採用面接時の作法~面接で聞いていいこと、いけないこと~

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新規職員の募集をかけ雇用する際、皆様はどんな面接を行っていますでしょうか? 実は応募者に聞いていいこと、いけないことがあり、また「これは聞いておいた方がよい」という効果的な質問項目もあります。知らず知らずのうちに誤った方法で面接をしていたということもあるかもしれません。本コラムを参考に面接技術をブラッシュアップして頂ければと思います。
面接で聞いてはいけないこと
厚生労働省は、採用選考について「応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力のみを基準として行うことの2点を基本的な考え方として実施することが大切です」とアナウンスしています(厚労省ホームページ「公正な採用選考の基本」)。
面接はコミュニケーションですから中には判断が微妙なケースも出てくるかと思いますが、迷ったときは上記観点を意識して臨めば間違いないでしょう。要するに、応募者の人生観や考え方、生まれながらの個性に着目して選別すると、好き嫌いで選ぶことや不当な差別につながりかねないため、飽くまで「仕事をする仲間を迎え入れるためのチェック」という本来の目的を忘れず行ってください、という意味です。
厚労省が具体的に「就職差別につながるおそれがある」とする質問項目は、下記囲みのとおりです。
「尊敬する人物」も聞いてはいけないというのは、ユニークですがうっかり尋ねてしまいそうですね。実際の場面では、応募者をリラックスさせるために世間話のつもりで口にしてしまいそうな事柄が多い様です。他意が無くとも、相手がどう受け止めるかは分かりません。不用意な質問をしないように注意しましょう。そのためにも、面接時の質問リストを整備しそれに沿って尋ねるようにすることは必須といえます。
うつ病などの精神病の既往症は?
それでは、「うつ病をはじめとする精神病の既往歴」を尋ねることはどうでしょうか。一見プライバシーに関することなのでNGと思われますが……。
実は「質問してよい」のです。厚労省が明文でお墨付きを出した訳ではないのですが、基本的な考え方として「業務の目的達成に必要な範囲内」の質問、つまりこれから就こうとする仕事に関係する内容であれば尋ねても問題は無いとされています。
介護の仕事は特にメンタル面が重要であり、うつ病等にり患すると明らかに業務の遂行に支障が出るため、採用時の面接で精神疾患を含めた過去の病歴を確認することは、原則認められています(ただしHIV、B型・C型肝炎等については尋ねてはいけません)。ただし、飽くまで必要な範囲に限られるという前提があるため、例えば「回答はあくまで任意であって、答えたくなければ答えなくてもよい」と前置きする等、何らかの配慮は必要です。
また、事前に、なぜこの質問をするのかを次の様に説明するとなお理解を得やすいでしょう。
「介護の仕事は、感情労働であるといわれます。感情労働とは、「感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが必須とされる職業」のことを言います。コールセンターや銀行の案内係などのサービス業が多く当てはまりますね。勿論肉体労働、頭脳労働の側面もあるのですが、生身の人間であるご利用者と日々向き合う仕事であり、中には認知症であり普段のコミュニケーションが通用しない方等もおられ、慣れないうちは精神的な負担やストレスも相応にあるかと思います。ですから介護職は、まず心身共に健康であることが求められる仕事といえます。そのため、○○さんにうちで働いて頂くことになった後もストレスに負けずに長く続けて頂くためにお尋ねしたいのですが、過去2年間において、うつ病と診断されたり、そのために通院されたことはありますか? もちろん、無理にお答え頂く必要はありませんし、守秘義務がありますのでお伺いしたことは絶対に口外することはありません」
ものの本では、採用に際しアンケートを採るという建前で書面に記入させる方法も紹介されてはいますが、そこまではせずとも良いかと考えます。上記の様に口頭でさらりと尋ねてみるのが無難でしょう。
なお、採用後の誓約書に、誓約事項として「職務の妨げとなるようなうつ病等の精神疾患の既往歴がなく、現在もないこと」等と挙げることは勿論問題ありません。また当たり前の話ですが、うつ病だからといって採用してはいけないということもありませんので、適材適所で入ってもらえるポストがあれば、人手不足のご時世ですからむしろ積極的に雇用しても良いでしょう。いずれにせよ、各人個別の兆候をできるだけ早く察知する工夫を考えらえると、より効率的な人材登用に繋がっていくのです。
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執筆者:外岡潤