起業のために必要なポイント―10.開業後の光と影

投稿日:2017年3月15日 更新日:

 準備も整い、いよいよ開業。期待に胸を膨らませていたが、利用者は増えず、経費だけがかさんでいく結果に…。始めるのは簡単でも、続けるのは大変な介護事業。最終回となる今回は、実体験を踏まえて開業後の心構えについて解説したい。

順風満帆にはいかないのがあたりまえ

今まで、開業に向けてのステップを、順を追って話してきました。

いよいよ最終回となりますが、伝えておきたいことがあります。

それは、「開業後の光と影」です。起業して開業するにあたり、理想や希望に向かって、期待に胸が膨らんでいることと思います。周りの経営者の人たちを見ても、キラキラ輝いているように見えるでしょう。

しかし、皆がみんな最初から順風満帆に業績が伸びているわけではありません。実際には、利用者の確保や、職場内での人間関係、社外との関係で悩み、事業の資金繰りでもがき苦しむ経験をされている方も多いです。

私自身もそうでした。

今回は、皆さんのやる気を削ぐためではなく、覚悟をもってこれからの困難を乗り越えてもらい、事業を成功に導いていただきたい思いで、私の経験談を話します。

「起業したら応援するよ」と言ってくれる人のうち、
本当に応援してくれるのは約2割

まず、起業後に最初に訪れるのは「孤独感」です。開業前に、「起業したら応援するよ」「利用者を紹介するよ」と話をしてくれていた、周りの事業者の人たちの8割方は依頼をくれませんでした。今まで自分個人を信頼してくれて、つきあいをしてくれていたかと思っていましたが、多くは会社と会社のつきあいの中で信頼をしてくれていたのに過ぎなかったのです。会社を離れれば、相手にとっては「勤めていた会社の新たな担当者とのつきあいに変わる」だけなのです。自分にはついてきてくれないことが現実です。

ただ、本当に応援してくれる残りの2割の人がいます。そういった本物のつきあいをしてくれる方に私は本当に救われました。ですから、その2割の応援団を、3割や4割に増やす努力が大切です。

すぐに利用へとつながらないのが、デイサービスの特徴

開業したと同時に利用者がいっぱいになることは、まずありません。

最初は利用者がいないので、通ってくださる利用者も、自分1人しか利用者がいないと思うと寂しくて躊躇しますし、ケアマネジャーも、利用者の少ないところを紹介するのに抵抗がある場合もあります。

しかし、利用者がどんなに少なくても、経費は必ず毎月かかります。利用者が増えなければ資金は減るばかりで、悪夢にうなされます。

デイサービスでは、ケアマネジャーに営業をかけてから、実際の利用につながるまでに約2ヵ月かかるパターンが多いのが特徴です。ケアマネジャーが自社のコンセプトをわかってくれていたとしても、その後すぐに利用者宅を訪問するとは限りません。また利用者も即決せずにしばらく考えたり、家族と相談してから返事をします。

ここ数年の傾向として、3ヵ所くらい見学してから、どこが良かったかをケアマネジャーに返答するケースが多くなっているように思います。そして、どこに通うのか決まってから、契約の日程を本人やご家族の予定とすり合わせます。契約が済んでも翌日からの利用開始ではなく、きり良く翌月からサービスをスタートするパターンもあります。

この一連の流れを通すと、営業して見込み客とつながってから、サービス開始となるまで約2ヵ月のタイムラグがあると考えておくのがふつうでしょう。そのため、自社の努力でできることは、スピーディーに対応することがポイントとなります。

まず、打診や問い合わせをいただいたら即資料をもって挨拶に伺い、レスポンス良く、できる限り即答するなど、こちら側の対応を素早くすることが大切です。

また、デイサービスのもう一つの特徴として、新規の問い合わせや見学がきても、実際に契約につながるのは3割くらいであるということも頭に入れておいたほうがよいでしょう。

焦らず、事業者の想いとコンセプトを見失わないことが成功への道

最初の2、3ヵ月は利用者が数人しかいないことがあり、資金が減っていくスピードのほうが気になって、預金通帳を見るたびに吐き気に襲われるようになってきます。

起業時に自信と希望にあふれていたのがウソのようで、思っていたように利用者が増えない現実を目の当たりにすると、今後必ず増えるという確証もない中で、不安が先に立ち、冷静な判断がしにくくなります。私自身もつらかった当時、「この苦しみや不安から早く楽になりたい」と、焦りばかりが先に出て空回りばかりしていました。

そんなとき、先輩経営者からあるアドバイスをもらいました。

それは、「利用者を増やしたいという思いばかりが先立っているけど、若山がほんとに伝えたい思いやコンセプトを見失わずに、しっかりと見つめなおすべきだ」と。

利用者を増やしたいという思いは経営側の都合に過ぎません。むしろ、自社のデイサービスに通うメリットをしっかり伝えないと、独りよがりになってしまいます。

利用者にこんなメリットがあるんだ、という思いを伝えることが大切です。それを後悔のないくらい本気で伝えきったか? と、自分の胸に聞くと、十分に伝えきれていなかったことに気づきました。

それからは、チラシの作り直しやケアマネジャーに対する説明内容、施設内のレイアウトや雰囲気づくり、職員のユニフォームのイメージアップ戦略等、アイディアが次から次に出てきました。苦しいときには周りが見えなくなってしまいがちですが、そばに相談できる人がいることで、踏ん張りがきくことがあります。

経営者にとって一番大事な仕事は、将来の成長を考えること

優先順位の一番上は、目の前に実際にいる利用者です。

しかし、常に現場に身を置いていては、今後の事業展開を模索する時間が取れません。経営者にとって一番大事な仕事は、将来の成長を考えることです。そのためには、現場での権限や責任を管理者に渡していくことが大切です。

また、どんなに会社が小さくても、最初に企業理念をしっかりつくりましょう。社長が不在のときでも、あるいは社長自身が判断に迷ったときも、原点である理念に沿った判断をすることができるようになります。

行き詰まったときには、自分は何のために仕事をしているのかを思い返しましょう。そして、家族を大切にしてください。事業が苦しいときは家族が支えになります。

事業がうまくいき始めて、仕事ばかりになると、家族の誰かがバラバラにならないようにと、警鐘をならします。気づかないふりをするのではなく、そこに何らかの意味やメッセージがあるととらえ、本当に大切なものが何かを見失わずに、突き進んでください。

介護事業は、始めるのは簡単ですが、続けるのは難しいものです。

どうぞあきらめずに一緒に頑張っていきましょう。

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