平成26年度 高齢者虐待防止法等の対応状況に関する調査結果について


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今回は平成28年2月5日に厚生労働省老健局高齢者支援課 認知症・虐待防止対策推進室が発表している平成26年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果をもとに、高齢者虐待の実態や対応について取り上げたいと思います。

介護保険施設等における高齢者虐待等に対する指導・監督の徹底と行政処分の厳格化

平成28年3月7日に全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議が行われ、厚生労働省総務課介護保険指導室より各自治体に対して高齢者虐待等に対する指導・監督の徹底と行政処分の厳格化を指示しました。

これは神奈川・川崎市幸区の有料老人ホームに入居する高齢者に対する殺人容疑で当該老人ホームの元職員が逮捕されるなど、養介護施設従事者等による深刻な高齢者虐待等の事案が複数報道されている状況を鑑みてのこととなっております。

 

①通報、苦情等の内容が利用者の生命、身体に関わるものである場合は、事前に通告を行うことなく監査を実施する等、状況に応じた柔軟な対応をお願いする。

 

②実地指導においても、高齢者虐待との関連が疑われる場合などを含め、当該事業所の日常におけるサービスの提供状況を確認する必要がある場合には、監査と同様、事前に通告を行うことなく実地指導を実施することも検討するようお願いする。

 

これを受け、各自治体は今までは原則事前通知をして実地指導に入っていましたが、今後虐待の疑いがありとなった場合は抜き打ちで実施することとなります。

 

増加率35.7% 300件の大台に達した虐待判断件数

昨年の10月13日に掲載されている『平成25年度 高齢者虐待防止法等の対応状況に関する調査結果について』でも養介護施設従事者による虐待は年々増加していることをお伝えしましたが、平成26年度は平成25年度と比べ、相談通報件数は1,120件(前回962件)、虐待判断件数は300件(前回221件)と大幅に増加しております。

ちなみに先の川崎市幸区の事件に関しては当初転落事故として扱われていたため、平成26年度の虐待判断件数には含まれていないとのことです。虐待報道については毎年毎年何かしらの事件が取り上げられておりますが、それでも尚、減少することがなく増え続けています。もちろん、働いている職員さんの意識が高まり以前までは通報もされていなかったものがきちんと通報されるようになったため、件数が増加していると考えることもできますが、やはり増加し続けていることは介護業界全体の大きなマイナス事項と言ってよいと思います。

 

高齢者虐待の通報

高齢者虐待防止法(第7条)では、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者に対し、市町村への通報努力義務が規定されており、特に当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに市町村に通報しなければならない義務が課せられています。

 

さらに(第21条)では介護施設従事者等が、自身が業務に従事している施設や事業において虐待を発見した場合は、虐待の程度にかかわらず市町村への通報義務が課せられています。

平成26年度における相談・通報者の内訳は、相談通報者の合計1,308人に対して、「当該施設職員」が24.0%と最も多く、次いで「家族・親族」が18.9%、「当該施設管理者等」が11.9%、「当該施設元職員」が11.3%となっております。この結果はきちんと高齢者虐待防止法の通報義務を理解し、それをしっかりと遵守している職員さんも多くいるということを示していると思います。勿論、同じ職場で働いている同僚を疑い通報しなければならないということは悲しいお話ではありますが。

 

※1件の事例に対し複数の者から相談・通報があった場合、それぞれの該当項目に重複して計上されるため、合計人数は相談・通報件数1,120件と一致しない。

 

事実確認の状況

平成26年度において「事実確認調査を行った事例」は1,039件、「事実確認調査を行わなかった事例」は132件。

 

相談・通報の受理から事実確認開始までの期間の中央値は、回答のあった985件では6日であり、相談・通報の受理から虐待確認までの期間の中央値は、回答のあった249件では12日となっています。

 

行政担当者も様々な業務を抱えているなかでの対応となりますので、事実確認開始まで中央値6日や虐待確認まで中央値12日というのは努力している内容だとは思いますが、一方で虐待確認までの期間が28日以上となっている件数が80となっている結果をみると各自治体の差が感じられますし、通達なしでの実地指導を厳格化することも頷けます。

虐待の内容

虐待の内容について、被虐待高齢者が特定できなかった13件を除く287件の事例を対象に集計を行い、1件の事例に対し被虐待高齢者が複数の場合があるため、287件の事例に対し被虐待高齢者の総数は691人となっております。その結果、虐待の種別(複数回答)は、「身体的虐待」が63.8%と最も多く、「 心理的虐待」が43.1%、「経済的虐待」が16.9%、「介護等放棄」が8.5%となっております。

 

平成25年度と比較すると経済的虐待が増加しておりますが、これはある1施設において多数の高齢者(79人)の預かり金詐取があったためであり、これを1件とみなし場合は表4の(参考)と書かれている率になります。

以上が、簡単ですが平成25年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果をまとめた内容となっております。

 

最後に先日、コンサル先である有料老人ホームの運営懇談会に参加させて頂きましたが、その際にご家族様から川崎市幸区の事件のようなことがあった場合に施設として責任を取れるのかというお言葉を頂きました。勿論、法人としては職員の雇用責任がありますから、個人が行ったとはいえあのような事件が起こった場合でも責任を取らざるを得ません。

 

しかし、その一方であのような事件を起こす職員に対する対策を行うには、組織の努力だけでは難しい部分もあります。以前も書きましたが例えば虐待を起こしそうな可能性もしくは疑わしい職員がいた場合にどのように組織として対応するか?職員に暴力、暴言を振るう利用者さんがいた場合にどのように組織として対応するのか?どちらも放置すればいずれ虐待が起こるだろうと思われます。現場では新聞やニュースでは取り上げられない暴力、暴言を振るう利用者さんや何もフォローをしてくれない家族さんの問題等もあります。

 

以前は虐待防止には1人1人の職員さんの意識を高めるだけは限界があり、組織として迅速に対応する必要がありますとお伝えしましたが、問題を起こしそうな職員の早期発見のためにはご家族様にも協力いただくようにしなければなりませんし、行政の力も借りながら利用者さんをきちんと守っていかなければいけませんね。

 

 

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