介護現場で起きる事故について考えるVol.1
具体的に把握されている医療事故
介護現場に特化した事故を収集している調査は意識が高まりつつありますが、大規模な調査はまだ行なわれていません。
先だって医療のほうでは「医療事故情報収集等事業」が行われており公益財団法人日本医療機能評価機構が医療事故の発生予防・再発防止を目的に医療機関から事故等事案に関する情報を収集しその結果を医療機関等に提供しています。今後は医療事故調査制度として、平成27年10月1日から新しい制度が施行される予定です。
まずは介護現場で起こりそうな事故を医療事故情報収集等事業の調査内容からみていきましょう。
発生件数が最も多い服薬介助への対応
介護現場で起こりうる医療事故のなかで、発生件数が最も多いものは服薬に関する内容でした。介護職員でも個人向けに一包化された内服薬を介助することはできますので、事例を確認して問題と改善点をみていきましょう。
服薬に関する事故の原因は、思い込みや記憶違いなどヒューマンエラーによるものでした。業務の中断や割り込みなど多重業務による服薬忘れ、通常の食後3回以外に服用する薬の飲み忘れなどがあがっています。ほかに服薬準備をして渡したにもかかわらず、実は利用者さんが飲んでいなかった事例も報告されています。
服薬後の観察も介護者にとって必要な業務であることを施設スタッフに周知していきながら、利用者さんへの服薬指導は訪問薬剤師の方などと連携をすることが大切になるでしょう。
24時間いつ起こるかわからない転倒・転落事故
次に、転倒・転落に関する事例です。起床時から入床時まで、また入床中でもベッドからの転落などが報告されています。24時間いつ起こるか分からない問題です。
利用者によっては筋力・視力の低下、判断力・認知力の低下があることを踏まえて、リスクを認識しておかなければなりません。また施設は自宅と異なりますので、利用者の自宅での生活環境を知ることも必要です。
予防策としては、離床センサーの設置、廊下の照明を明るくする、生活動線にある障害物排除といった物理的な対応がとれるところは事前に対応できます。
摂食中の誤嚥・窒息に関する事故
最後は摂食中の誤嚥・窒息に関する事故です。
誤嚥・窒息の事例は、パンや刻み食が発端のもの、看病にきた家族の食事介助中に起こったもの、職員が目を離した隙に自身で食事を詰め込みすぎたものが報告されており、全体で見てもその多くは高齢者や認知症患者、嚥下機能障害患者によるものです。
現在、農水省のワーキンググループが中心となり「新しい介護食品(スマイルケア食)」が提案されようとしています。現在は案の段階ですが、こちらのURLで、介護事業者向けのマニュアル(案)をみることができます。
(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo/teikyou3.html)
この中では嚥下に関するスクリーニングツールなどもあり、利用者に対してどのような食品が適合しているのかを考えるきっかけになりそうです。
今後も農水省や業界団体が中心となり嚥下機能にリスク要因をもつ患者の評価見直しが行なわれ、誤嚥防止の正しい知識を介護現場に普及させる取り組みが進むでしょう。
今回は医療事故のなかでも高齢者に関するものが多かった事例を紹介しました。次回は実際の介護現場で起きた事例から対処法、再発予防を考えていきましょう。
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執筆者:介護マスト編集部