マイナス改定を乗り越える創意と工夫

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今回の改定では、介護職の専門性と事業所のあり方が問われてくる

 

地域包括ケア事業計画が今年度から各市町村で本格的に始まるなかで、その構築のための多職種の取り組みも各地で展開されている。

「東京都小金井市地域包括ケアシステム研究会」もその一つで、医師会など三師会、訪問看護、介護事業所や老健施設と市役所の担当部課長も出席し、多職種連携、それに基づく地域包括ケアの具体化を進めつつある。

 

先日開催されたその研究会の場では、今回の改定について、デイ・サービスや訪問介護に取り組む事業所や関係者から「今回のマイナス改定は厳しすぎる」「このままでは、ただでさえ人材不足の現場で人が来なくなる」といった声が出た。

その場で筆者は「今回の改定で、介護職の専門性、事業所のあり方も問われているのではないか」と以下のような意見を述べた。

 

確かにマイナス改定の幅は過去2番目に大きい。その内容をみると、介護職員の処遇改善は1.65%、中、重度者、認知症への対応などの充実強化には0.56%が充てられる。それらのプラス改定を除く実質的な削減幅はマイナス4.48%にも上る。事業所が手をこまねいていれば、大幅なマイナスとなるのは避けられない。

一方で、在宅医療・介護の推進という立場から、認知症対応の通所介護や重度者対応の短期入所、さらに高齢者リハ見直しの加算ができたことで、在宅サービスでの認知症対応や中重度者への対応ができる専門性を持つ事業者が地域で評価され、生き残れるのではないか。

 

賃金改善以外の処遇改善の取り組みとして注目したい事例-老健施設における夜勤体制の検討例-

介護職員の処遇改善については、厚生労働省が示した要件は2012年度改定時よりもさらに加算取得に「職位・職域・職務に応じた任用要件」と賃金体系の整備等が課せられた。事業所にとっては処遇改善と言っても、このハードルを乗り越えなければならない。

今回の処遇改善が認められる要件の一つに職場環境等要件として「賃金改善以外の処遇改善の取り組みへの実施」が含められている。

 

この「賃金改善以外の処遇改善の取り組み」で最近、印象に残った事業所の取り組みがある。東京立川市や国分寺市などで、訪問介護、グループホーム、個室ユニット型の特別養護老人ホーム、小規模多機能住宅など幅広く在宅ケアを展開している「NPOケアセンターやわらぎ」「社会福祉法人にんじんの会」が今年1月に開いた「研究発表会」で、発表された取り組みの一つ「夜勤2勤務制を検討して見えてきたもの」は、他の介護施設の勤務体制の見直しの参考にもなると感じさせられた発表だった。

職員アンケートをもとに。実情に即した勤務体制・夜勤2への移行をはかる

この取り組みを発表したのは、2011年開設した老人保健施設「にんじん健康ひろば」(定員82人)のスタッフたち。もともとは多くの老健施設と同様、夜勤1の勤務20時半?翌日の7時半(11時間拘束8時間勤務)を組み込んだ3交代制の勤務シフトをとっていた。このシフトだと「夜勤の勤務時間が短いために職員の体力的・精神的な負担が少ない」という反面、「夜勤明けの休みでは予定や家族サービスなどまるまる一日を休日として利用することが難しい。疲れが残ったまま翌日の勤務に入ることがある」というデメリット、不満を多くのスタッフが抱えていた、という。

 

そこで夜勤2の16時?翌10時(18時間拘束16時間勤務)を導入、実施した。この狙いは、下記の二点。

1.一日を休日として休めるシフト環境を作る

2.朝・夕の「介助量が多く必要な時間帯」の人員配置を手厚くし、より安全なケア環境を整える

 

職員アンケートで希望が多かったために、18時間勤務(その間2時間の休憩)2交代制の勤務を3ヵ月間にわたって実施した結果、利用者サービスから見た場合、日常生活リハビリテーション(個別リハ)は日中の職員の時間に余裕が生まれたことで、生活リハに取り組み回数がそれまでの倍以上に増えてきた。レクリェーションに取り組む時間も50%増えた。

業務面でみると、残業時間は夜勤1より夜勤2のほうが短くなったが、夜勤2の勤務をカバーする追加職員が増えたために 、残業代は結果としてほとんど変わらなかった。

 

主観的な感じ方でのアンケートでは、夜勤2のほうが利用者とのコミュニケーションも密になり、優しく関われるようになったという職員が90%強を占めた。安全確保も夜勤2のほうができていると答える職員が増えた。

さらにまる一日とれる休日が増えたことで家族とのプライベートな時間や睡眠時間が増えたという。全体の結果として、職員のほぼ全員から夜勤2勤務の継続を希望する声が出た。

当初の目的通りの結果が得られることとなった。今後さらに検証する必要はあろうが、限られた人員体制の中で、試行錯誤を重ねながら、より働きやすい環境づくりを築こうという施設、職員の思い、姿勢を評価したい。

 

今回の介護報酬改定の一つの柱となる介護職員の処遇改善の実効性を挙げるには、現場の実情に即した施設、職員たちの創意工夫が欠かせない、と思う。

 

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