ICTを活用した「保険外サービス」が職員の働き方にもたらした効果とは? ‐マルシモホームヘルプサービス‐


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東京都豊島区にある「マルシモホームヘルプサービス」は、豊島区が全国に先駆けて取り組む「選択的介護」のモデル事業に参画しています。選択的介護とは、保険サービスと保険外サービスの柔軟な組み合わせを可能にするもの。マルシモホームヘルプサービスでは保険外サービスとして、ICTを活用した見守りサービスを提供しています。

ICTを活用した見守りサービスを始めたことで、社内のICT活用が活発になり、事務作業が減り、休みのとりやすさや、職員同士の深いコミュニケーションにつながっていると言います。保険外サービスの具体的な内容から、職員の働き方に好影響をもたらした経緯について、広報課長の小堀剛史さんに伺いました。

地域のニーズにこたえる「見守りサービス」

――モデル事業に参画されている豊島区の「選択的介護」について教えていただけますか。
訪問介護サービスの前後や合間に、保険外サービスを提供するもので、ペットの世話や庭掃除などの「居宅内」・お墓参りの同行など外出を支援する「居宅外」・カメラやセンサーを利用した「見守り」の3つに分類されています。

「居宅内」と「居宅外」の利用時間の単位は10分・15分・30分・60分・120分のいずれかで、料金は1時間2000~3600円程度。利用時間と料金は、サービスに合わせて各事業所が設定しています。

どのサービスを提供するかは、ご利用者のニーズを確認し、ケアマネジャーと相談して決定します。厚生労働省の通知では、保険外サービスの内容をケアプランに記載することは努力義務となっていますが、豊島区のモデル事業では義務化されています。

参考:「介護保険最新情報 Vol.678 -介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて-(2018年9月28日)」

――3つの分類の中で、どのサービスを提供していますか?
すべてのサービスを提供していますが、特に力をいれているのは、カメラによる「見守り」サービスです。

――見守りサービスとはどのようなものでしょうか。
例えば6時と23時30分など、1日2回の決められた時間に、室内に設置したカメラで「カメラ訪問」をして、ご利用者の様子を確認します。赤外線カメラなので夜間も様子を確認できます。音声機能もあるので、何か異変を感じた場合にはまず声がけをして、必要があれば24時間対応で訪問可能です。月額4980円で、Wi-Fi環境がない場合はプラス月額1500円で設置します。

見守りカメラは、小スペースにも配置できるコンパクトなサイズ感(提供:有限会社マルシモ)

見守りカメラは、小スペースにも配置できるコンパクトなサイズ感(提供:有限会社マルシモ)

――なぜ、見守りサービスに注力されたのですか?
もともと、24時間365日対応の訪問介護サービスを提供していたので、24時間体制の見守りサービスにはスムーズに参入できると考えました。また、豊島区は独居の高齢者が多いので、見守りサービスの需要は高いと思います。

これまで深夜2時に訪問して見守りしていたご利用者に導入してもらったところ、眠りを妨げることがなくなり、満足いただいています。

――職員のみなさんの反応はいかがでしょうか。
「選択的介護」や「モデル事業」などの用語だけが伝わると、「新しいことをする余裕なんてない」といった抵抗感が生まれます。しかし、用語が珍しいだけで、提供するサービスはこれまでの保険外サービスとあまり変わりません。提供してきたサービスに、カメラやスマートフォンなど便利な機器を利用するだけだとわかりやすく説明したところ、比較的スムーズに理解を得ることができました。

異変があってもなくても、深夜2時に必ず訪問するというのは、職員にとっても負担になります。カメラによる見守りは、スマートフォンやタブレットで確認できるので、ご利用者だけでなく、職員の負担も軽減できています。

ご家族は24時間いつでも、カメラの映像を確認できるようになっている

ご家族は24時間いつでも、カメラの映像を確認できるようになっている

ICT化で深まるコミュニケーション

――スマートフォンは職員全員に支給されているのですか?
はい。外出先からご利用者についての情報を確認したり、移動の合間に介護記録を作成したりするため、スマートフォンは全員に支給しています。とにかく業務効率を高めるために、ICT化には積極的に取り組んでいます。

事務作業を効率化することで、ご利用者との対話や、職員同士のコミュニケーションなど、大切なことに時間をかけられるようになりました。残業はほとんどありませんし、希望通りに休みも取りやすくなっています。福利厚生として、年に1回、10日間の連続休暇がとれる、リフレッシュ休暇制度もあります。

――10日間の連続休暇とは、シフトの調整など大変そうです。
ひとりのご利用者に対して、最大10人程度のチームで関わるので、誰かが休んでも他の職員が対応できるようになっています。シフトの調整もしやすく、急な休みにも対応できますし、休む人も安心して同僚に任せることができます。

――ひとりのご利用者に10人の職員とは驚きました。
ご利用者やご家族にとっては、同じ人が訪問するという安心感も、もちろんあると思います。そのため、大人数でケアに関わることを事前にご説明し、納得いただいています。新しい職員がチームに入る際には、責任者が同行してご挨拶に伺います。

要介護度が高く、活動範囲は狭まりがちなご利用者の場合、たくさんの職員が関わることで、コミュニケーションの幅が広がるという声もいただいています。20代~60代まで様々な年代の職員がいるので、相手に合わせて話題を用意しているご利用者もいるほどです。社会性のデリバリーだと思っています。

