財務省が示す次期介護保険制度の改革項目


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今回は前回のコラム『財務省が示す医療・介護制度改革の視点と具体的な検討項目』でお伝えしたように、10月4日に開催された財政制度分科会にて財務省が示した社会保障の議論から、介護分野における方向性を抜粋して取り上げたいと思います。

介護保険の改革項目

下記資料には財務省が示す次期介護保険制度の改革項目が掲載されております。資料では改革項目は7項目記載されておりますが、大別すれば4項目に絞ることができます。

1つめは『利用者負担の在り方』です。項目名称でいうと高齢介護サービス費制度の見直しと介護保険における利用者負担の在り方です。2つめは『軽度者への給付の在り方』です。項目名称でいうと生活援助サービスの在り方、福祉用具貸与等の在り方、その他給付の在り方です。事業者さんが一番気になるところがこの部分になると思います。3つめは『費用負担の在り方』です。項目名称でいうと介護納付金の総報酬割です。4つめは『地域差の是正と給付の適正化』です。項目名称は介護費の地域差の分析と給付の適正化です。

どの内容も現在、厚生労働省が行う社会保障審議会の介護保険部会で話し合われており、皆さんもマストニュース等でお目にすることも多いのではないかと思いますし、私もよくこちらのコラムテーマで取り上げさせて頂いております。

ただ、この内容は下記資料のタイトルにもあるように経済・財政再生計画及び改革工程表における改革項目として財務省が掲げているということです。国のお金を握る財務省が経済・財政を再生するためにはこれらをしなければならないと言っているということを私達は認識しておかなければなりませんね。

利用者負担の在り方

高額介護サービス費制度については、平成27年8月より一定以上の所得者は2割負担となり、その際上限が4万4,400円となりました。この額は医療保険の高額療養費制度(70歳以上4万4,400円)と同額となりますが、「一般」の区分は介護においては上限が3万7,200円となっており、高額療養費制度(医療は一般も70歳以上4万4,400円)と比較して上限が低くなっています。この医療保険と比べて上限額が7,200円低い形となっている「一般」層の支給額が現在急増しおり、2割制度導入後も制度全体では、約10年間、実質的な利用者負担割合は上昇していない結果となっております。これを受けてこの「一般」層の上限額を引き上げるべきとしております。

利用者負担の在り方については下記資料の【改革の方向性】(案)に記載されているように1つは要介護区分ごとに、軽度者の利用者負担を引き上げるべきとされております。これは例えば、要介護1、2の人は2割負担にして、要介護3?5は1割負担とするといったような形でしょうね。もうひとつはやはり医療保険の自己負担割合と同じような形で支払う能力がある人にはその分を負担してもらうことを検討するといった内容です。元々の方向性としては65歳?74歳以下までは所得に関わらず、一律2割負担という感じでしたがそれよりも対象範囲を広げる形に思えますね。

これらの内容については10月19日の厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会においても議論され、概ね支持されたそうですので時期が平成30年4月からになるのかと内容の詳細はまだですが、利用者負担があがることは決定されたと思って良いでしょうね。事業者さん側からすれば利用者さんのサービス抑制が起こる可能性はありますからそのへんは想定しておく必要がありそうですね。

軽度者への給付の在り方

次期介護保険改正においてもっとも注目されているのが軽度者への給付の在り方ですね。財務省の意見としては、軽度者に係るサービスの効率化、生活援助サービスの適正化が非常に重要と言っております。特に生活援助サービスに関しては下記資料にも記載されているように、以前から地域支援事業に移行すべきとしております。生活援助は民間家事代行サービスと比較すると著しく割安となっている点や、給付の重点化の観点から、保険給付の割合を大幅に引き下げるべきとしています。

これらの内容については10月12日の介護保険部会で議論され厚労省の方向性としては地域支援事業への移行は十分な検証結果を経た後にという方向を打ち出しましたので、今のところは先送りされそうです。

しかし、ここで一安心していいかと言えばそうではないですよね。私が財務省の人間なら地域支援事業へ移行を先送りするなら単位を下げる方向で話をさせます。結果として給付抑制ですね。また、厚労省側としても介護人材不足を鑑みて、生活援助における人員基準の見直しや、要介護度に応じた負担差を設けることを検討していくそうなので地域支援事業への移行が先延ばしになったとしても現状維持ということはないと思って準備をしておくべきでしょうね。

軽度者に対するその他給付の在り方についてですが、こちらは通所介護が同様に地域支援事業に移行すべきとされております。ここの内容で注目すべき部分は移行の前提として、機能訓練がほとんど行われていないなど、サービスの実態が、重度化の防止や自立支援ではなく、利用者の居場所づくりにとどまっていると認められる場合には、減算措置も含めた介護報酬の適正化を図るべきと書かれていることでしょうね。

生活援助サービスの在り方でも、生活援助により、どのように重度化の防止や自立支援につながるのかをケアプランに明記することを義務付けるべきと書かれておりましたが、この辺は厚労省としても異論を挟むことはしないと思いますので事業者さん側からすれば厳格化されるイメージを持っておく必要はありそうです。

前述したようにこれらの改革項目は財務省が経済・財政を再生するためには必要だと言っているということです。財務省も締め付けだけを厳しくして事業者さんを潰すことをしようとしているわけではないです。議論の中では事業者の利益も確保できるように、規制改革会議で検討されている混合介護などの可能性を考える必要性もあるといっております。

いずれにせよ制度が始まって16年が経過したなかで大きな変換点を迎えようとしていることには違いはありませんからしっかりと情報をキャッチアップしながら準備をしていかなければいけませんね。

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