地域包括ケア・・わかりにくさの罪


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地域包括ケア特有のわかりにくさに、市町村はどう対応するのか?

新たなサービスを利用するにあたってはわかりやすさが何よりも必要ではないか。

 

さしあたっての高齢化のピークとなる2025年に向けて地域包括ケア体制づくりがスタートしたものの、それを見ていると「わかりにくさの罪」を感じる。

ようやく市町村で動き出したが、あちこちで試行錯誤も続く。さしあたって柱である「介護予防・日常生活支援総合事業」についても、市町村での取り組みの差もあり、先進的な市町村でさえ、順調にすすめられているわけではない。

 

その最大の理由として、地域包括ケア特有のわかりにくさがあるのではないか。

 

2000年に始まった介護保険は保険者となった市町村にとって厳しい課題ではあったが、白紙から作り上げられた介護保険のマニュアルがきちんとあり、それをこなせば、なんとか軌道に乗せられた。

それにひきかえ、今回の地域包括ケアは「応用問題」が多すぎる。ガイドラインは示されてはいるが、明確なマニュアルに基づく方程式があるわけではない。多くは市町村の裁量、工夫に委ねられている。埼玉県和光市のように介護保険スタート時から綿密なニーズ調査を積み上げ、地域の高齢者状況をきちんと把握、それを受けて地域ケア会議を定期的に開催、多職種連携もできている市なら「応用問題」もできるが、そうではない多くの市町村にとっては、「応用問題」が解けるはずがない。

 

その点においての市町村の責任、結果としての市町村格差がでるのはやむを得ないという見方もできようが、国、厚生労働省の責任もある。

 

利用者が望むニーズを見極めたサービスの展開が、事業者には問われる

2014年夏の国会で成立した「医療介護総合確保推進法」は、2015年度からの介護保険改正による地域包括ケア体制づくりにあたって、その名のとおり「地域における医療と介護の総合的な確保を推進する」とあるが、市町村にとってこれで、医療と介護の確保に見通しが立ったといえるのだろうか。

 

新たな基金の創設と医療と介護の連携強化などが柱で、それによる基盤づくり、条件整備は進められるが、例えば在宅ケアを広げる条件ともなる在宅医療について、依然として、在宅医療に踏み切ろうとしない診療所医師、消極的な医師会はある。それに対する法的な規制を強化するわけでもない。慢性的な介護人材不足の解消を大きく前進させられるわけでもない。

在宅医療や介護人材の確保にあたっては、市町村や介護事業所が動きやすい、より踏み込んだ法的な規制が必要と思われる。

 

今回の改正の柱である新たな地域支援事業「介護予防・日常生活支援総合事業」もわかりにくい。東京都東村山市(人口15万人)が2016年度からの同事業開始にあたって、昨年末から今年初めにかけて開いた事業所向けの説明会には、300を超える事業者が市内や近隣から押しかけたという。

要支援1と2の訪問介護、通所介護が同事業に移行することにより、市町村の報酬設定やB型、C型の制度設計がどうなるのかに関心が集中しているためである。

 

介護事業者にとってはデイサービスをはじめとした2.27%のマイナス改定とはなった2015年度介護報酬の改定以来、経営にとって厳しい時代を迎えることとなったが、目先の制度改革や介護報酬にとらわれるだけでなく、利用者が望むニーズを見極めたサービスをどう展開していくのか。それがますますそれぞれの事業者に問われるようになってきた。

 

事業者はわかりやすさの実践で、経営の改善化に努めたい

東京立川市や国分寺市などで、訪問介護、グループホーム、個室ユニット型の特別養護老人ホーム、小規模多機能住宅など幅広く在宅ケアを展開している「NPOケアセンターやわらぎ」「社会福祉法人にんじんの会」での「研究発表会」が、今年1月でもう9回目を迎える。私も審査委員の一人として出席した。その中で最も印象に残ったのが、「やわらぎ立川デイサービスホーム」のスタッフによる「私の居場所を作ってくれてありがとう」だった。

 

同デイサービスは、昨年中ごろから利用者が徐々に減少し始めた。このままでは経営が成り立たなくなることに危機感を持ったスタッフが、さまざまな見直しを検討、その柱に「デイサービスの場で利用者の得意なものを発表してもらう」個別のメニューを目玉にした。いろんな人生経験を持つ利用者には、それぞれ得意技がある。それを聞き取り、得意技を披露してもらう。フラワーデザイン、カラオケ、フラダンス、民謡・・・元喫茶店経営者の利用者には手作りの菓子やコーヒー、紅茶づくりをそれぞれ披露してもらう取り組みを続けた。

 

その結果、この個別援助メニューの取り組み前は利用者総数8人で利用者ゼロの日もあったのが、以後は、利用者総数22人、一日の平均利用者が6人~8人まで増えたという。

認知症には有効とされる「回想法」を応用したもので、とくに目新しい取り組みとはいえまいが、何よりわかりやすい。それが利用者にも受けたのだろう。スタッフの工夫や努力が高齢者の状態の改善、経営の改善につながる一つの事例だろう。

 

地域包括ケアにみられるように、行政の言葉、やり方はわかりにくい。事業者は「わかりやすさ」の実践でそれを乗り越えていってもらいたい。

 

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