問題職員を雇い続ける余裕はない!解雇に向けた正しい手順とは


投稿日: 更新日:

前回は職員採用の注意点でしたが、今回は同じ事例(若いヘルパーを雇ったら素行不良で周囲を怖がらせている件)を基に「勤務態度不良」「指示命令違反」を指摘するスタンダードな方法で普通解雇に向け指導を積み重ねていく具体的方法をご説明します。

ざっとおさらいしますと、ある若い男性(栄養士)が普段から素行不良で言葉遣いも悪く、上司に注意されると逆上するという不良社員で、仲間もガラが悪い……という人でした。「反社会的勢力」として解雇できないかを検討しましたが、そのハードルは高く余計に問題をこじらせかねない、ということでしたね。

まず就業規則の「懲戒」規定を見直そう

質問です。「職場のルールと言えば、何が該当するでしょうか?」この問いに即答できない管理職の人は危険です。

正解は「就業規則」。常勤、非常勤関係なく、10名以上が働く現場では必ず整備しなければなりません。これこそが職場の憲法であり、日常業務を行う上でのルールであり、ガイドラインです。

しかし実際には、ご利用者と交わす利用契約と同様、「行政から言われたから作っているだけ」という低い意識の事業所も多いようです。それは大変危険な状態であり、言ってみればシートベルトを付けずに高速道路を運転するようなものです。

何故なら、就業規則は正に本件のような、問題職員に対応する際に絶対必要な「道具」だからです。

人間は思い通りに動いてはくれませんから、組織として最低限の規律を保つにはルールに反した人にペナルティを科さなければなりません。いわゆる「飴とムチ」のムチです。

といっても、いきなり解雇を言い渡すのではなく、勿論ものごとには限度があります。例えばサッカーでいえば、最初はイエローカードが出され、それが重なるとレッドカードに進みますね。

問題は、就業規則の懲戒規定を、厳正公平なジャッジを下す審判のように意識的に「運用できているか」、実際に活用できているか、なのです。それでは、その具体的な運用のポイントをお伝えします。

懲戒処分のメニューは万全か?

ここからはお手元に実際の就業規則を置いて都度チェックされると良いでしょう。終末部分にありますが、「懲戒」の規程を開いてください。

これが「理想的な」懲戒処分のメニューです。

本件のような問題職員を制御する最大のポイントは、実は一番軽い処分である「(1)戒告」と「(2)けん責」にあります。この二つを、運用面も含め徹底して作り込むことが肝心なのですが、ほとんどの事業所でできていないという現状があるのです。

既にお気づきかと思いますが、戒告とけん責が先ほどのイエローカードに相当します。

ただしサッカーでは2枚で即退場ですが、職場ではそう簡単にはいきません。労働者の権利は法律により大変強固に守られています。イメージとしては、「これら戒告・けん責を根気強く何度も積み重ねて、3~5回程度でようやく次のステップに進める」という位がちょうどよいでしょう。労務管理はどんなときでも急がば回れ、根気比べという意識で臨むことが大切です。

上記規定例での戒告とけん責の最大の違いが分かりますでしょうか? 戒告は一方的に指導するだけ、けん責は「始末書を提出させる」という点です。中身は単なる指導であり減給のような目に見える損失は無いのですが、それだけに差を意識して作り込むことが重要なのです。

運用面では、軽い処分なのでなるべく早い段階で行使していくことが必要です。懲戒処分の心得が無いと、「懲戒」という言葉の重さに躊躇してしまい、現場での乱暴ろうぜきを手をこまねいて傍観した挙句、いきなり懲戒解雇(レッドカード)という形で失敗することが多いといえます。そのような場合は大抵、「不当解雇だ」と逆に訴えられ、これまで指導した記録も提出できず一方的に解雇無効を言い渡され1年分の給与相当額を支払う羽目になります。

単なる指導警告の処分であれば行使しても相手から法的手続により不当性を訴えられることはまずないので、その点気軽に使うことができます。そのように小まめに懲戒権を行使していくことで「厳しい管理職」を演出するのです。同時に処分は必ず書面で行い、記録として残すようにしましょう。

もう一つのポイントは、処分を言い渡す際に必ず「次はこうなるよ」ということを「予告」しておくことが大切です。「今回は一回目だから戒告で済ませるけど、同じことを繰り返したら次はけん責ですよ」といった具合です。予告であれば多少過剰でも問題は無いので、重いペナルティを告げる方が効果的といえます。

そのようにイエローカードを効果的に使うことで、こちらの期待通り相手が改心してくれれば良いのですが、そうは問屋が卸しません。次回は、戒告けん責でも改善しない場合の最終手段についてレクチャーします。



実地指導の準備はお済みですか?
実地指導に向けて対策しておくべきポイントについて、わかりやすくまとまっているPDF資料を、ぜひご活用ください。

-

執筆者:

関連記事

no image

介護事業所で女性に活き活きと働いてもらう方法ー2

目次1 ライフステージに合わせたシフトや雇用形態で女性特有の多様な働き方をサポート2 社会保険への加入は、長く安心して働いてもらえるための大事なポイント3 管理職抜きの「おしゃべり」で、日ごろのストレ …

no image

地域づくりで一歩先を行く武蔵野市 総合事業担当者の吉田さんにインタビュー 総合事業の介護への影響とは?

在宅医療を支える新しい製品開発とは?日本のイノベーションを支えるNEDOの取り組み 重度者・認知症者に関しては介護保険で、介護事業者が中心となる方向性が強化されていきますが、調理、買い物、掃除などの生 …

no image

家庭内虐待を発見、そのとき事業所は?ー2

前回、家庭内虐待の例としてご利用者Aさんとその息子Bさんのケース(親一人、子一人の家庭で起きた虐待被疑事件)を取り上げましたが、以下は訪問介護事業所としての対応法を解説します。 ポイントは、法律上は「 …

no image

「介護しながら仕事続けてる!」今こそ声を上げよう……ー1

女性も高齢者も輝ける「一億総活躍社会を目指す」と国は高らかに掲げていますが、振り返ると私の周囲にいる女性達は働きながら生き抜いてきた人ばかり。母もパートをしながら3人の子供を育てましたし、祖父を事故で …

no image

厚生労働省が示す介護保険制度見直しにおける主な検討事項について(案)

平成28年2月17日におこなわれた第55回社会保障審議会介護保険部会。介護保険部会の開催は実に2年ぶりとなります。介護保険部会では介護保険制度の制度設計を議論する審議会となっているため、ここで議論され …