変わる在宅医療と薬局の役割 2016年度診療報酬改定を読む(2)


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地域包括ケアシステムが機能するかどうか、鍵を握るのは地域の医療資源です。2016年度診療報酬改定の解説の第2回目は、外来や在宅医療、保険薬局など地域の医療資源にクローズアップします。

「主治医機能」はどこまで広がるか

前回の2014年度改定では、中小病院・診療所に対して“主治医機能”を評価する診療報酬が設けられました。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、認知症のうち2疾患以上を持つ患者を対象に、1人の主治医が他の医療機関の受診状況や処方薬を把握し、日常的な健康管理から介護保険対応や在宅医療、24時間の対応などまでを手がけることが条件です。

 

この主治医機能を担っているのは全医療機関の5%未満です(2015年5月現在)。人員体制、機能など求められる要件が厳しく、数は限られています。そこで今回の改定では、条件が少し緩和されました。

 

また、認知症患者で主治医機能を担う医療機関が少ないことから、認知症に特化した主治医機能も設けられました。必要とされる機能は従来の主治医機能と同じですが、「認知症+他の疾患」と、合併する疾患が規定されていないのが特徴です。

 

これらの主治医機能からは、高齢者人口が増加するなかで、予防から治療、介護まで日常診療におけるニーズに総合的に対応できる、1ランク上のかかりつけ医を増やしたい、という国の方針がうかがえます。しかし、中小病院や診療所がこれらの機能を備えるのは負担が大きいのは確かです。また、自由に医療機関を選んで受診できる制度になじんだ患者などが、こうした仕組みを望むかという問題もあります。

 

一方で、人口減少と高齢化が進むほど、多くの診療科が揃ったデパートのような医療機関は維持しにくくなるという状況もあります。診療所などにとっても、介護保険との連動や在宅医療への対応が、経営面で重要性を増していくことになるでしょう。

 

2017年度末の介護療養病床の廃止(予定)もあり、手厚い体制を必要とする主治医機能を持った医療機関を、有料老人ホームなど居住施設に併設、近接させるスタイルも、これからは多くなるのではないかと予想されます。2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定で、この主治医機能がどのように位置づけられるのかが注目されます。

 

有料やサ高住は“施設”に 在宅報酬は根本から見直し

かかりつけ機能とともに、地域包括ケアシステムに欠かせないのが在宅医療です。前回の改定では、集合住宅などに患者を集め過剰に訪問診療させ、報酬のキックバックを受ける悪質な業者などが問題になりました。そのペナルティとして、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など同一建物の居住者への訪問診療の報酬が大きく減額されました。それに対して、現場から高齢者住宅などへの訪問控えを懸念する声が上がり、緩和措置が導入された経緯があります。

 

今回の改定では、在宅医療の報酬体系が根本から見直されました。重症度や居住場所に応じて、報酬が細分化されたのです(図1)。

図1:在宅医療における重症度・居住場所に応じた評価(1)(平成28年度診療報酬改定の概要より)

特定施設でない有料老人ホームやグループホームなどに関わる変更も行われています。在宅医療の報酬(医学管理料)は、“自宅”向けと、“施設”向けの2区分が設定されています。“施設”に当たるのは養護老人ホームや特養、特定施設などで、“自宅”向けの報酬より単価が低めに設定されています。それに対して、特定施設以外の有料老人ホームやサ高住、認知症グループホームには、従来は“自宅”向けの報酬が適用されていました。

 

今回の改定ではこの区分が見直され、有料老人ホームやサ高住、グループホームも、施設向けのカテゴリーに含められました。その結果、例えば改定前に1カ月に4万2,000円だった医学管理料は、改定後は2万7,000円にダウンすることになったのです(※同じ建物内に患者数1人で月2回以上訪問している場合)。改定前からの患者については、2017年3月末までは従来通りの報酬が算定できますが、この区分見直しにより、居住系施設などへの訪問診療の旨味は減りました。

 

また、自宅、施設向けの報酬のいずれでも、同じ建物内に複数の患者がいる場合の評価の視点が変わりました。今までのように、同じ日に訪問した人数ではなく、担当する患者数に応じた3段階の報酬が設定されました(図2)。加えて、今までは訪問回数は月2回以上とされていましたが、月1回の訪問も認められました。

図2:在宅医療における重症度・居住場所に応じた評価(3)(平成28年度診療報酬改定の概要より)

在宅見直しで考えられる介護への影響

このように在宅医療の報酬体系は細分化され、複雑になりましたが、前改定時に比べ減額の傾斜は緩やかになりました。ただし、有料老人ホームなど居住系施設を中心に訪問していた医療機関では、大幅な減収になります。同じ建物内の訪問患者数を9人以内に抑える、重症患者を積極的に診るといった動きも出てくるでしょう。

 

