「介護しながら仕事続けてる!」今こそ声を上げよう……ー1


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女性も高齢者も輝ける「一億総活躍社会を目指す」と国は高らかに掲げていますが、振り返ると私の周囲にいる女性達は働きながら生き抜いてきた人ばかり。母もパートをしながら3人の子供を育てましたし、祖父を事故で亡くした母方の祖母は、60歳を過ぎても働き続けていました。また父方の祖父も早世したため看護師だった祖母が女手一つで父兄弟を育てあげました。私自身も介護と仕事を両立し、妹は母と同じく3人の子育てをしながら正社員として働いています。我が家の家系に“専業主婦”の文字はなく女性が社会に出て働くことは当然のことだと思っていました。ただ現実に目を向けると仕事と育児や介護の両立は簡単ではありません。今回は「介護離職」について考えてみたいと思います。

まさに“絵に描いた餅”だらけ……

欧米では1970年代以降から使われはじめた「ワーク・ライフ・バランス」という言葉。日本でも遅ればせながら2007年に「ワーク・ライフ・バランス憲章」が策定され、この時に具体的な数値目標がいくつも挙げられたのをご存じでしょうか。その一つに2020年までに“男性の育児休業取得率13%”にという目標がありましたが実際はどうなっているのか……2014年度に育児休暇を取った男性はわずか2.3%!? まだ4年ありますが、誰の目から見ても実現不可能なことは明らかであり、まさに絵に描いた餅とはこのことです。

 

2%弱しかない男性の育児休業取得率、さらに取得日数は数日から数週間。“なんちゃって育休”と言われても仕方がありません。単なるパフォーマンスに終わってしまったのがあまりにもお粗末すぎますが……男性国会議員が育児休暇をとることが話題になりました。男性が育児休暇をとると宣言するだけでニュースになるこの国の未熟さに呆れているのは私だけではないはずです。

 

20年以上、放置された待機児童問題

「匿名である以上、実際本当に起こっているか確認しようがない」保育園に落ちたお母さんの切実な訴えに対する安倍総理の答えに耳を疑いました。匿名のブログだから書かれていることが本当なのか分からないということだったのだと思いますので、この発言の揚げ足を取るつもりはありません。ただ、忘れてはならないのは待機児童の問題は共働きの家庭が増え始めた1990年代後半からこの国が抱える大きな問題だということです。この匿名のブログを受け自民党が緊急対策をまとめましたが、情けないと感じたのはこうしたまさに“声なき声”が上がらなければ緊急対策をとれないということに対してです。

 

20年以上も状況が改善されないのは、この問題を放置してきたに等しく国の責任は重いと思います。簡単に何十万人分増やしますと口にし、大風呂敷を広げる政治家に騙されてはいけません。消費増税が先送りされましたが、日本の社会保障はこれからますます深刻な状況になることは間違いありません。必要な人に必要なサービスを届けるために、時の政権が掲げた目標を実行し、きちんと結果を出せているかどうかを厳しく評価していくのは私たちの重要な役目なのです。

 

「介護で仕事辞めた日本死ね!」10万人の声が聴こえる……

絵に描いた餅で終わらせてはならないのは待機児童の問題だけでなく、介護離職の問題も同じです。その数は年間10万人を超えていますが、実は2007年から2008年の段階で介護を理由に退職した人はすでに約9万人にのぼっています。2007年以前も介護離職がゼロのわけはなく、この問題も10年以上放置されてきました。

 

フリーになり母の介護の本(「十年介護」小学館文庫)を出版したことで“男女共同参画事業”の一環で介護の講演を依頼されることがあります。男女共同参画社会基本法が施行されたのは今から17年も前。男女共同参画事業とは女性の社会進出や経済的自立などを支援することですが、6月23日から29日までは「男女共同参画週間」とされ、2001年には内閣府に特命担当大臣まで設置されています。政府だけではなく自治体にも関連部署や各地に関連団体が存在し、しかも各省庁にまたがる予算は毎年数兆円に上るということを知っている人はどれぐらいいるでしょうか。

 

それだけの予算をかけているにもかかわらず、スイスの世界経済フォーラムが発表した2015年版の「男女格差報告」では日本は世界145か国中101位で先進国の中でなんと最下位……。ちなみに10年前の2006年は世界115か国中79位でしたので、事態は後退していると言ってもいい状況なのです。

 

15年以上かけて男女共同参加事業に使われた巨額な予算は何に使われ何処に消えてしまったのでしょうか? “声なき声”を上げられずに介護離職した人達の声が聴こえてきます。「介護で仕事辞めた日本死ね!」という10万人の悲鳴が……。

 

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