パートタイム労働法改正を機に短時間労働者の雇用管理見直しを

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改正パートタイム労働法が施行される
正職員とパートタイマーでは、その待遇に差をつけている事業所は多い。
「だって、パートってそういうものでしょう」という経営者の方がほとんどだと思う。
しかし、これからはその意識を変えていただかなくてはならない。
この4月1日から、改正パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が施行された。ここでいう「短時間労働者」とは、パートタイマーやアルバイト、契約職員など名称のいかんを問わず、1週間の所定労働時間が正職員よりも短い職員のことだ。
改正のポイントは、次の3つである。
1.短時間労働者の公正な待遇の確保
2.短時間労働者の納得性を高めるための措置
3.パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
これを具体的に説明すると、
1.短時間労働者の公正な待遇の確保
・短時間労働者の待遇については、正職員に対する待遇と同様に、公正に扱うべく対象範囲が拡大された。
[現行]
(1)仕事の内容が正職員と同じ
(2)人財活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正職員と同じ
(3)無期雇用契約を交わしている職員
[改正後]
・上記(1)(2)が同じであれば、有期雇用契約であっても「正職員と同視すべき短時間働者に働者」に該当し、差別的な取り扱いが禁止
・正職員との待遇に差をつける場合の合理性を規定
短時間労働者の待遇について、正職員との差異が、仕事の内容や人財活用の仕組み等を考慮して不合理なものであってはならないとされた。
したがって、これまで仕事の内容が正職員と同じなのにもかかわらず、働く時間が短いという理由だけでボーナス等を出していなかった事業所は、支給するように努めなければならない。また、パートタイマー用の就業規則を作成していない事業所においては、正職員用の就業規則が適用され、ボーナスや昇給等において正職員と同様の待遇を求められる可能性があるため、注意が必要である。
2.短時間労働者の納得性を高めるための措置
・短時間労働者を雇い入れたとき、または契約の更新時に、「給与はどのように決めているのか「どのような教育訓練があるか」「正社員への転換推進措置はどうなっているか」などの説明が必要となった。
・上記について説明を求められた場合、事業主はその根拠を、短時間労働者にきちんと説明し、納得性を高めること。また、当該説明を求めたことを理由に、不利益な取り扱いをしてはならない。
・短時間労働者からの相談に応じ、適切な対応をする窓口を設けるなどして、その相談体制を整備しなければならない。
・当該相談窓口については、雇い入れのときに交付する「労働条件通知書」などに、相談担当者の氏名、役職、担当部署等を記載して明示しなければならない。
3.パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
・当該改正法違反に関し、厚生労働省の勧告に従わない場合、事業主名を公表される。
・無報告、虚偽報告をした事業主は、20万円以下の過料に処される。
「労働条件通知書」と「短時間労働者の雇用管理」を再確認したい
では、事業所としては、具体的に何をどうすればよいのだろうか。
まずは、これまで短時間労働者を雇うときや更新したときに交付してきた「労働条件通知書」を見直してほしい。
今までも、当該通知書には次の事項を記載する必要があった。
1.契約期間
2.有期労働契約を更新する場合の基準
3.始業の場所と従事する業務の内容
4.始業、終業時刻、所定時間外労働の有無、休憩、休日、休暇
5.給与、昇給の有無、ボーナスの有無、
6.退職手当の有無、退職に関する事項等
上記に加え、今後は正職員との違いである
・給与の決定方法
・教育訓練の実施に関すること
・福利厚生施設の利用の可不可
・相談窓口…○○部 ○山○雄 連絡先△△△△△
等について追記していただきたい。
そうすることで、前述の「事業主の説明義務」を効率的に果たすことになる。
折しも、処遇改善加算の仕組みが変わり、職員のキャリアパスについて見直しを迫られている事業所も多いのではないだろうか。
この機会にぜひ、自社における短時間労働者の待遇や活用方法などについて、整理・再考をしてみてほしい。
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執筆者:五井淳子