株式会社アイビー(東京都葛飾区)Vol.1 「利用者さんの生きがいをサポートできる介護士に!」という想い一つで学生起業!


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2009年、映画『寅さんシリーズ』の舞台として有名な柴又にも近い、東京都葛飾区に居宅支援・訪問介護事業所を設立した株式会社アイビー。代表取締役の真鍋圭彰さんは会社設立当時26歳で、介護福祉士を目ざす専門学校生だった。「介護の勉強を始めたとき、まさか自分が起業することになるとは思ってもいませんでした」という真鍋さん。第1回は、どのような経緯から学生起業に至り、事業を展開していったのかうかがった。

勉強して思い描いた「介護の仕事」と現実には大きなギャップが!やりたい仕事ができる職場がないなら「自分でつくればいい」

いまだ小さな工場や商店が残る、昭和の下町風情漂う東京都葛飾区。古い二階建ての家屋に暮らす高齢者世帯も多く、バリアフリー化も難しい狭くて急な階段の昇り降りが、足腰の弱ったお年寄りたちにとって悩みの種でもある。

 

そんな都内でも高齢化の著しい地域に、6年前に根を下ろしたのが株式会社アイビー。居宅介護支援、訪問介護、自立支援事業の指定事業者として現在、代表取締役の真鍋圭彰さんほか、11人のスタッフで会社は運営されている。

 

ここまでなら一般的な訪問介護事業所と変わらない事業内容に思えるが、同社最大の特色は介護保険の枠外で展開する「生きがい支援事業」にある。孫の結婚式に出席したいと願う要介護のお年寄り、家族の負担を気にして旅行を諦めていた障害をもつ施設入所者…などを対象に、介護保険制度や障害者総合支援法に基づく指定事業では対応が難しいサービスを自由契約制で提供している。

 

真鍋さんにとっては、そもそもこの「生きがい支援事業」こそが、もっともやりたい仕事だったという。

 

「前職はシステムエンジニアとしてIT企業に勤めていましたが、病に倒れた祖母のケアをしてくれた介護職の人たちの姿に触れて、20代半ばで介護の仕事を志すように。専門学校に入学した当初は、ゆくゆくは自分も施設に就職して働くのだと思っていました。けれど、介護や福祉について勉強するうちにイメージしていた介護福祉士のあり方と、実習で訪れた施設介護の現状には大きなギャップがあって悩みました」(真鍋さん)

 

実習で入所者に寄り添うほどに見えてくる、一人ひとり違うニーズ。「近くの温泉施設に行きたい」「あの公園に散歩に行きたい」。しかし、そうした入所者のささやかな思いすら、リスクマネジメントを優先する施設のルールによって思うように叶えることができないという現実があった。

 

その後、自由に入所者や利用者の外出支援ができる事業所を探すも見当たらず、「お年寄りの“生きがい”をサポートできるサービスがないのなら、自分で会社をつくってやればいい!」と一念発起。専門学校の同級生を含む5人で起業することに。介護業界では学生起業は珍しく、同校でも前例がなかったが、応援してくれる講師たちの後押しもあって、真鍋さんは26歳にして学生の身ながら会社の将来を背負う立場となった。

 

“生きがい”をサポートする介護士として事業スタート!しかし“オレオレ詐欺”に間違われる厳しい現実も…

出身は茨城で、成人してからは東京都江戸川区の葛西で暮らしていた真鍋さん。しかし、介護事業所を開くにあたり新興の埋め立て地でニュータウンの多い葛西は、高齢者世帯が少ないエリア。

なんの縁もなかった葛飾区に事業所を設けたのは、昔ながらの工場や商店街があり、高齢者世帯も多い地域という理由からだった。その中でも近隣にサービスが競合する同業他社がいないエリアに絞った。

 

「介護が必要な人の身の回りの世話だけでなく、その人の生きる意欲につながる思いや夢に寄り添い、実現に向けた行動を介護のプロがサポートしていく。起業当時、こういうカタチで介護福祉士の専門性を活かすサービスは他になかったので『ニーズがあるに違いない』と、企画している自分たちのテンションは高かったですね(笑)。けれど、現実はけっこう厳しくて、結果的にこのサービスが軌道に乗るまでには3?4年かかりました」と真鍋さん。

 

最初は飛び込み営業のように戸別訪問でサービスをPRして回っても門前払いをくらう日々。20代の若いスタッフたちによる営業活動だったこともあり、なかには新手の“オレオレ詐欺”と間違われ、落ち込んだこともあったという。

 

「今考えれば、仕方がなかったと思います。『あなたの生きがいをサポートします』と急に言われたって、そういうサービスがこれまでなかったのですから、イメージが浮かばないものですよね。そこで発想を転換したんです、『まずは地域の人たちの信頼を得ることから始めよう』って」(真鍋さん)

 

そこで同社は東京都から訪問介護の事業者指定を取得、まずはしっかりと訪問介護サービスを提供することで、会社の知名度アップをはかることにした。

事業所玄関では植物のアイビーが迎えてくれる

 

力仕事ならお任せあれ! 若くて元気な“男手”を活用して、自力での移動が難しい足腰の弱ったお年寄りのお助け隊に!

「事業所周辺にある居宅介護支援事業所のケアマネジャーさんたちに挨拶してまわり、訪問介護はもちろん、わが社が独自に提供できるサービスをPRしていきました。

そうした中、さっそく任されたのは、足腰が弱って家の中での移動も難しいお年寄りたちを移動介助すること。なにせ、うちには私をはじめ20代の若い男性スタッフが数名いましたからね。女性のヘルパーさんでは体力的に難しい力仕事を片っ端から引き受けていくうち、次第に『力仕事ならアイビー』と思ってもらえるようになりました」(真鍋さん)

 

下町風情の残る事業所近隣には、小ぢんまりとした古い二階建ての家屋に暮らす高齢者世帯が多い。その多くは1階が小さな工場や商店で、二階が居住スペースというスタイルの家が主流。足腰が弱った高齢者にとっては階段の昇り降りも難しく、デイサービスにも行きにくいという現状があった。

 

「お年寄りを背負って階段を昇り降りするのは、利用者さんだけでなく介護士にとっても事故や負傷のリスクは高いもの。だから引き受けられる事業所は少ないわけですが、うちは、そこで介護士の負担にならないような安全な移動方法を考え出し、率先して引き受けたことで認知度は上がりました。

その他、クレームが多いことで有名な利用者さんや家の中がもの凄く汚いといった、いわゆる困難ケースもたくさん引き受けて頑張りましたね(笑)。大変でしたけど、学生の身で起業して実務経験がなかった私たちにとっては、介護技術はもちろん、利用者さんとのコミュニケーション力を身につけられる、いい修行体験になったといえます」(真鍋さん)

取材当日、事務所にいたスタッフのみなさんと真鍋さん(右から2番目)

 

今回の取材先:株式会社アイビー(東京都葛飾区)

 

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