入院医療とこれからの介護ビジョン 2016年度診療報酬改定を読む(1)


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2016年4月に、医療保険で提供される治療費や薬代などの診療報酬の改定が行われました。2016年度の診療報酬改定は、そのための布石ともいえる内容です。2回にわたって今改定のポイントを紹介しつつ、高齢者医療の今後や、介護保険サービスへの影響などを考えていきます。

これからの医療ビジョンと2016年度改定

団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向け、新たな医療の仕組みが模索されています。その中核とされているのが、療養の場の主体を、医療機関から自宅や居住系施設などにシフトさせ、地域で医療や介護、予防、住まい、生活支援を包括的に提供する体制――地域包括ケアシステムの構築です。医療においては、高齢者の心身や疾病の特性を踏まえ、治す医療から生活の質を重視した医療への転換をうながすとともに、入院をできるだけ減らし医療費を抑制する狙いがあります。

 

2016年度診療報酬改定では、スムーズな退院に向け早期から介入する退院支援や、受け皿となる在宅医療などの機能が強化されました。それに伴って、病院と地域の医療・介護職の連携もクローズアップされました。

 

病院に関しては、機能分化(役割の明確化と分担)が強化されています。外来医療では、大きな病院では主に専門的な診療を、中小病院や診療所では慢性疾患など日常的な診療をという分担がうながされています。この4月からは、大学病院をはじめとする大病院(特定機能病院、一般病床500床以上の地域医療支援病院)には、紹介状なしで受診した患者から、診療費以外の特別料金として5,000円以上(初診)を徴収することが義務付けられました。入院医療では、人員体制や設備が手厚く高コストの急性期の病床の絞り込みが柱とされました。

 

2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定に加え、第7次医療計画と、第7次介護保険事業(支援)計画のスタートが予定されています。こうした2016年度改定の方向性は、2018年度からの医療・介護の一体的な提供体制づくりの布石といえるでしょう(表1)。

表1:28年度診療報酬改定の基本的考え方(平成28年度診療報酬改定の概要より)

高コストの急性期病床の絞り込み

ここからは改定のポイントを具体的にあげながら、介護現場への影響を考えていきます。今回は入院医療についてです。

 

2016年度改定では、急性期の病床のなかでも一番体制が手厚い病床(7対1一般病棟)の絞り込みが推し進められました。7対1病棟は最も診療報酬が高いため、算定する病院が多く、現在では全病床の中で一番多くを占めています。そこで、ここ数回の改定で、高コストの7対1病棟を算定するためのハードルを上げ、よりコストの低い病床にシフトさせようと取り組んできた経緯があります。

 

今改定では、7対1病棟の入院患者の基準を見直し、より重症な患者を以前よりも1割多く受け入れるよう求められました。重症な患者を一定割合以上確保できない場合は、1ランク低い急性期の病床や、急性期後の治療やリハビリを行う回復期の病床などに変更しなければなりません。こうした要件の厳格化は、病床機能のバランスが適正化されるまで続くことが予想されます。

 

そのため、特に病院が多い地域では、今後は重症度で受け入れ患者を選別する動きが強まる可能性があります。一方、中小病院を中心に、急性期の病床を減らす病院も出てくるでしょう。介護施設などでは、日頃から医療機関との関係をつくり、利用者の急変時の受け入れ先を確保しておくこと、そして治療後にできるだけ速やかに受け入れられるように体制を備えることが重要になると考えられます。

 

医療と介護の線引きがなされた療養病棟

慢性期の医療療養病棟でも、今回の改定で患者の受け入れ要件が見直されました。これまでも、体制の手厚い療養病棟(療養病棟入院基本料1)については、「医療の必要度(医療区分)の高い入院患者(医療区分2、3)を80%以上」入院させるという条件が設けられていました。

 

しかし、それ以外の病棟(療養病棟入院基本料2)では、そうした制限はなく、医療必要度の比較的低い患者(医療区分1)を多く入院させている病院も見られました。今回の改定では、残りの療養病棟にも、「医療区分2・3の患者を50%以上」という要件が追加されました。

