア研究会の報告書によると、2025年に実現を目指すべき地域包括ケアシステムの姿として、地域住民は住居の種別(従来の施設、有料老人ホーム、グループホーム、高齢者住宅、自宅)にかかわらず、おおむね30分以内(日常生活域=中学校圏域)に生活上の安全・安心・健康を確保するための多様なサービスを24時間365日を通じて利用しながら、病院等に依存せずに住み慣れた地域での生活を継続することが可能になっていることとされている。

そして皆さんも一度は見たことのある資料(資料1)では、

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を実現というように文章がスマート化されている。

 

地域包括ケアシステム≒社会保障費の抑制!?

実は、私は上記文章にすごく違和感を覚えるのである。

無論、いくつになっても、どんな状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることは多くの方の望みであると思う。だが、それでは何故、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途にという枕言葉がつくのか。

 

システムを構築するのに時間がかかるからというのは勿論、理由の一つではあるとおもうが、そこにはやはり社会保障費の抑制を狙っているということが見え隠れする。

 

病院や施設ではなく、在宅、地域で過ごしてもらうことは社会給付費の大幅な抑制に繋がる。先の介護保険改定においても中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化において、加算という目に見える形で在宅促進を行っている。国にとって在宅限界点の向上は必須命題なのである。

団塊の世代が75歳以上となる2025年以降、日本の高齢者人口は3,600万人~3,800万人で30年間推移する。ということは、今後10年の間にしっかりとした社会保障費の抑制システムを構築できたとすれば、以後30年間の社会保障費の支出額がほぼ固定化される。

 

地域包括ケアシステムの成否の鍵は市町村と高齢者!?

地域包括ケアシステムという考え方は、社会保障費を抑制する国全体のシステムとして非常に重要であるが、それは大枠のシステム構築であり、細部は市町村にお任せという状態になっている。

 

資料1で記載されているように人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差があり、そのため地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされている。

また、高齢者のニーズに応じた対応体制の構築では、(1)生活支援と介護予防への対応強化(特に軽度者)→地域力(自助・互助)による 高齢者の活動向上と社会参画の促進となっているが、高齢者自身が自分のことは自分でするや、お金を使ってサービスを購入する、ボランティアに参加して高齢者のお世話をする。そうすることによって、高齢者自身の介護予防にもつながり、生活支援のサービスを行う労働力としても寄与する狙いがある。

(2)介護・医療サービスの充実(特に中重度者) → 各サービスの充実と 医療・介護(多職種)連携の推進に関しては図4を見て頂ければおわかりのように、中重度者をみるための各サービスの充実は、今回の改定と同じように今後も介護報酬改定の加算を配分しながら行うだろうし、医療・介護連携の推進は今後の課題ではあるが、既に在宅医療・介護連携として13億円の予算がついている。

 

地域包括ケアシステムは、社会保障費抑制の為のシステムであるが、その中核は実はサービスを行う側である病院や介護事業者が担っているのではなく、高齢者自身に担ってもらわなくては成立しない仕組みとなっており個人的には、地域包括ケアシステムが成功するかどうかの鍵は高齢者自身が握っていると思っている。中重度者などは我々、専門事業者の出番であるが、それよりも裾野の広い軽度者、自立の高齢者を担うのは高齢者自身なのである。

 

高齢者の意識が変わらなければ、また地域力(自助・互助)による 高齢者の活動向上と社会参画の促進が失敗すれば、国の狙いとしての地域包括ケアシステムは失敗に終わる。

 

無論、我々事業者とすればそのような国の狙いの動きを理解した上で、自社が果たすべき役割や事業展開をしっかりと考えていかねばならないだろう。

 



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