利用者負担のあり方について


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今回は平成28年8月19日行われた第61回社会保障審議会介護保険部会資料より「利用者負担のあり方」について内容を解説していきたいと思います。最近のコラムと同様に介護保険制度の持続可能性の確保に向けた、給付のあり方における焦点の1つになっている内容です。

介護保険制度をめぐる現状

介護保険制度が開始されてから16年が経過致しました。その間にサービス利用者は創設当初の3倍となる500万人を超え、介護保険費用も平成28年度の予算ベースにおいては年間で10兆円に達する形となっております。

介護保険費用の財政構成は公費50%、保険料50%の負担割合になっております。保険料50%の内訳は第1号被保険者(65歳以上)が22%で2兆1,000億円、第2号被保険者(40歳以上?64歳以下)が28%の2兆7,000億円となっております。

下記の資料をご覧いただくとおわかりのように、65歳以上の保険料負担は制度創設時が1ヶ月あたり2,911円であったのに対して、現在では1ヶ月あたり5,514円の負担となっております。介護保険費用が増すごとに65歳以上の保険料負担も増えている形となっております。

団塊の世代が75歳以上となる2025年には、介護保険費用は20兆円に達し、65歳以上の保険料負担は8,000円を超える見込みと言われております。

このような中で現在、給付と負担のバランスを図りつつ、保険料、公費及び利用者負担の適切な組み合わせにより、介護保険制度の持続可能性を高めていくことが重要な課題となっております。

利用者負担割合の変遷

医療保険制度の患者負担(70歳以上の高齢者)においては、設立当初は定額制だったものが、平成13年1月より一律1割負担となり、平成14年10月からは一定以上所得のある方は2割負担。平成18年10月からは一定以上所得のある方は3割負担。平成20年4月からは70歳以上?74歳までは2割負担となっておりましたが、特例措置で平成26年3月までは1割負担の扱いとなっておりました。

一方、介護保険制度においては、制度創設以来、利用者負担割合を所得にかかわらず一律1割としておりましたが、平成27年度の介護保険法改正において、今後の保険料の上昇を可能な限り抑えつつ、現役世代に過度な負担を求めず、高齢者世代内において負担の公平化を図っていくため、一定以上所得のある方については平成27年8月より利用者負担割合を2割に引き上げされました。2割負担の対象者については、第1号被保険者全体の上位20%に該当するものとして、合計所得金額160万円(年金収入のみの場合280万円)以上と設定されております。

事業所を運営されている方は、利用者さんの一部が2割負担になった際に本人やご家族さんから「何故利用負担が高くなったのか」とクレームを受けたり、負担割合倍増に伴う出費抑制の為にサービスを抑制されたりと影響を受けた所も少なくないかもしれません。

直近のサービス受給者の推移

下記資料をご覧頂くとおわかりのように制度施行後の実績をみると、直近のデータ(平成28年2月サービス分)では、2割負担に該当するのは、在宅サービス利用者のうちの9.7%、特別養護老人ホーム入所者のうちの4.1%、介護老人保健施設入所者のうちの6.2%となっております。また、サービス毎の受給者数をみると、平成27年8月の施行前後において、対前年同月比の傾向に顕著な差は見られないとなっております。

ただし、この対前年同月比の傾向に顕著な差がないことがイコール2割負担の影響がなかったのかというとそうではないですよね。これはあくまで受給者数の伸び率であり、2割負担者の割合を示したものではないですし、2割負担者のサービス量がそのままなのか減ったかどうかはわからない形となっております。

要介護度の重い方で2割負担になると自己負担額が大変だと思われるかもしれませんが、医療保険における住民税課税世帯の基準は現在4万4,400円となっており、それに合わす形で介護保険制度においても、医療保険の現役並み所得に相当する人がいる世帯に限定して、限度額が3万7,200円から4万4,400円に引き上げられております。つまり、要介護度5の方で単位をギリギリまで使っており、尚且つ2割負担であったとしても自己負担額が4万4,400円までとなっております。

論点

下記資料をご覧頂くと現在、審議されている論点が記載されておりますが、少し遠まわしな書き方となっております。具体的に次期改定に向けて検討されている内容は(1)利用者負担割合の引き上げについて。特に65歳?74歳以下までは所得に関わらず、一律2割負担にしてはどうかということ。(2)自己負担額の上限4万4,400円を引き上げるべきかどうかということ。(3)不動産の勘案について、資産を預貯金で持つ人との負担率の不公平感や、不動産を持っていたとしても地域ごとの地価による価値の違いなどを含めてどのように考えるかということ。以上3点が検討されております。

平成28年4月末現在の要介護認定者における2割負担者の割合は約9.4%となっておりますが、次期改定において65歳?74歳以下が2割負担になればそのパーセンテージは大きく変動します。勿論、そのようになれば事業所経営にも少なくない影響を受けることとなります。

介護保険制度の持続の観点から考えればやっていかなければいけない部分ではありますので、このようなことも想定して戦略を練っていかなければなりませんね。

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