死を正面から見据える「看取りの医療」とは? 人生の最期の時を悔いなく生きるためにー2


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かつての「敗北の医療」から時代は変わり、「死」を正面から見据え、最期の時まで生きるための「看取りの医療」が行われるようになってきました。この看取りの医療について、前回に続いてお話ししたいと思います。

悔いなく生きるための「支え見守る医療」へ

「在宅で医師の出来ることはわずかしかない」このことを全ての医師が認めなければなりません。未だに医療で助けられないということを“敗北”と考える医師がいるとしたら、それは間違っていると指摘したいです。例え病気は治らなかったとしても、本人や家族にとって最期のその時まで敗北はありません。

 

これまで取材で出逢った患者さん達の願いは本当にささやかでした。「もう一度桜が見たい」「娘の結婚式に出たい」「仕事を最後まで続けたい」。病気を治すことを目的とする病院では病状を悪化させたり、命を縮めてしまうリスクがある選択肢はどうしても避けざるを得ません。

 

ですが、病気を治すことを前提としない在宅では本人が最期まで“悔いなく生きる”ための選択をすることが出来るのです。そのために必要なのが「支え見守る医療」です。スタッフに求められるのは、病気に向き合うことではなく、ひとりの人間が歩んできた人生に向き合うこと。本人や家族が“納得して”選択できるように支え見守って欲しいと思います。

※訪問入浴のサービスを利用する母。とても良い笑顔でした。

以前にも指摘したように在宅医療で必要なのは高度な医療ではなく“高度なケア”です。医師に出来ることがなくとも、体力を維持するための栄養管理や最期まで自分の口から食べるための口腔ケアなど看護師や生活を支える介護職、そして家族に出来ることが、実は在宅には沢山あります。ただそばにいることも家族に出来ることの大切な役割です。

 

運命を受け入れた母が私達に語りかけたこと……

終末期を迎え変わりゆく母の姿をそばで見守ることは身を引きちぎられるほど辛く、“ありのまま”を受け入れることは簡単ではありませんでした。自力ではトイレに行くことが出来ず、栄養補給のための点滴、尿カテーテルそして人工肛門を装着していた母。どれも必要な処置でしたが第三者から見たら「こんな状態で生きていて意味があるのか」と思われる状態でした。

 

それでも母は常に笑顔を絶やさず「感謝だわ」という言葉を口にして、毎日来てくれる訪問看護師さんに飴やガムを渡していました。何重の苦しみを抱えながらも、拙い言葉で看護師さんに母なりの“ありがとう”を伝えていたのです。

 

母が最期まで母らしくいられたのは我が家だったからかもしれません。母亡き後に出逢った在宅医療に尽力している先生が、母のような状態を「ただそこに在るだけでいい尊さ」と表現してくれました。そして「何のために生かされているのか」を問うのではなく「私達に何を語りかけているのか」を問うべきではないかとも。

※私達が前向きでいられたのは母のこの笑顔のおかげ。

障害者になった時も末期がんと分かった時も、無言のうちにただ静かに自分の運命を受け入れていた母が我が家で一番強かった……。沢山のことを教えてくれましたが、最後の最後に母が語りかけていたのは“命は限りがあるからこそ輝く”ということでした。

 

看取りで大切なのは「場所」ではなく「人」

父、私、妹、叔母が見守る中で母は息を引き取りました。覚悟した通り家族だけで迎えた“その瞬間”母は父の方を見て微笑んでくれました。身体は不自由でしたが心は自由だったと思わせてくれる笑顔でした。終わりを告げた「覚悟」と「決断」の日々……。言うまでもなく信頼できる医師と訪問看護師の存在があったから実現できたことでした。

 

終末期医療や在宅医療の現場で「尊厳」という言葉が頻繁に使われていますが、尊厳は決して死を形容するものではなく、息を引き取る瞬間だけに立ち会うことが看取りではありません。何故なら命の限りが分かった時から看取りはすでに始まっているからです。

 

死後の処置をするために駆けつけてくれた訪問看護師さん達が玄関先で号泣してくれました。仕事でいなかった弟もまだ母の身体に温もりがあるうちに帰ってくることが出来ました。しかもその手には大きな花束を抱えて……。

 

看取りで大切なのは場所ではなく、適切なサポートを途切れることなく受けられるかであり、命と向き合う本人や家族の覚悟と決断を支え見守ってくれる“人”がいるかなのです。

 



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