死を正面から見据える「看取りの医療」とは? 人生の最期の時を悔いなく生きるために-1


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かつて末期がんなどの終末期医療が「敗北の医療」と言われていたことを皆さんはご存じでしょうか? 何十年も前の話ではありません。2000年の中頃まで「もう治療法がない」「なす術がない」という理由で、本当に沢山の患者さんが医師や医療から見放されていたのです。ですが、時代は変わり「死」を正面から見据え、最期の時まで生きるための「看取りの医療」が行われるようになってきました。この看取りの医療について2回にわたってお話ししたいと思います。

患者自らが治療を選択する時代に……

「看取りの医療」のお話をする前に「おまかせの医療」の歴史について触れておきたいと思います。がんの告知やインフォームドコンセントがまだ普及していない時代は、本当の病名を知っているのは家族と医師だけで、本人には病名を隠して治療が行われていました。胃がんを胃潰瘍と偽ることは当たり前、病名を告知しないで治療を進めるということは医師が患者さんに嘘をつくということになります。余命幾ばくもない患者さんに「大丈夫です。必ず治りますから頑張りましょう」と……。

 

長年、がん医療の取材をしてきましたが、実は本音で話が出来ず辛かったと話してくれる先生もいました。本人が病名を知らない以上「先生におまかせする」のは仕方がないことで、治療の選択の責任は全て先生の肩にかかっていたことになります。

 

しかし現在は、がん医療を始め医師と患者は病気に関する情報を共有しながら治療方針を決められるようになりました。告知が進むことで「選択権」が医師から患者の手に移ることになったのです。このように医療の進歩だけではなく患者さん自らが正しい病状を把握し、自分で治療法を決めていくという意識の改革も時代と共に進んできました。

 

“大きな決断”……納得して臨んだ人工肛門の手術

前回のコラムでも書きましたが在宅では家族の「決断」が求められます。しかも、全てが命に関わる選択になります。ただ医療の専門家ではない家族は果たして自分達の決断が正しいのかと悩んだり、状況によって気持ちが揺らぎ選択肢が変わる場合もあります。

※まだ元気な頃の母と住み馴れた我が家で

末期の子宮頸がんで闘病している母の治療に関して、一番大きな決断を迫られたのは人工肛門の手術でした。母の身体を蝕むがんが腸を巻き込むように大きくなっていたため排便がほとんどできず、寝たきりの状態になっていた母は毎日のようにベッドの上でうなっていました。下剤を飲んでも全く効かず、このままだと腸閉塞を起こして死んでしまう危険性もありました。その時に先生が提示してくれた選択肢が人工肛門だったのです。

 

全身状態は決して万全ではなく、末期がんの身体にメスをいれるのでがんを刺激してしまうということなどあらゆるリスクを聞いた上で、母にもきちんと説明し納得してもらって手術に臨むことを決めました。手術は無事成功し最期の数か月は排便の苦しみから母は解放されることになりました。勇気ある決断をしてくれた先生には今でも感謝しています。

 

「おまかせの医療」は過去のものに……

幸運にも母の手術は成功しましたが、自分達の選択が正しかったのかどうかと悔いを残している家族は少なからずいます。どんなに手を尽くしても後悔は残ります。だからこそ大切なのは“納得して”選択したかどうかなのです。例えばがんの治療法にしても昔に比べて治療法ははるかに増えていますし、生活の中で本人が何を優先するかによっても選択肢は変わってきます。

 

正解が一つではない中で、在宅を選択するのならば「おまかせの医療」という言葉は過去のものにしなければならないと私は考えています。つまり、先生がなんとかしてくれるのではなく、自分達はどうしたいのかという“意思表示”をきちんとすることが在宅では最も重要になってくるということです。

※友人が生まれたばかりの赤ちゃんを連れてお見舞いに……



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