残業削減、休みのとりやすさなどが評価され、豊島区のワーク・ライフ・バランス推進企業に認定されている

残業削減、休みのとりやすさなどが評価され、豊島区のワーク・ライフ・バランス推進企業に認定されている

――チームでケアするとなると、情報共有がますます重要になりそうですね。
その通りで、ご利用者の状況をしっかり共有できていることが、大前提として必要になります。職員間で共有する介護記録のほかに、情報共有のツールとして、MCS※というSNSツールを利用しています。当社の所属するグループには医師・薬剤師・ケアマネなどが所属していて、怪我や熱など何かしらの異変があった場合に、その場で医療関係者に相談ができます。

※MCS(メディカルケアステーション)…医療介護関係者専用のクローズドSNS。医療・介護従事者の多職種連携に活用されている。

例えば、以前私が訪問したときに、ご利用者が出血していたことがあり、褥瘡のようでした。急ぎ医師に対応を相談すると30分で返事があり、現地で素早い対応ができました。

やりとりはチャット形式で残るので、後日同じご利用者の元に訪問する職員も、どのようなやりとりがあったのか確認することができます。

――職員同士の、対面のコミュニケーションもあるのでしょうか。
ご利用者のお宅に直行・直帰するのではなく、出勤時・昼休憩・退勤時に出社するので、顔を合わせる機会は多いと思います。業務の効率化が進み、お昼休みに事務作業に追われるようなこともないので、職員同士でお昼を食べながら雑談していますよ。

業務のノウハウで悩んでいることがあれば、相談する場面も見かけます。1日6人程度が出社しているので、6通りの成功体験・失敗体験を聞くことができ、特に若い職員には、重要なコミュニケーションの場となっているようです。

保険外サービスから新たなニーズの発見

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――他に、保険外サービスに注力されて良かったことはありますか?
ひとつは、保険外サービスで自立支援に手応えを感じていることです。メニューの中に、「電子機器の操作確認」と「宅配・ネット注文サポート」があるのですが、これを利用いただいて、スマートフォンの開通と家電の音声操作の設定を行いました。ご利用者から、「エアコンやテレビなど家電を自由に操作できるようになり、麻痺で失っていた“自分でコントロールできる生活”が戻ってきた」という言葉をいただきました。

もうひとつは、見守りサービスにより、ご家族の満足度が高まったことです。ご家族は24時間いつでも、カメラの映像を確認できるのですが、たまたまカメラを通して訪問介護サービス時の様子を見たご家族から、ヘルパーのサービス内容に納得感を感じて、感謝の気持ちを伝えてもらったことがあり、これは意外な効果でした。言葉でどれだけ伝えるよりも、実際に見てもらうことが、信頼感や安心感につながるようです。

カメラの設置は生活範囲の中心になるので、心理的なハードルが高く、見守りカメラの事例は10件とまだ少ないのですが、導入後はガラリと変わって、ご利用者もご家族も好意的になることがほとんどです。

訪問型のサービスは人がいない時間が必ずあります。そこを埋めることができる見守りサービスだからこそ、新しいニーズの掘り起こしも可能だと思っています。

――見守りサービスから気付かれた、ご利用者のニーズなどはあるのでしょうか。
1日2回の見守りを続けることで、少しの変化にも気付けるようになります。例えばテレビの音量が大きくなっているなどの変化から、聴力の低下に気付くこともできます。

老人性難聴は徐々に進行するため、自分では症状に気付きにくいことがあります。補聴器を試しに使ってもらうと、聞こえにくくなっていたことに気付いて、大変驚かれたということもありました。

イギリスのある研究では、認知症の一番の原因は「聴力の低下」という研究結果もあります。また、大音量のテレビはご近所トラブルの原因になったり、聞こえないことでコミュニケーションに消極的になったりすることもあります。

――老人性難聴の自覚の難しさに気付かれたのですね。
はい。しかし、集音器と違い補聴器はエントリーモデルでも12万円程度で、簡単に購入できるものではありません。そこで、新たに補聴器のレンタルを始めたいと考えています。月額制で、まずは試しに使ってみたり、自分に合ったモデルを探すことができるというものです。購入よりもまず体験。普通に聞こえる世界をもう一度体感していただくことで、家族や地域とのコミュニケーションが活発になり、介護予防にもつながると考えています。

取材メモ
保険外サービスへのチャレンジが職員の働きやすさへとつながって、好循環が生まれていることが、お話の中から一貫して伝わってきました。最新技術を使い、ただ業務を効率化するのではなく、介護の仕事で本当に大切なものは何か、そこを突き詰めているのだと強く感じました。そのような姿勢が、新たな事業へのアイデアにつながっていくのだと思います。

今回のとなりの介護事業所は?

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小堀 剛史(こぼり まさし)
1982年、東京都生まれ。有限会社マルシモ広報課長、マルシモホームヘルプサービス管理責任者、マルシモエンタテイメント株式会社重役。訪問介護事業所のヘルパー、サービス提供責任者を経て現職。
現在も訪問介護の現場で活躍しつつ、専門学校の講師やアプリ開発支援、「認知症」「保険外サービス」「介護×I C T」などをテーマに、地域住民や学生、医師会や行政機関、介護サービス事業所などで講演、講義、研修を行う。

マルシモホームヘルプサービス
24時間365日の訪問介護サービスを始め、居宅介護支援、デイサービスで地域の高齢者の生活を支える。代表の父親は漫才協会会長の青空球児氏。人を笑顔にすることの効力を感じてきた経験から、笑顔が生まれる介護サービスを提供している。

サービス種別:訪問介護・居宅介護支援・通所介護
住所:東京都豊島区南大塚2-31-11 共栄大塚ビル3階
運営:有限会社 マルシモ

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