共に学び、共に歩む在宅医療カレッジ〜未来を変えるために今出来ることを〜ー1

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月一回のペースで開催している医療法人社団悠翔会の佐々木淳先生が主催する「在宅医療カレッジ」。住み馴れた地域や我が家で最期まで暮らすためにはどうしたいいのか、職種を超えて学んでいます。今回は先月日経ホールで開催された、2016年の在宅医療カレッジの総決算となったシンポジウム「これからの医療と介護のカタチ~超高齢社会を明るい未来にするための10人の提言」の報告をしたいと思います。

地域で最期まで暮らすということは“在宅での看取り”を選択するということ……

「患者家族の視点が必要です。是非、学長をお願いします」こう佐々木先生から頼まれたのは、昨年4月に開かれた1回目のカレッジのスタート3分前……。カレッジに足を運ぶのは医療職や介護職がメインですので、母の介護を経験した当事者の1人としてお役に立てるならとお引き受けしました。

それから1年半あまり多彩な講師をお招きし共に学び、共に歩んできました。大介護時代ではすべての人が当事者になります。在宅に関わる専門職の皆さんには「当たり前のことを当たり前に」1人1人にプロの仕事をして欲しいということ、そして「気づき、繋がり、行動する」ことの大切さを伝えてきました。

今回のシンポジウムでは、会場に詰めかけた約700人が在宅の現場で実践を積み重ねている10人の専門家のディスカッションに耳を傾けました。テーマは「医療と介護の課題」「施設から在宅へ」「地域とは」の3つ。

超高齢社会を迎えている日本において明らかなのは、支える人が減り、支えられる人が増え続けていくということです。要支援1・2の介護保険からの切り離し、保険料の負担増などすでに実施されていますが、このままで行くと負担は天井知らずに増えていくばかりで、医療保険制度や介護保険制度はいつ破綻してもおかしくありません。

「住み馴れた地域や我が家で最期まで」という言葉はとても魅了的ですが、忘れてはならないのは最期まで地域で暮らすということは“在宅での看取り”を選択することです。訪問看護や緩和ケアなど在宅体制が整わない1990年代に私たち家族は母を自宅で看取ることができましたが、自宅で最期まで過ごせている人が2割もいないという状況は20年以上変わっていません。

厳しい言い方になりますが、在宅に関わるすべての人の努力がまだ足りていないのだと思います。諦めて思考停止していても、出来ない言い訳を探しても、日本の高齢化は止まりません。「このままではいけない」そんな危機感を持っている人たちが職種や地域を越えて知恵を出し合い行動に移しているのが在宅医療カレッジです。

医療と介護の連携を進めると同時に、もう一つ重要なのは「最期までどう生きたいのか」自分自身の意思を1人1人が明確にすることです。医療や介護にお任せではなく、サービスの利用者の視点で、当事者として今から出来ることは何かをディスカッションから紐解きたいと思います。

在宅に求められるのは「繋がる 支える 作り出す」

まず皆さんの話から浮かび上がったキーワードは「繋がる」ということです。

人生に伴走する看護をモットーに1990年代から訪問看護に従事し、病院から家に帰るための退院支援に取り組んでいる「在宅ケア移行支援研究所宇都宮宏子オフィス」代表の看護師の宇都宮宏子さんが口にした“生活者”という言葉が印象的でした。

入院すると“患者”として扱われ日常生活から切り離されてしまいます。宇都宮さんは患者ではなく”生活者”としてどう生きたいのかを選択していくプロセスを支援し、人生の再構築をするのが”退院支援”だと話していました。

とても大切なはずの退院支援が十分ではないのが現状です。”病院から在宅へ”と言われても、じゃあ実際にはどうしたら良いのかと戸惑う人は少なくありません。正しい情報や良いサービスに必要な人がアクセス出来るようにコーディネートする場所や人が十分ではないことも課題です。

在宅へスムーズに移行するには、病院が地域の医療や介護と繋がっていなければなりませんが、この移行が上手く行っていません。病気を治すことを目的としている病院では宇都宮さんの指摘する“生活者”の視点がまだまだ足りていないと感じます。

そして、生活から医療・介護まで地域住民の相談窓口になっている新宿の戸山ハイツにある”暮らしの保健室”の秋山正子さん。秋山さんは豊洲にオープンしたNPO法人マギーズ東京の共同代表でもあります。

秋山さんが大切にしているのは「繋がる 支える 作り出す」です。なるべく医療や介護の世話にならずに重度化しない形で、最期まで地域で暮らせるような支援の仕組みを 地域の人と一緒に考えるのが地域包括ケアの究極の姿だと秋山さん。

暮らしの保健室とマギーズ東京の大きな特徴は、1人1人が持つ力を引き出し、本人の意思で選択できるように専門家や経験者が当事者の話を丁寧に聴き、後押しする場所だということです。

退院支援はソーシャルワーカーや看護師が、介護プランはケアマネジャーがそれぞれサポートしてくれますが、その時に自分はどうしたいのか生活者として遠慮せず想いや本音を伝えてください。どう生きるのかを決めるのは自分自身なのです。

またサービスの仕組みを知っているのと知らないとでは選択も大きく違ってきます。情報を発信している場所や人と積極的に繋がって、納得して選択して欲しいと思います。

“あったら良いな”を形にする柔軟性を……

そして住み慣れた地域で最期まで暮らすために必要なのは、建物ではなく「人」や「ケア」であることがディスカッションからも明らかになりました。

福祉ジャーナリストの浅川澄一さんが2つの新しい介護サービスを紹介していました。1つは高齢化率が50%を超えている東京都板橋区の高島平団地での試みです。団地内の空き室をバリアフリー化し“サービス付き”と指定するという「分散型サービス付き高齢者向け住宅」。

超高齢社会の後には人口減少時代がやってきますので、新しい箱物が無駄になるのは目に見えています。この“分散型”では建物を一から建てずに済みます。まだ高島平団地でしか実現していませんが、施設と違い自由な生活ができる住まいとして大きな可能性があると浅川さんは指摘します。

もう1つは利用者が自立して生活できるよう通所、宿泊、訪問介護を提供する小規模多機能というサービスに、さらに看護の機能まで加えてしまう「看護小規模多機能型居宅介護」です。

分散型? 看多機(かんたき)? と利用者にはどちらも非常に分かりづらいですが、地域で暮らすためにあったら良いなというケアやサービスを形にしたらこの2つになったのです。やはり重要なのは建物ではないということが分かります。

国や行政は施設やサービスをルールでがんじがらめにするのではなく、場所は何処であっても事業者が必要なケアを必要な人に提供できるように柔軟に制度を対応させて欲しいと思います。

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