実務的解説!ご利用者の要介護申請とマイナンバー


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1 ご利用者が健常の場合

認知症でなく、自分で筆記もできる介護度の低い方の場合です。

(1)事前準備

申請書式を渡し、「今度からマイナンバーを記入することになりましたので、ここに記載をお願いします」と言い書き込んで頂きます。そのやり取りは、電話や郵送ではなく、極力直接会って書き込んで頂くのが良いでしょう。

 

「あなた(ケアマネのこと)に私のマイナンバーを見られてはいけないの?」と質問されたら、「そのようなことはありません。見ても大丈夫です。」と答えてください。これは介護保険という、マイナンバー制度の想定する本来の目的の範囲内での手続の一環であるため、ケアマネ他、事業者が見ても問題はないのです。

もっとも、記載された用紙をコピーしたり、写真に撮ってナンバーが分かる状態で保管することはNGです。後述のとおり、コピーを保存する場合はマスキング処理をしましょう。

 

ご利用者の身体に麻痺があるなどの理由で書き込むことができない場合は、ケアマネが代わりに記入することも可能です。その際は代理人として行うものであるため、無理に筆跡を似せよう等と配慮する必要はありません。

 

記入が終わったら、念の為通知カードの番号と比較して正しいことを確認しましょう。

 

(2)申請段階

①自分の身分証明(居宅介護支援専門員証)と②通知カードの写しを持って役所の窓口へ行きます。

「えっ、委任状は要らないの?」という声が聞こえてきそうです。実はその通りで、厳密にいえば厚労省通知(506号)ではご利用者からの「委任状」も提出することとされており、前回コラムでもそのように解説しました。もっとも現実的には、いちいちご利用者から委任状を貰うとなると大変面倒ですね。これまで要介護関連業務についてはそのようなことをせず、当然の如くケアマネが書式の記入・提出代行をしてきたわけですから。何事も、四角四面に捉えて言われるまま実行すればいいというものではありません。

 

そもそも法律では、委任(代理)は口頭でも成立するものであり、委任状はその事実を立証するためのものでしかありません。

だからこそ今までは、何も無くても役所も受け付けてくれていたのです。

そうであれば、マイナンバー制度が始まったからといって突如委任状の提出を求めるというのも不自然でありナンセンスです。現実に、健常者であり委任能力はあるが、手が動かせずサインできない方も大勢いるでしょう。

従って筆者(外岡)としては、実務上はまず上記の①身分証と②通知カードの写し(原本でも構いませんが、紛失リスクが怖いのでコピーを取りましょう。もちろん手続が完了したらシュレッダー処分します)を取り合えず持参してみて、「役所側の反応をみる」のが良いかと思います。

 

委任状を忘れたからといって怒られることは無いでしょうし、実務ではそこまで厳密に求められない可能性も高いといえるでしょう。「必要です」と言われたら、そのとき対応すれば十分と考えます。なお、委任状が必要かどうかを事前に電話で問い合わせるか、直接シレッと持ち込んでしまうかのご判断は読者の皆様にお任せします。

 

もし委任状が必要となった場合は、まず本文として「私は、要介護度更新認定の申請手続および右手続に必要な範囲で私の個人番号の記載等の業務の代行を下記の者に委任します。」等とシンプルに書き(該当する手続は多岐にわたるため、その都度文言を変えて作成するのは面倒なので、下線部分を例えば「介護保険法施工規則に基づく申請業務」(厚労省通知中の表現)などと一括りに記載してよいか、と役所に尋ねると良いでしょう)、その下にケアマネの事業所名と氏名を書き、日付と署名(あるいは記名)押印を貰います。これを併せて提出すれば文句は出ません。

 

(3)終了後

ご利用者のマイナンバーを事業所の方で保管することはできないため、申請書等をコピーして保管する場合は、マイナンバーの記載欄につき黒塗りする等のマスキング処理をすることとされています。実務上は、やはり修正液ではなく濃い黒マジックで何度か塗りつぶすのが良いでしょう。光に透かして読み取れない様、念のため裏側にも塗っておきます。

 

厚労省はこの様なマスキング処置をとるよう明確に指示しており、この点を曲げることは流石にできません。

 

しかし実際にやってみると、例えば更新については結局また来年マイナンバーを聞き出さなければならない…ということになり非常に煩雑です。特に大所帯となる施設などでは「いちいち聞き出すのも面倒だし、ばれなければいいなじゃない」と思い、つい従業員のナンバー同様、ご利用者のそれも集めてリストアップしてしまうかもしれません。

ですがそれは、施設は「ご利用者との関係」では個人番号関係事務実施者に該当しないため本来許されないことなのです。法的に認められないだけでなく、もしマイナンバーがまとめて紛失ないし盗まれる様なことがあれば、取返しのつかないことになりかねず、責任重大です。

 

マイナンバーを扱うときは、常に紛失・漏えいリスクを考慮し慎重に行動するように心がけましょう。

 

2 ご利用者が認知症で後見人がおらず、家族だけの場合

同居の有無を問わず、ご利用者に家族しかいないという典型的なケースを取り上げます

 

そもそもこの場合でも、マイナンバーを記入すべかという問題があります。理屈上は、実の親子であっても成人すれば「他人同士」であり、後見人に就任しない限り法定代理権もないため、家族が勝手に記入することはできないこととなります。従ってもっとも無難で実務的な対応は、空欄のまま提出するということになるでしょう。

 

もっとも役所によっては、「ケアマネのあなたが窓口に持ってきたということは、ご本人は健常であり要介護申請業務をあなたに委任したということだろう。だったら健常なのだから、マイナンバーの記入も委任できるはずだ。」等と屁理屈をこねるところもあるかもしれません(筆者の現時点で把握している範囲で、一件だけそのような事例がありました)。

「それを言っちゃお終いよ」の世界であり、そのような実務上の慣行(本人が認知症であってもなくても、当然の如く事業所が要介護関連業務を代行してきた)を滞らせないために、「個人番号が不明あるいは認知症等により分からない場合は、申請等書式の番号欄を空欄のまま提出しても受理される。」と改めて明言したのが先の厚労省通知の主眼だったはずです。

 

万が一役所がその様なことを言い受理を拒む場合は、「厚労省はこう言っているではないか」と説明し理解を求めるべきでしょう。それでも埒が開かない場合は、筆者の運営する「法律事務所おかげさま」(http://okagesama.jp/)までご相談ください。

 

さて、一方で家族がマイナンバーを本人の代わりに書き込んでしまい、その状態で渡されるということもあり得るところです。その場合はやむを得ず、せっかく書いてくれたのでそのまま持参提出すれば良いでしょう。

ただその際、突き詰めると「誰の代理人として行動しているのか」が、実は成り立たないことになります(本人が認知症であるため)。結局は「家族の依頼を受け事務管理として実施している」という説明方法になるかと思いますが、その様な理由で「委任状」を持参することも難しい、ということになります。

 

したがって本ケースでも、ご利用者が健常な場合同様、身分証とマイナンバーを確認できる書面を携えて窓口に行くのが良いかと思います。

 

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