第9回日本の福祉現場力を高める研究大会~KAIGO NO MIRAI未来の社会は「介護現場」から創るvol.1 介護の新たな可能性と問題解決力に焦点

投稿日:2016年3月7日 更新日:

今年で9回目を迎え、年を追うごとに注目度が上がる「日本の福祉現場力を高める研究大会」。いまや福祉業界の代表的なイベントとなっている。
2月19日の日比谷公会堂は、2階まで入場者であふれていた。学生、介護職、識者、経営者と、あらゆる年代・職種が集うこの大会の意義は? その内容は? 3回に分けてレポートする。

「福祉現場力」とは?

「福祉現場で働く若い人たちが、日々の業務の中で感じ、迷い、悩んだことをもとに考え、評価して作り上げていく自分なりの原則や理論、自信を『現場力』と位置づけています。本大会は、この現場力を構築、あるいは発表する場として生まれ、9回目を迎えました」と説明してくれるのは、学校法人滋慶学園東京福祉専門学校事務局長・望月健司さん。

 

実はこの大会、平成元年に開校した、東京福祉専門学校の卒業発表会が始まりだったという。学生が体験学習の中で感じた問題点を、グループでディスカッションしながら解答を出し、福祉現場に役立つ発表をしよう、というのが主旨であった。その発表が福祉の現場と有機的に結びつき、昨今では、注目すべき大きなイベントとなっている。

 

「学生の研究発表会がこのように発展してきた裏には、介護人材不足という社会背景に対して何かできないかという学園の思いがありました。この現状を打破するには、私たちのような介護福祉士養成校だけではなく、『産官学の連携』が必要だと気づき、巻き込んだ形での開催方法に変えてきました」

 

以来、「『産官学協働による若手介護人材の育成』という理念をぶれることなく貫いて開催してきました」と望月さん。これから社会に出る若い人材と、人手不足に悩む介護業界とのよりよい交流をつくり上げてきた大会でもある。

 

介護の可能性・介護の専門性を探る・・が大きなテーマに

毎回のテーマは、これから福祉現場で働くことになる若い学生にとっても、介護現場にとっても、今、語り合うべき最も重要な内容。また、昨今の大会では、学生の発表だけでなく、介護業界のリーダーとなるべき旬なゲストが、大会の会場でパネルディスカッションを展開している。このディスカッションを聴きたいと足を運ぶ介護業界の経営者も多い。

 

2016年のテーマは、大きく分けて2つ。

「これからの介護の可能性を切り拓く」「介護職の専門性を考える」。

介護の未来を築くうえで欠かせない2大テーマを、第1部、第2部に分けて展開。それぞれが、学生の発表+パネルディスカッションという構成で進められた。反響が大きかった2つのパネルディスカッションは、次回、次々回にレポートするが、各部の学生の発表もまた、介護現場に気づきを与えるすばらしい内容であった。かいつまんで紹介しよう。

 

祖母との会話から、地域で生きることを考えた高校生の作文

第1部で発表された高校生作文コンテスト最優秀賞を受賞したのは、北山佳奈さんの、“昔を取り戻す”。実の祖母との会話の中から、「老人ホームではなく、子どもから高齢者まで、みんながふらっと集まれる民家をつくれたらよい」という内容だ。管理者がいて、定期的に医師や看護師が体調管理をする。けれど、いつ来てもいいし、帰ってもいい。そんな「自由であたたかい場所をつくりたい」のがその趣旨だ。地域の介護拠点の創出、多世代交流、在宅シフトの介護と医療のありかたを凝縮した内容で、高校生の発想とは思えない完成度の高い内容であった。

高校生作文コンテスト最優秀賞を受賞した北山佳奈さん

介護の仕事に就くモチベーションの低さを保育士の場合と比較

第2部では、ふたりの専門学校生が発表。どちらも、経営者・管理者層に響く内容だった。

埼玉福祉専門学校の吉見紹裕さんらのグループの研究テーマは、高校生への調査をもとにした「保育士との比較を通じた介護人材確保に関する考察」。給料などの条件は変わらないのに、なぜ高校生にとって、保育士のほうが介護士よりも人気が高いのか、という問題を提起し、分析していく。すると、中学生のときの介護施設での職場体験で、魅力を十分に伝えきれていなかったことが大きな要因だということが考察された。介護施設側も、職場体験に対する準備や応対をきめ細かくし、将来の人材確保に向けてさらに努力する必要があることを示唆する内容であった。

埼玉福祉専門学校吉見紹裕さんらの発表

手指を使って家事を行うことで機能低下を防ぐという研究

東京福祉専門学校の北村友紀さんらの発表では、グループホームの高齢者を対象に、「手指の機能低下が日々の生活動作の不自由さに大きく関係している」と仮設を立て、手指を使うことによって改善を期待するという検証を行った。実際にグループホームの利用者に協力してもらい、家事に参加してもらうことで手指を使い、結果的におおむね握力が向上した結果を伝えてくれた。また、手指の機能の向上だけでなく、生活への意欲や利用者同士の交流など、たくさんの効果が見られたようだ。この検証は、利用者へのケア計画の再考にも直結する内容で、非常に参考になる。

 

以上のように、学生たちの発表は、介護現場の問題解決に大きく役立つことが期待された。

東京福祉専門学校 北村友紀さんらの発表

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