医療・介護連携はどうなっていくか〜2018年医療・介護ダブル改定を読む〜ー5


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12月9日、社会保障審議会の介護保険部会で、「介護保険制度の見直しに関する意見」が取りまとめられました。一部利用者の負担割合や自己負担限度額の引き上げなどに注目が集まりますが、ここではダブル改定をにらんだ「医療と介護の連携」について取り上げます。

在宅医療介護連携推進事業の促進に向けて

「医療・介護連携」にかかる施策としては、2018年4月までにすべての市町村で在宅医療・介護連携推進事業(以下、連携推進事業)を実施することになっています。また、都道府県が策定する地域医療計画と市町村に対する介護保険事業支援計画について、両者を包括する基本方針の策定も義務づけられました。

しかしながら、連携推進事業として国が示している8つの事業のうち5つ以上実施している市町村は、完全実施まで1年半を切った今でも半分に至りません。主に地域の医療行政は都道府県が担ってきたという背景に加え、都道府県の医療計画では「市町村の連携推進事業」に対する支援が位置づけられていないことが指摘されています。

そこで、介護保険制度の見直しに関する意見(以下、見直し意見)では、連携推進事業にかかる市町村支援を国が明確にし、都道府県が策定する介護保険事業支援計画に「より実効的な市町村支援を盛り込む」ようにするなどの対応強化を図るとしています。

ちなみに、今年11月に株式会社エス・エム・エスがケアマネドットコムで行なった調査では、医療・介護連携について8割以上のケアマネが「行政からのバックアップを感じていない」と回答しています。また、ケアマネが求める具体的なバックアップの中身としては、「医療・介護関係者の情報共有の支援」がトップとなっています。都道府県としても、こうした現場レベルの課題をきちんと見すえられるかがカギとなります。

退院時の医療・介護連携をどう強化する?

では、現場レベルでの医療と介護の連携について、具体案は出たのでしょうか。見直し意見では、「利用者の入退院時」のケースで以下のような指摘がなされました。それは、「(医療と介護の)相互の連絡や情報共有が不十分な場合、退院直前での急な連絡でサービス調整に困難をきたす」といった状況です。

たとえば、現場のケアマネから、「退院カンファレンス開催の知らせも来ないまま、いきなり病院側から『明日退院』の知らせが来た」などのケースを聞くことがあります。ケアマネ側にも「普段から利用者の入院先と連携をとっていない」などの問題はありますが、病院側のケアマネへの情報提供がうまく機能していないという点も大きな課題といえます。

確かに、2016年度の診療報酬改定では、介護サービス事業者との連携を要件とした「退院支援加算」の創設や、ケアマネとの密接な連携による「介護支援連携指導料」の引き上げなどは行なわれています。しかし、地域における異なる機関・職種の連携には、地道な「相互理解(お互いが果たす機能と役割を理解すること)」の風土が必要です。一部で「主治医がケアマネへの患者情報の提供を拒否する」などの事例もいまだ耳にする中では、一朝一夕の風土確立は決して容易ではありません。

2018年度ダブル改定で想定される連携推進策

こうした課題に対し、見直し意見では、2018年度の診療・介護報酬のダブル改定に際して、「医療と介護の連携のさらなる充実に向けた検討をすることが適当である」としています。

現段階で具体案は示されていませんが、たとえば診療報酬側では、退院支援加算において「ケアマネとの連携実績」の要件を「その質」を含めて厳格化するなどが考えられます。また、介護報酬側では、ケアマネの退院時情報連携加算の引き上げとともに、利用者が入院している間の医療側との情報共有を強化するしくみなども想定されるでしょう。

ちなみに、見直し意見では、特養ホームでの「医療系サービスが外から入るしくみ」の検討や、介護療養病床についての「あり方検討会」の審議結果に基づく対応(3つの新類型のあり方等)にも言及しています。これらのポイントにおける医療と介護の連携について、次回さらに掘り下げましょう。

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