株式会社若武者ケア(横浜市港南区)Vol.1 新卒採用による人材育成をベースに上場をめざす


投稿日: 更新日:

2007年に事業所を設立した若武者ケアは、3年目の2010年から新卒採用をスタート。1期生の3人全員が定着した実績をベースに、以後、毎年採用を続けてきた。ちなみに2015年度の入社者は13人で、うち福祉系出身者はわずか2人。ほかは経済などの一般学部の出身だ。代表取締役社長の佐藤雅樹さん自身、前職は石油会社で、いわば門外漢。設立を決めてから介護を一から学び、実務経験を積んできたという。

即戦力だけを求めては、経営基盤は固まらない。社員には、仕事を通して成長する環境を贈りたい

佐藤さんのそもそもの志は起業。

「前職で経営企画や財務セクションの仕事を担ううちに、自分自身で会社を経営したいと思うようになったんです」

その佐藤さんが起業の基本的な条件として置いたのが、「社会の役に立つ」「仕事を通じて成長できる」「今後伸びる産業」の3点。在職中からさまざまな業界の情報を集めて研究を続けてきて、介護事業こそ、3条件を満たす産業であるとの結論に達したのだった。

 

介護事業を選んでからは早かった。2006年に退社後、約1年かけて、職業訓練校で介護技術の基礎を学び、派遣社員として介護老人保健施設と特別養護老人ホームで実務を身につけ、翌2007年、訪問介護事業所を設立する。

「一般的なビジネスのノウハウを、介護経営に取り入れる必要があり、それをぜひ実現したいと考えていました」と、佐藤さんは言う。「なぜなら、高齢になれば誰もが介護を受ける時代。実際に、介護はとっくに特別な産業ではなくなっているからです」

 

新卒採用者をじっくり育て、その人に合ったポジションを与えつつ、その一方で、優秀な人材は、若いうちから後輩を育成する立場も経験させ、将来の経営幹部を育てるという経営方針を貫いてきた。

 

とはいえ、設立3年目での新卒作用は、一般の業界から比べてもかなり早い気がするが、背景にはやはり人材不足がある。「もともと需要が供給を上回る業界です。地域に認知されれば仕事は増える。それを即戦力の経験者だけで補っても経営基盤は固まりませんし、社員も仕事を通じて成長しているヒマがない。正直、新卒採用に関しては、当初は内外からクレームの嵐でしたが、1年ほどで介護のベテランよりも会社に貢献するようになりました」(佐藤さん)

 

人材育成のコストは惜しまない。未経験者全員が会社負担でヘルパー1級資格(実務者研修)を取得する

新卒社員を雇用するからには、不足しているサービス提供責任者に就ける人材をどう育成するかが課題だった。事業規模拡大や、新規事業所立ち上げの際に、サービス提供責任者の配置が必須となるからだ。

採用を、介護・福祉系出身者にこだわらないとすれば、新卒社員に最短でサービス提供責任者に就ける資格をどう取得させるかという問題が浮上せざるを得ない。

 

佐藤さんは、当時、これを採用決定から入社までの間にヘルパー2級と1級を一気に取得させることで解決した。費用は全額会社負担。

「コストはかかりますが、その分、やる気のある人を採用できる。不幸にして資格取得の勉強が続かなかったとしても、入社後に辞めるよりは、お互いに傷が浅くてすみます」

 

1期生3人は全員が資格取得をクリアして定着。この実績をベースに毎年採用を続け、数年前から新卒の採用を2ケタ台へと増加させている。

佐藤さんのこの考え方は現在も変わらない。現在では1級ヘルパーに代わり、実務者研修を受講・修了してもらう。

 

もちろん、管理者として必要な知識やコミュニケーション能力の育成にも力を注ぐ。

「私自身もそうですが、経験の長さや深さでいったら登録ヘルパーさんにはとうていかないません。その分、介護保険制度や将来の見通しなどについてしっかりした知識や分析力を見につけて、スタッフにわかりやすく説明する。あるいは、ヘルパーさんたちの言葉にならない要望をくみ上げたり、事業所の雰囲気を気軽に立ち寄れるように工夫する。介護技術でわからないところは、逆に教えてもらえばいいんです」

