財務省が示す医療・介護制度改革の視点と具体的な検討項目

投稿日:2016年10月17日 更新日:

社会保障給付費の推移

平成30年に医療・介護のダブル改定が行われますが、その改定と切っても切り離せないものが社会保障給付費となります。医療・介護ともに財源は社会保障給付費となっておりますし、国の命題事項として社会保障制度の持続可能性確保を図るために社会保障制度改革の推進を行っているところです。

 

下記資料は2016年度の社会保障給付費(予算ベース)を入れた過去50年以上の社会保障給付費の推移となっております。2016年度の給付費総額は118兆3,000億円となっており、その内訳は年金が56兆7,000億円、医療が37兆9,000億円、介護が含まれる福祉その他が23兆7,000億円(介護10兆6,000億円)となっております。1970年の給付費総額が3兆5,000億円で内訳が年金9,000億円、医療2兆1,000億円、福祉その他6,000億円ですから比較してみると45年間で給付費総額は33.8倍、年金が63倍、医療が18倍、福祉その他が39.5倍になっていることがわかります。

 

また、2025年度の給付費予想額ですが、総額が151兆円、年金61兆9,000億円、医療53兆3,000億円、福祉その他が35兆8,000億円(介護は19兆7,000億円予想)となっております。年金の伸びがあまりないのに対して、医療が13兆3,000億円、介護が9兆1,000億円と高い伸びが予想されております。これは医療、介護が特に必要となる75歳以上に向かって団塊の世代を含む同学年最多ゾーンが増加していくためです。

高齢化の進展が財政に与える影響

日本の高齢化のピークは2042年の3,878万人と予想されておりますが、2010年は2,958万人となっており、高齢化率23.1%。2015年は3,395万人となっており、高齢化率26.8%。2025年の予測が3,658万人、高齢化率30.3%となっております。

 

高齢化と一口にいっても65歳以上?74歳、75歳以上のカテゴリーで分かれて比較してみると、下記資料が示すように2017年で同数程度になっておりますが、2014年から2025年に向かって65歳?74歳の人口が229万人減少するのに対して、75歳以上は587万人も増加する形となっております。

下記資料が示すように65歳?74歳以下だと1人当たり医療費に占める国庫負担が7万8,000円、介護費が1万5,000円となっておりますが、75歳以上になると、1人当たり医療費に占める国庫負担が35万6,000円、介護費に占める国庫負担が14万5,000円となります。75歳以上になると医療費約5倍、介護費約10倍という形で医療・介護に係る1人当たり国庫負担額が急増することがわかります。

 

例えば介護費の比較をしてみると、65歳?74歳以下が229万人減少するため229万人×1万5,000円=343億5,000万円。

 

一方で75歳以上が587万人増加するため587万人×14万5,000円=8,511億5,000万円。8,511億5,000万円?343億5,000万円=8,168億円が増加することがわかります。このため、高齢化の進展に伴い、仮に今後、年齢階級別の1人当たり医療・介護費が全く増加しないと仮定しても、2025年にかけて、医療・介護に係る国庫負担は急増する見込みとなります。

医療・介護制度改革の視点と具体的な検討項目

先述したように、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向かって医療、介護の社会保障費が飛躍的に伸びていきます。そのため、「経済・財政再生計画」における社会保障改革の基本的な考え方としては経済再生と財政健全化及び制度の持続可能性の確保の実現に取り組み、世界に冠たる国民皆保険・皆年金の維持そして次世代へ引き渡すことを目指した改革を行うこととし、次の5つの基本理念に基づいて取り組むとされております。

 

1. 自助を基本に公助・共助を適切に組み合わせた持続可能な国民皆保険

2. 経済成長と両立する社会保障制度

3. 人口減少社会に合った公平で効率的な医療等の提供

4. 健康で生きがいのある社会

5. 公平な負担で支え合う制度

 

上記、1.?5.の理念に基づき、平成30年度に向けた医療・介護制度改革の視点として次の4つが掲げられております。

 

(1)高齢化の進展を踏まえた 医療・介護提供体制の確保

 

これは所謂、地域包括ケアシステムの構築や高齢化による疾病構造の変化等を踏まえた効率的な医療提供体制のことです。

 

(2)大きなリスクは共助 小さなリスクは自助

 

これは個人で対応できない大きなリスクには共助でカバーする一方、小さなリスクは自助で対応することとし、給付を重点化ということですが、介護保険で言い換えれば重度になれば介護保険、軽度ならば自費ということでしょうか。

 

(3)年齢ではなく負担能力 に応じた公平な負担

 

これは年齢により異なる負担とするのではなく、資産の保有状況等も含めた負担能力に応じた負担とし、全世代で支え合う仕組みを構築ということですが、保険料を1割負担から2割負担へや負担上限額の引き上げなどが考えられますね。

 

(4)公定価格の適正化・包括化等 を通じた効率的な医療・介護

 

診療報酬・介護報酬の適正化や包括的かつ簡素な仕組みへの見直し、薬価制度改革等を通じ、効率的な医療・介護サービスを提供ということですが、これは地域差の問題解消だったりしますね。

上記資料の赤枠で囲んだところが具体的な検討事項となっております。ここ半年間でアップさせて頂いたコラム内容と重なるものが多いですが、財務省で出たテーマを厚労省が揉む形が定番ですので、順繰りという形になっております。次回は財務省が示している介護部分について取り上げていきたいと思います。

 

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