小川孝之さん(イオンリテール株式会社 イオンスマイル事業部 事業部長) 高齢化するお客さまに対してできるサービスをVol.2

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「イオンスマイル」は、小売り大手のイオンが手がけるリハビリ特化型のデイサービスで、グループのイオンリテール株式会社が運営している。2013年9月、東京都江戸川区の葛西店で始めたが、当時は、「小売業が介護事業で何ができるのか」と、なかなか風当たりも強かったという。その「イオンスマイル」として介護業界への進出を社内で提案し、立ち上げからずっと関わってきた小川孝之さんにお話を伺った。後半では、経営の課題、従業員教育、今後の展望などについて掲載したい。

新規参入者に厳しい風も。お客さまに教えていただきながらここまできました

――最初から利用する方は集まったのでしょうか?

 

やはり最初は厳しかったです。ケアマネジャーのところへ行っても、「イオンさんってスーパーですよね?」と介護でやっていけるとは思っていただけなかった。地道にやっていくしかありませんでした。

 

イオンスマイルを始めた時は、私もウエアを着て毎日現場に立ちましたが、最初の1カ月は2人しかいらしゃいませんでした。でもその2人がいろいろと教えてくださいましたね。他の事業所はこうする、介助はこうするんだよとか。お客さまの方がベテランでしたね(笑)。

 

でも、そういったことが本当にありがたかった。お客さまに支えられて今までやってこられましたよ。

建物、人材、課題はいろいろ、採用条件も見直しました

――今、店舗を少しずつ増やしていかれていますが問題点などはありますか?

 

実は、デイサービスの施設と小売業の施設では建築の基準が異なるんですよ。小売業では日光は敵で、日があたると商品を劣化させてしまうので、窓が少ない方がいいんです。けれどもデイサービスは違って、採光が必要なんですね。出店させようとすると基準をクリアするのが難しく苦労しています。

 

1号店は、昔、カルチャーセンターを併設していて、そこは光を取り入れていたのですぐに改装してオープンすることができました。今はレストランなどが入っていて窓の大きい店舗も多いですが、昔の店舗は違ったんです。

 

けれども私どもは、グループ会社の経営も含めてたくさんの店舗がありますので、なんとか増やしていっております。難しいとはいえ、既存の店舗を活用できるのは、私たちの強みですね、いずれはスーパーの店舗内だけでなく、店舗の近くの路面でも展開できるといいなと思っています。

 

――人材での苦労はありますか?

 

他の事業者さんと同じくそこは苦労しています。こういったスタイルですから、介護スタッフはもちろん、理学療法士や看護師などの専門職がどうしても必要です。でもこれがなかなか厳しいです。資格を持っている人を探すのも大変ですし、こういった介護の分野では小売り以上に人との接し方も重要になりますから。理学療法士の声のかけかた一つで、お客さまのモチベーションが変わってしまう。

 

いい人材を採用する、いい人材に育てるということが本当に課題です。そのためにはイオンスマイルを多くの方に知ってもらう必要もありますね。

 

――採用条件でも工夫をされたりしたのでしょうか?

 

そうですね。私どもの小売業では、転勤、異動は当たり前ですが、理学療法士や看護師の方はそういった働き方でない場合が多いんですよね。そのことに気づき、転居のない正社員をと会社にお願いしましたが、それも最初はなかなか通らなかった。特例をつくるようなことは大変です。「契約社員でなら」とも言われましたが、正社員でないとなかなかいい人は来てくれないので、説得を続けて、事業存続のためにもと転居なしの正社員を認めてもらいました。

 

イオンならでのノウハウも活かして

――もともと小売業であったことの利点などは?

 

そうですね、小売りと介護とはまったく違う分野ではありますが、現場教育の仕方などは長年培ってきたことを活かせています。それから介護技術以外の、人対人のあり方は、小売りの接客と親和性があると思います。スーパーの常連客のお顔、名前を覚えること、デイサービスに来るお客さまのお顔、お名前を覚える事は、両方とも大切なことです。こうして来ていただけるから、私たちはやっていけるという考え方は大事にしていきたいと思っています。

 

それから、現場の声は本当にどちらも大事ですね。お客さまと話して気づかされることが本当に多い。「こうした方がいいんじゃないの?」と教えていただいたりもしますしね。ですので、今でも月一回はウエアを持って現場に行くようにしています。

 

――何か具体的にお客さまの言葉から行われるようになったこともありますか?

 

今、みなさんの関心事は「認知症」なんです。もともと、いつまでも元気で家族に迷惑をかけないようにと、トレーニングに来ている方たちだからかもしれませんが、「認知症」が話題にあがる事が多くて、何かできる事はないかと、株式会社ルネサンスさんの脳を活性化するプログラム「シナプソロジー」のトレーニングを取り入れました。筋力ほど目に見えて効果がわかるものではありませんが、エビデンスがしっかりしていますので、全事業所で行っています。

トレーニングなら「イオンスマイル」と言ってもらえるように

――葛西でオープしてから2年半になりますが、手応えなど感じていらっしゃることは?

 

全員が元気になって退会して欲しいと思っていましたが、そう簡単にはいかないですね。でも、やってきたことは間違っていなかったと感じています。送迎の時、ご家族の方に「主人がスムーズに立ち上がれるようになったの」「最近、お母さん転ばなくなったわ」などと言ってもらえることがあり、そういったときは本当に嬉しいですね。短時間機能訓練特化型にしてよかったと思います。

 

全員が良くなっているわけではなく、残念ながら、体調が悪くなったなり、介護度が上がってしまってやめられる方もいますが、要介護度4の方が2になったケースもあります。入院で体力が落ち、最初は車椅子で来た方が、トレーニングをされた結果、車椅子を押す方になるまで回復されたりと、元気になられている方も確実にいらっしゃいます。

 

――ケアマネジャーからの評価も上がっているようですね。

 

最初は、介護の経験がないのにと、あまりいい印象を持たれていなかったのですが、イオンスマイルで元気になった方も出て、今ではケアマネジャーに「トレーニングならイオンスマイルはどうですか?」と勧めてもらえるまでになりました。

 

要介護度が重度の方にサービスができないのが残念ですが、中程度、軽度の方へのサービスとして地域の方に受け入れてもらえたと感じています。

 

――今後の展開などはどうお考えですか?

 

まず、私たちの店舗というのは、お客さまにご支援をいただいて営業活動をさせていただきますので、いかに地域のみなさんと手を取り合い、一緒に生活していく、お互いにメリットになることができるということが大事だと考えています。

 

企業として、イオンスマイルは地域コミュニティのために大切なものと考えておりますので、お客さまの満足度を優先しながら育てていきたいですね。あそこに行ったら転びにくくなった、立ち上がりが早くなったとか、そういうところでご満足いただけるサービスの提供ができたらと考えています。

 

当面は関東圏で足場を固めて、事業所を増やしていきたいと思っております。

 

<事業所プロフィール>

イオンスマイル

2013年9月に江戸川区のイオン葛西店にオープンした『イオンスマイル』。イオンリテール株式会社が運営。現在、4箇所で展開。スーパー内のリハビリ特化型のデイサービスとして注目を集めている。

イオンスマイル木更津朝日店

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