人材確保のための実践的アドバイス―その13 求人ターゲットを定めるには、柔軟な発想も時には必要

投稿日:2016年9月8日 更新日:

非コア業務については、積極的にサポート職を活用

事業所の介護職員は、さまざまな業務を複合的に担当しているケースが少なくありません。介護職員の人材不足という現状、将来を鑑みて、この業務は本当に介護の専門職が担うべきか、という視点でもう一度検証し直して、スタッフの配置を考えてみるのもよいのではないでしょうか。

 

専門職の負担軽減を図り、専門職には専門職としての対人援助業務に注力していただき、より利用者満足の高まる介護事業所を構築しませんか、ということです。

 

正社員の負担が過多になっているとかねてから感じているある法人では、複数のサービスやマネジメントなどを担当せず、一つのサービスや業務に仕事の範囲を限定した求人募集枠を設け、職員を採用しているとのこと。本人の能力を超えた過度な負担を強いるのを避けるとともに、特定の業務のエキスパートになってもらうことを期待しているそうです。

 

私の在籍していた事業所でも、「入浴専門スタッフ」という職員に活躍していただきました。「入浴介助」というのは、介護業務のなかでも特に大変な部分を担うので、そこを重点的に補助してくれるというのは、大変有意義だと思います。そのまま、少しだけ時間を延長していただいて、「食事介助」のお手伝いまで助けてもらったり、あるいは「食事介助だけ」という短時間での働き方も、求職者によっては希望する人がいるかもしれません。

 

バックヤード業務の高齢者活用

施設の庭木の手入れ、掃除、洗濯、送迎、車いすのメンテナンスなどの業務に対しては、「シルバー人材センター」から紹介を受けた高齢者や「アクティブシニア就業支援センター」などで採用した高齢者人材を活用してみてはどうでしょうか。

 

「シルバー人材センター」は、読者の皆様方にとっても比較的、認知度があると思いますが、「アクティブシニア就業支援センター」をご存じでしょうか?

 

「アクティブシニア就業支援センター」はおおむね55歳以上の求職者を対象とした地域に根ざした無料職業紹介所で、平成28年8月現在、都内に12ヵ所あります。高齢者に特化したハローワーク、という捉え方が近いかもしれません。新たな「打ち手」として、ぜひご活用いただきたいと思います。

 

平成28年度版高齢社会白書によると、60歳以上の高齢者に何歳ごろまで仕事をしたいか、を聞いたところ、「働けるうちはいつまでも」が28.9%と最も多く、次いで「65歳くらいまで」「70歳くらいまで」がともに16.6%となっており、就労を希望する高齢者の割合は71.9%となっています。

 

また、労働力人口総数に占める65歳以上の者の比率は11.3%となり、昭和55(1980)年の4.9%から大きく上昇しています。現在の労働市場において、高齢労働者の存在は、決して軽視できません。今後、この層の人口ボリュームは圧倒的に増えてきますので、ますます重要な労働力になってくるでしょう。

 

介護予防にもつながるアクティブシニアの活用

また、厚生労働省から発表された「介護予防・日常生活支援総合事業」の基本的な考え方においても、「高齢者の介護予防が求められているが、社会参加・社会的役割を持つことが生きがいや介護予防につながる。」と謳われています。

 

高齢者は制度の利用者という側面だけではなく、制度を支える側にまわっていただくことで、介護業界の人材不足の解消と高齢者の介護予防、あるいは新たな給与収入を得ることによる所得税・住民税等の税収の増加という課題が同時に解決される意味合いがあります。

 

特に「介護予防・日常生活支援総合事業」の住民主体サービス(B)などはこのような考え方を具現化したものかもしれません。

 

先ほど、「バックヤード業務での高齢者活用」について触れましたが、高齢者のもっているノウハウ、ポテンシャルは、バックヤード業務以外のさまざまな場面でも活用が可能かもしれません。ご利用者側から見ても、年の近い高齢介助者のほうが、より親近感がわく可能性も大いにあると思います。

 

夜勤専従職の活用

高齢者活用の話ばかりに行き過ぎたので、「新たな求人ターゲット」に話を戻します。

 

介護職員の「ワーク・ライフ・バランス」が崩れてしまう原因の一つに、夜勤があると考えたある法人では、コア人材の負担軽減のために、夜勤専従職の採用を開始したそうです。

 

夜勤は日勤よりも賃金が高く、夜勤専従を希望する人は一定数存在しており、専従職の確保は日勤の職員確保に比べると、多少容易だったようです。また、通常の正社員の募集においても、夜勤をする必要がなく、日勤のみですむことから、社員の確保もしやすかった、という結果につながったといいます。

 

介護補助職の活用

ある事業所で、「介護職」という職種で職員募集を行ったところ、思うように応募がなく、今度は「介護補助職」という職種で募集をしてみました。

 

実際の業務内容は「介護職」も「介護補助職」もさほど変わらないのですが、「補助職」という名目を用いることによって、心理的なハードルがグッと下がったせいか、応募件数が数倍に増加したそうです。

 

「介護職」という世界に飛び込んでみたい、という意識はあるものの、自分にできるだろうか? という不安のある方々に対して、これは上手くマッチしたケースかもしれません。実際の業務内容はさほど変わらないので、「補助職」で入職した職員も、その後の面接で多くの方が「介護職員」に移行していったそうです。

 

いかがでしょうか。

 

少しだけ柔軟に思考するだけで、様々な可能性が広がってくるかもしれません。当然、これ以外でもいろいろな募集の仕方があると思います。各々の事業所で発想を広げてみてください。

 

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