「フレイル」を介護の現場に広げよう


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全国の介護予防の現場で、フレイル(虚弱)という考え方が急速に広がりつつある。これまでは介護予防といっても内容は千差万別で、介護予防による改善度を測るモノがなかったが「フレイル」の登場により、わかりやすい物差しができたようにも見える。介護事業者としても、このフレイルを取り入れた事業を展開できないだろうか。

フレイルとは要介護の一歩手前で、筋力や活動が低下する状態

日本老年医学会の定義によると、フレイルとは要介護の一歩手前で、筋力や活動が低下する状態をさす。高齢者になればなるほど筋力が衰える。その状態を「サルコペニア」というが、さらに生活機能全般が低下する状態になることを「フレイル」と呼ぶ。

高齢者はこの状態に陥りやすいが、フレイルの段階で気づき、なんらかの手を打てば、回復できるという。

それを明らかにしたのが、千葉県柏市で地域包括ケアのモデルづくりに取り組む東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢准教授らの調査・研究である。

2012年から柏市の高齢者を対象にフレイルの大規模な研究、調査を実施した結果、フレイルから要介護状態に陥りやすい高齢者の傾向を明らかにし、フレイルの簡易チェック表も作成し、さらにフレイル状態から回復するための処方箋も示せるまでの成果を得た。

11項目にわたる簡易チェックリストと筋肉量の目安となる「指輪っかテスト」でフレイルを判断

この調査・研究によると、フレイルの前段階のサルコペニア状態を招く要因は三つある。

栄養(食と口腔)と運動、社会参加である。

飯島准教授らはそれらを三位一体と呼ぶ。

この三つの中でも、とりわけ重要なのが社会参加をするという意味での「社会性」である。

高齢者の食事調査によると、同居者がいても3度とも食事を一人でする高齢者は、1日1回でも誰かと食事をとる高齢者に比べて、うつ傾向になる確率が4.1倍にもなるという。

家にとじこもりがちな高齢者と外に出かけることが多い高齢者を比べると、外出せずに人とのつながりも乏しい高齢者は、歩行障がいや認知症のリスクも高いこともわかった。

そうした調査結果から同機構は食事の習慣や口腔ケア、運動、社会参加など11項目にわたる簡易チェックリストを作成、さらに両手の親指と人さし指で輪を作り、足のふくろはぎの一番太い部分をつかめるかどうかで調べる「指輪っかテスト」も考案した。その指輪に隙間ができると、筋肉量が少なくなっているという目安になるという。

この簡易チェックで「要注意」となれば、食事と口腔ケア、低栄養に気をつけ、また、地域の人々と会食するようにしたり、地域のグループにも加わり、運動にも心がける、といった対策も打てる。

介護予防のチェックと対策をはじめてわかりやすく示した画期的な成果

これまでの介護予防における取り組みからすると、この調査・研究は画期的なものと評価できるのではないか。

振り返ると、2000年に介護保険がスタートしてから、最大の改正となったのは、介護予防を柱とした2006年からの改正である。

自立支援を介護保険法の目的に掲げながら、自立になかなかつながらず、介護保険のサービスを受けても状態の維持にとどまらず、むしろ介護度が悪化する高齢者が増えた反省からだ。

保険者である全国の市町村や介護事業所はこぞって筋力リハのための高額な機器を導入したり、さまざまな介護予防の教室や○○体操に取り組んだが、成果はなかなか上がらなかった。上がっているかどうか、それを図る物差し(エビデンス)がないために、いわば暗中模索で介護予防に取り組んで来た市町村が多かったように思える。

東大の飯島グループの研究成果は、介護予防のチェックと対策をはじめてわかりやすく示してくれたという意味で、ひと筋の光明にも見える。

この「柏モデル」の簡易チェック表は神奈川県のいくつかの市町村をはじめ、全国の自治体で採用されつつある。フレイルの統一的な判断基準づくりは、これからさらに精査していく必要はあるだろうが、それぞれの地域や介護事業者が、この研究成果をもとに地域の実情に応じて工夫し、まちづくりとして住民参加型の取り組みを広げていくことを心から期待したい。



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