株式会社若武者ケア(横浜市港南区)Vol.3 もはや介護事業は一般の業界と同じ。問われているのは経営者

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若武者ケア代表取締役社長の佐藤雅樹さんは同社の歴史を、1.創業期(2007~08)2.試行錯誤期(~09)3.新卒採用による基盤構築期(~10)4.拡大期(~13)の4期に分けて整理する。これをベースに14年から始まったのが第5期、株式上場を目ざす飛躍期だ。「一般的なビジネスのノウハウを介護業界に取り入れる」と考える佐藤さんにとって、これからが経営の本番だ。

量から質への転化が求められる時代。制度改正にはそれに対応すべき経営の課題が隠されている

度重なる方向性の見直しや制度改正。介護事業所各社は、現場のニーズや現実に対応しながら変更を取り入れるために四苦八苦している感がある。しかし、「国の方針をよく読めば、今後の経営戦略のヒントが示唆されている」と、佐藤さんは言う。

 

そもそも佐藤さんがまったくの異業種から参入し得たのも、高齢者の急増に対応して、介護事業所がより増えていくことが望ましい、といった厚労省の方針あればこそ。誤解を恐れずに言えば、当初は、まずは質より量が求められていた。

だが、これは同時に、質を問われる時代の「予言」でもあった。そこで、若武者ケアは、困難事例を積極的に受け入れることで後発の弱みと経験不足を短期間で克服する一方、新卒採用を軸に未経験者を育て、質の高いサービスへつなげていった(第1期?第3期)。

 

「今、国が出しているのは、理想的な事業所の姿です。介護職員処遇改善加算だって、要は、きちんとした勤務体制とキャリアパスを作れということでしょう。在宅では、『定期巡回・随時対応型訪問介護看護』をモデルに、介護と看護のシームレスなサービスを提供する事業を目ざせと言っている。その必要性は、介護の現場にいればよくわかります。もちろん、簡単なことではない。でも、それが経営者の課題。問われているのは経営者なんです」と、佐藤さんは言う。

 

「今後は全事業所に訪問看護とリハビリデイを併設しようと考えています」とも。Vol.1、Vol.2で紹介した若武者ケアの人材教育と育成への取り組みは、それに向けた基盤づくりにほかならない。

「訪問介護事業は、可能な限り家族の負担を少なくしながら、利用者の在宅生活を少しでも豊かなものにしていくのが仕事です。病院や施設に行くことになったら敗北だと、そのぐらいに考えています」

 

4年後の東証マザーズ上場を目ざして事業を拡大。あくまでも社会の役に立つために

第5期を迎えた昨年、若武者ケアは中期経営計画を策定した。そこで大きくうたわれているのが、4年後の東証マザーズ上場である。

 

そのために、VC(ベンチャーキャピタル)からの出資をもとにした出店の加速、内部体制の構築、間接部門の設置と取締役3名への権限委譲の実現を打ち出している。ベンチャー企業から、将来の1部上場を視野に入れた中堅企業への飛躍である。

事業規模を現在の12拠点から16ヵ所の複合事業所に倍増、訪問介護利用者数1200人超の実現などを掲げるが、拡大はここまで。その後は内部体制の構築やエリアリーダーの人材育成をはじめ、再度の基盤整備に取り組むという。

 

「専門職も総合職も経験を積み活躍する場は必要ですが、それだけでは人材の質が薄まり、サービスの質も企業体力も低下していきます」と、佐藤さん。

 

増大する市場ニーズに対応しながらも、そこにはひきずられない。このあたりは、さまざまな業界で起きてきた失敗例と同じ轍(てつ)を踏みたくないという理由からであろう。

一方で、今後はM&Aも視野に入れていく。「吸収・合併というより、そこで働く介護人材の活躍フィールドを広げるというほうが正解ですね。だから、経営トップ同士の合意ではなく、相手企業の社員さん一人ひとりの納得が第一条件になります」(佐藤さん)

かなり困難な道のように思えるが、「一緒に仕事をする以上は大事なこと。一歩一歩着実に」と考える。

 

根底にあるのは、起業時に業界選びの基準とした「社会の役に立つ」「仕事を通じて成長できる」という2つの条件と、創業時に掲げた理念の「お年寄りと若者の架け橋になる」だ。佐藤さんは、あくまでも「初心忘れず」なのである。

活気あふれる「若武者ケア港南」事業所

 

2012年から障がい者自立支援サービスにも着手。将来的には、社会にイノベーションを起こす事業を創造する

ところで、中期経営計画で新たに打ち出された「経営理念」には、「障がいを持つ方の生きがいを支え、スタッフもともに歩み成長します」との一文が加えられている。経営目標にも、「代表取締役が障がい事業の本部長になる」とも明記されている。

 

同社が障がい者自立支援事業に着手したのは、第4期の2012年。「それ以前から、関係者の方に『やってくれ』と言われてはいたんです。若い男性スタッフが多いためでしょう」と、佐藤さんは振り返る。

男性の障がい者には男性が同行するべき場所がある、ある程度の腕力が必要なこともある、などがその理由だ。

 

「ただ、当初は未経験者中心でしたから、高齢者介護を覚えるのに精いっぱいで、おいそれとは手を出せなかった」。それが、拡大期に入って介護福祉士の有資格者が増え、さらに福祉用具や介護スクール、訪問看護といった訪問介護の周辺事業が動き出すにつれ、障がい者のニーズに応える事業も視野に入ってきた格好だ。

 

当初は微々たるものだった売上高が、2014年度には1800万円に、今年度は7000万円を見込み、来年度は1億円を突破する勢いを見せている。

 

今後、この分野の専門性を高めるために、まずは佐藤さん自身が、すでに取得している社会福祉士に加えて精神保健福祉士の資格取得を目ざすという。自身が現場に出ることは少ないとしても、基本を知ることなくして求められるサービスの質を確保できないと考えてのことだ。

となれば、スペシャリストを目ざす社員には、看護師、PTに加え、障がい分野のスペシャリストへと進む道が開けることになる。

 

「優秀な人材を惹きつけるにはキャリアパスだけでなく、社会にイノベーションを起こすような面白い仕事を用意することが必要です」と、佐藤さん。高齢者介護からさらに介護事業のフィールドを広げる新規事業へ。障がい者自立支援は、その試金石ともいえそうだ。

 

今回の取材先:株式会社若武者ケア(横浜市江南区)

 

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