人材確保のための実践的アドバイス―その14 「辞めない人材」を採用する


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職員採用のための実践的ノウハウを伝えてきたが、翻って、そもそも「辞めない人材」を雇用し、離職率を下げ、職員が定着するようになるには、どうすればよいか? 人手不足だから、とだれでも雇用するのではなく、採用基準を設け、理念を明らかにして、経営者としての姿勢を明らかにすることも大切だ。

人手不足だからといって、精査せずに安易に採用しない

これまでにさまざまな採用に関する実践的ノウハウを申し上げてまいりましたが、人材確保に向けての最大の対策はやはり「離職率を下げること」だと思います。介護事業所の離職率は、ここ数年16%?17%台で推移しています。採用と離職の繰り返しでは、ザルのような状態になってしまい、残っている職員のモチベーションにも影響してしまうかもしれません。

私は、「辞めない人材」、正確に言うと「辞めづらい人材」をできる限り採用する。という点にもう少しこだわってもよいと思います。

これまでさまざまな事業所を見たり、話を聞いたりして最も感じるのは、本当にこの人を採用してよいのか、という当たり前の疑問に対して、よく精査せずに、人手不足だから、という理由だけで、安易に(下手をすると無選考で)採用を決めてしまっていることに大きな違和感を持ちます。

最低限度の採用基準は設けるべき

私も元々介護施設の人事責任者をしていましたから、事情はよく理解しています。しかし、「人手不足だから人を選んでいる場合ではない」「せっかく面接に来てくれたのだから、とにかく採用しなくては」という考えから、まったく精査せずに採用して、結局長く続かないというケースが多いのではないでしょうか。長く続かないだけならまだしも、チームワークや事業所の雰囲気を壊し、ご利用者からクレームを頂戴したり、結果として、辞められては困る優秀な職員まで離れていってしまった経験はないでしょうか。

もちろん、贅沢を言っていてはキリがありません。「吟味し過ぎ」という事態にならないよう気をつけねばなりません。しかし、当事業所で働いていただくにはこのような職員であってほしい、といったある程度の採用基準はぜひ設けたほうがよいと思います。

賛否両論あることは百も承知のうえで申しますが、職員の数が足りなくなり、たとえ介護報酬が減算になっても、ご利用者の数を減らすことになっても、最低限度の採用基準は設けるべきだと私は思います。

なぜ介護事業所を立ち上げたのか、初心に立ち返る

なぜ自分は、介護事業所を立ち上げようとしたのか、どのような介護がしたかったのか、介護事業所を立ち上げることによって、地域に対してどのような貢献をしようとしたのか、開設時の初心に立ち返って、もう一度考え直していただければと思います。

皆さまもご存じのとおり、川崎市にある有料老人ホームや相模原の障害者施設で、あってはならない事件が起こりました。

あれらの事件は特にひどいケースですが、まったく精査をせずに「誰でもいい」というような基準で職員を採用するようなことをすれば、ご利用者への虐待等が起こる可能性は残念ながら、高まってしまうと思います。

辞めない職員を採用するためのチェックポイント

面接の中でこれだけは押さえておいたほうがいい、という私なりのチェックポイントをここで申し上げます。

まず、最初に以下のような言葉をかけて面接に入りましょう。

「面接はお見合いと同じです。入社してからこんなはずじゃなかった、ということになるとお互い不幸なので、今日はトコトン本音で話しましょう」

これは、面接を意味あるものにするためのひと言です(最初にこの投げかけを行うと回答の本音度が上がる傾向があります)。

そして、なぜ「介護職」なのか、なぜ「当事業所」なのか、あなたにとって「介護」とは何か、「ご利用者」とは何か、「職場の上司」とは何か、「職場の仲間」とは何か、「今まで苦しかったことをどのようにして乗り越えてきたか」、などしっかりと「自分の言葉」で語ってもらってください。この手の質問は面接の定番なので、場合よってはマニュアルなどでチェックしているかもしれません。もちろん、マニュアルを参考にしつつ、自分の言葉で語っていればよいのですが、明らかにコピーしているだけのような雰囲気を感じたら、さらに「なぜそう思う?」などと、突っ込んでいただきたいと思います。

健康状態や家庭の問題で早期に辞める場合、裏には別の理由が……

また、健康状態、家庭の育児・介護の状況などもしっかりとヒヤリングすべきでしょう。入職してすぐに、健康状態や家庭の育児・介護などの事情で退職したい、などと言われては、本当にガッカリします。なので、面接時に必ずチェックしてください。

さらにこの手の話は、他に本当の離職理由がある場合もあります。健康状態や家庭の育児・介護などの理由であれば、誰も傷つけず、なおかつ「それじゃ、仕方ないね」と一番言ってもらいやすいからです。こんなふうに言われた場合は、じっくり本人の話に耳を傾けて、「他にも辞めたい理由が何かあるんじゃないの?」と優しく、冷静に問いかけてみてください。

場合によっては、本音を話してくれるかもしれません。そしてそのおかげで懸案事項が解決し、離職回避につながるかもしれません。また、この手の話はその人の離職だけで済む話ではなく、事業所全体の『闇』の部分になっていて、経営者・管理者にぜひ把握していただきたい部分なので、可能な限り辞めたい理由を引き出してみてください。

理念のない介護事業所では、職員から愛想を尽かされてしまう

そして、経営者としても、「当事業所の理念はこうである」「ご利用者にはこのように接していただきたい」「仲間とのチームワーク構築はこのようにしていただきたい」といった考え方をしっかり伝え、この考え方に賛同できるようなら一緒に働きたいが、賛同できないなら辞退を考えてください、と伝えるべきだと思います。事業所の理念に賛同できないなら、長く続くはずがありません。

平成26年度「介護労働実態調査」では、「直前の介護の仕事をやめた理由」の第2位が「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったから(22.7%)」という結果が出ています。ですから、後々のミスマッチを防ぐためにも、面接段階から理念のすり合わせはどうしても必要でしょう。

極めてまれに、「理念のない」介護事業所があります。介護事業所を営むに当たって「理念がない」、というのは、私からすると考えられません。

介護事業所にとって「理念」とは、まさに自分たちの存在意義で、他業界よりもさらにこだわるべき部分だと思っています。かなり厳しい書き方をさせていただきますが、「理念のない」介護事業所であれば、逆に職員の方から愛想を尽かされてしまうのも仕方ない話かもしれません。

次回の「介護労働実態調査」で「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったから」に一票が投じられてしまうのは、きっとこんなケースだと思います。



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