また、緊急往診や看取り、緩和ケアなどで一定の実績のある医療機関への評価が手厚くなったため、終末期対応に力を入れる医療機関も増えると予想されます。今後、施設内での看取りにおいて、医療機関との連携が図りやすくなることが期待されます。

 

反対に、状態が安定している患者などでは、訪問回数が月1回になるケースも出てくるかもしれません。医師との間で、利用者の訪問回数のほか、すぐに連絡すべき状態、緊急時の連絡方法などを改めて確認しておくことが必要です。

 

そのほか今改定では、外来を持たない、在宅専門の診療所が初めて認められました。ただし、普通の診療所にはない縛りが設けられました。特に、報酬の高い在宅療養支援診療所となるためには、「有料老人ホームなど施設入居の患者への訪問が7割以下」「要介護3以上の患者の割合が5割以上」という厳しいハードルが課されました。これまで実質的に在宅を専門としていた診療所では、体制の見直しを迫られる可能性もあります。

 

薬局による残薬整理が広まる可能性

今改定では、不適切な多剤投薬(ポリファーマシー)への対策が導入されたことも大きなトピックです。医師に対しては、薬を減らすことに対して報酬が設定されました。6種類以上の内服薬が処方されている患者に対し、効果と副作用の可能性などを総合的に評価したうえで、2種類以上薬を減らしたときに報酬が得られる仕組みです。

 

合わせて薬局にも、医師と連携した、多剤投薬や残薬などへの取り組みがうながされました。なかでも残薬への対策として、在宅医療の対象にはならない人に対しても、患者や家族の同意があれば、薬局薬剤師が医師に確認することなく、ワンポイントで訪問し残薬の整理ができるようにルールが見直されました。

 

これらの改定により、薬局による、次のような残薬対策が拡大されることが期待されています。

 

・お薬手帳とともにあまった薬をすべて薬局に持っていき、窓口で整理してもらう

・一時的な訪問を依頼し、利用者宅で残薬の整理や服薬支援をしてもらう

・残薬や薬の管理の混乱を防ぐために、薬局でバッグ(ブランバッグ)をもらい、そこにすべての薬を入れて保管する。薬局に行くときにはバッグごと持参し、その都度薬剤師に薬を管理してもらう

 

在宅医療が入っていない要介護者では、薬の管理などに問題があっても、通院先の医師や薬剤師は把握していないことがしばしばあります。自宅の状況を見ていないことや、その人の普段の様子をよく知らないために変化に気づきにくいことが理由です。長時間利用者に接している介護職だからこそ知り得る情報を、ケアマネジャーや薬局などに提供し、利用者の服薬の質向上に役立てることが求められます。

 

「かかりつけ薬剤師・薬局」とは?

今改定では、「かかりつけ薬局・薬剤師」という新たな制度も導入されました。1人の薬剤師に、他の医療機関や薬局でもらった薬も含め、すべての薬の情報管理や服薬指導などを継続して任せる仕組みです(図3)。通常よりも自己負担が20?100円高くなりますが、24時間の対応も役割に位置付けられ、担当患者の薬に関わることであれば、介護職が電話で問い合わせることもできます。

図3:かかりつけ医とかかりつけ薬剤師の連携(平成28年度調剤報酬改定及び薬剤関連の診療報酬改定の概要より)

かかりつけ薬剤師になるためには、薬局などの勤務経験が3年以上、研修認定薬剤師の取得などの条件が設けられています。薬局(かかりつけ薬局)に対しても、地域活動などが義務付けられています。かかりつけ薬剤師を希望する患者は、これらの条件を満たした薬局の薬剤師から自分の担当を選び、書面で同意します。

 

患者本人による同意が困難な場合は、介護を行っている家族などが代替することができます。また、一度担当を決めても、別の薬剤師や薬局に変更することもできます。

 

かかりつけ薬剤師は、誰にでも必要とはいえませんが、複数の医療機関から多くの薬を処方されている人、薬の服用や管理がきちんとできず残薬が多い、抗がん剤など特に副作用に注意が必要な薬を使用している人などには有用な制度です。

 

通院している患者だけでなく、医療保険や介護保険で訪問薬剤指導を受けている患者でも、かかりつけ薬剤師を持つことはできますが、実質的にはほぼ同じ機能が居宅療養管理指導などで提供されています。

 

なお、居住系施設の入居者でもこの制度は利用できます。ただし、施設単位でまとめて契約することはできません。

 

特別養護老人ホームや老人保健施設の入所者は制度の対象外ですが、特養については、今回の改定で、薬局薬剤師が利用者や介護職員に服薬状況などを確認し、指導することが可能になりました(図4)。薬局に薬を届けてもらっている施設では、多剤を服用している人や、重い副作用などの経験のある人などについて、薬剤師に服薬管理を頼むのも一つの対策です。

図4:介護施設の患者に対する薬剤管理指導(平成28年度調剤報酬改定及び薬剤関連の診療報酬改定の概要より)

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