 

全面的な施行は2018年度からですが、今後は医療療養病棟において、医療区分の高くない患者を受け入れる余地は狭まります。その受け皿となるのは、介護療養病床や介護施設などでしょう。この要件の設定は、医療保険と介護保険の施設の線引きでもあるのです。

 

現在、2018年3月末に廃止予定の介護療養病床に代わって、住まいの機能を強化した新たなタイプの施設が検討されています。現段階の案では、医療機能に応じた複数の施設モデルが示され、最も医療機能の高いモデルでは、容態が急変するリスクがある患者の受け入れ、経管栄養や喀痰吸引等を中心とした日常的・継続的な医学管理、24時間の看取り・ターミナルケアなどの機能が想定されています。

 

こうした流れのなかで、有料老人ホームなどを中心に既存の施設においても、医療機能を強化する施設が増えることも予想されます。

 

連携実績が重視された退院支援

退院支援(退院調整)など出口機能がさらに評価されたのも、今改定で注目すべき点です。ケアマネジャーへの情報提供を評価した「介護支援連携指導料」なども引き上げられました。算定要件はそのままなので、連携のすそ野をより多くの病院に広げるためのインセンティブといえるでしょう。

 

退院困難な要因を持つ人を早期に見つけ介入する、病院の退院支援体制の評価も再編されました(退院支援加算)。退院までの期間が短いほど報酬が高くなる従来の仕組みから、人員配置や、地域の医療・介護職との連携を重視した仕組みに改められたのが特徴です。高い報酬が設定された「退院支援加算1」では、より早期から退院支援を始めることや、病棟にも退院支援業務専門の職員を置くこと、そして地域の医療・介護職との連携での一定の実績などが求められています(表2)。

表2:退院支援加算1、2の算定要件など(平成28年度診療報酬改定の概要より)
※多職種によるカンファレンスは、病棟看護師や退院支援部門の職員など医療機関内の関係職種で行うもの

連携の実績の具体的な要件は、(1)地域の医療・介護関係機関20ヵ所以上と連携し、各機関の職員と年3回以上「面会」すること、(2)介護支援連携指導料が、一般病棟などの場合は病床100床当たり年間15回以上(療養病棟等では10回以上)算定されていることです。

 

(1)については、会合や研修などでの顔合わせは対象外ですが、退院前の打ち合わせなどは「面会」として認められます。

そのため、ケアマネジャーのみならず、介護職などを交えた退院前カンファレンスなどが増えることも予想されます。加算1の要件はハードルが高いため、算定を目指す病院は限られると思いますが、病院とのパイプを強化したい介護施設や事業所にとっては、良い機会になるはずです。

 

退院後の訪問で在宅・施設支援も

出口機能でもう1つ着目したいのが、医療ニーズの高い患者の退院直後を支援する機能の新設です。入院していた病院の看護師などが、退院後1カ月以内に自宅を訪問して在宅での療養内容を指導することが新たに評価されたのです(退院後訪問指導料)。対象となるのは、認知症高齢者や末期がん、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーで緩和ケアなどを受ける人、在宅で中心静脈栄養を受ける人などです(表3)。

表3:退院後訪問指導料の点数と算定要件、別表(平成28年度診療報酬改定の概要より)

老人保健施設は対象外ですが、特別養護老人ホームや居住系施設などでは利用できます。経験の少ない疾患や医療処置への対応が必要なケース、また終末期で時間が限られているケースなどで、療養体制づくりや施設の看護師などへの引き継ぎなどに役立つことが期待されます。

 

地域包括ケアや医療機能分化の推進で、医療ニーズを持った要介護者が増加するなかで、介護職と医療機関との協働がこれまで以上に求められることになります。医療職とうまく連携するためには、職員任せにするのではなく、事業所や施設として連携の課題を洗い出し、医療用語に関する研修や情報共有のための書式の作成、事業所・施設内の情報伝達ルートの整備など、組織としての取り組みを講じることも大切です。

 

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