 

「とくにこの仕事は、スタッフ自身が安心して気持ちよく仕事ができる環境をつくらなければ、お客さまが本当に満足していただける介護はできません。働きやすい環境づくりは管理者の最重要課題と言ってもいいほどです」(佐藤さん)

 

経営トップの正直さとチャレンジ精神が若手社員の「やる気」を刺激する

とはいえ、失礼ながら、1期生採用当時にとどまらず、設立8年を迎えた現在でも、新卒採用は難しいのではないか。

「もちろんです。規模は拡大しているとはいえ、まだまだ無名の会社です。ですから、学生とはお互いに何をやりたいのかをはじめ、じっくり面接します。そのうえで、管理者になれる、あるいは介護事業に向いていると思った人には、私が直接説得しています。面接というよりもう、説得ですよ」と、佐藤さん。

 

正直な人である。実は、この正直さと、社員を対等の存在と考える姿勢が、若手社員の定着につながっている。たとえば入社6年目の細谷和樹さんは、「会社自体、まだまだ伸びていかなくてはならないと、社長自身が一番強く思っていると日々感じます。だから、いろいろなことに挑戦している。僕も『負けていられない』という気持ちになるんですよ」と話す。細谷さん自身、そんな佐藤さんに刺激されて、入社後に社会福祉士および介護福祉士の資格を取得したほか、管理者には欠かせないと簿記検定3級にも合格している。

 

「もう一つ嬉しいのは女性が多い業界のなかで、社長が男性を育てようという気概を持っていることですね。介護には男性だからできる仕事もあって、そのスペシャリストになる道もあるし、新たにスタートした障がい者支援事業の担い手として力を発揮している人もいるんです」(細谷さん)

 

佐藤さんによれば、新卒1期生が入社した2010年は、同社の第4期の始まりでもある。同じ年から、中途採用でも未経験者を積極的に採用。2015年4月現在の社員数86人、平均年齢32歳、男女比率3対7)。設立10年目を目前に今、若武者ケアとしての新たな経営戦略が動き始めている。

※介護福祉士 細谷和樹さん

 

今回の取材先:株式会社若武者ケア(横浜市江南区)

 

-

執筆者:

関連記事

no image

在宅のご利用者の徘徊、危険運転リスクにどう対処すべき?

今回は認知症が原因となる事故等のリスクについて解説します。読者のあなたが在宅のケアマネージャーや訪問介護事業所の方だったとして、担当するご利用者が認知症だった場合の徘徊や運転リスクにどう対処すればよい …

no image

地域包括ケアの難しさ―――ケアマネはやはり連携の要か

目次1 医療と介護が連携する場合、同じ市内の診療所医師のほうが進めやすい2 在宅医療の確保には限界があるのでは? 在宅医療をしない診療所医師の問題はどうなる3 地域包括ケアシステムにだれが責任をもって …

no image

介護事業所の人財育成―2

目次1 「人間力」の向上は「形」から2 人は、形を通じてその心を知る3 「形」を極めることこそが人財育成の極意 「人間力」の向上は「形」から そのためには、まず職員自身の「人間力」を向上させなければな …

no image

人材確保のための実践的アドバイス―その14 「辞めない人材」を採用する

職員採用のための実践的ノウハウを伝えてきたが、翻って、そもそも「辞めない人材」を雇用し、離職率を下げ、職員が定着するようになるには、どうすればよいか? 人手不足だから、とだれでも雇用するのではなく、採 …

no image

超高齢社会に向けて 今後わんまいるが展開したいビジネスは?

目次1 健幸ディナー・・高齢者からのニーズは高く、ラジオで紹介されて反響を呼ぶ2 デイやグループホーム、サ高住、特養など高齢者施設を対象に。一人分からお届けOKのお惣菜&軽食専用卸売サイトを開設3 厨 …