一人暮らしの認知症高齢者をどう支えるのか―――医療同意に見る難しさ


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ケアマネや訪問看護師が医療同意のサインを求められる例が後を絶えない

ケアマネの方や訪問看護ステーションの看護師の方々に聞きたい。利用者に代わって、病院や医師から治療を決める同意を求められたことがあるだろうか。いわゆる医療同意の問題である。

こんなケースは今、全国のあちこちで起きているのではないか。

 

先日、東京都東村山市の「医療・介護連携推進委員会」で、地域包括支援センターのケアマネ(相談員)や訪問看護ステーションの看護師から、最近自らが経験した事例として報告されたのを聞いて、そう感じた。

同委員会は私が会長を務める東村山市地域包括ケア推進協議会の分科会として、医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護師、地域包括支援センター、介護事業所のケアマネらをメンバーに医療と介護の連携を進めようとして、昨年7月発足、昨年末で3回目を迎え、徐々に本音の議論が進んできた。

その一つとして「医療同意」の問題が取り上げられた。

 

二つのケースは、いずれも身寄りがなく、在宅で一人暮らし、認知症で自らの意思決定ができない。そういった高齢者が入院した場合、担当する専門職が付き添った際に、手術するかどうかの意思決定を、医師や看護師から取り囲まれるようにして迫られ、やむなく医療同意書にサインしたという。

 

本人の生き方、終末期の迎え方を左右するにも関わらず法的整備が遅れている現実

本人に同意能力がない場合、誰が本人に代わって同意することができるのか。その法律的な根拠が明確にされないまま、きわめてあいまいな形で、こうした医療同意が進められているとすれば、法律的な問題だけでなく、倫理的にも、さらに人権上もきわめて重大な問題を引き起こしかねない。

例えば、身寄りのない認知症で寝たきりの高齢者が特別養護老人ホームに入居、嚥下障害で経口からの食事がとれなくなった場合、胃ろうをつけるべきかどうか。医療同意を得られる家族がいない場合、特別養護老人ホームで胃ろうをつけることを判断した場合、何年も延命することはできようが、寝たきりで食事を味わえず生き続けることを本人が望むだろうか。

 

医療同意は本人の生き方、終末期の迎え方を左右する。

その重大性に着目した日本弁護士連合会は、すでに10年前の2005年にこの問題についての提言をしたのに続き、2011年には「医療同意能力がない者の医療同意代行に関する法律大綱」をまとめた。

判断能力のない人たちのために成年後見法が制定され、徐々に広がりつつあるが、医療同意まで成年後見人は認められていないのが現状である。

 

「大綱」は詳細に法律上の問題を検討したうえで、判断能力を喪失した人たちが医療を受けられるようにするため,成年後見人に対し、医療行為の同意代行権を付与すべきであること,そのため第三者の医療同意に関する法の整備を進めようというのが「大綱」の柱である。

妥当な方向であろうが、現実は法的な整備が進む前に、深刻な「医療同意」の問題を引き起こしていることである。

 

一人暮らしの認知症高齢者を支えるためのしくみと体制づくりこそが地域包括ケアの喫緊の課題に

75歳以上の後期高齢者が増えるなかで、認知症の一人暮らしの高齢者も増え続ける。

東京都国立市が、同一敷地内や市内周辺に家族がいない、認知症を抱え在宅での一人暮らしを続ける高齢者を調べたところ2013年1月時点で56人いた。同市は7万5000人の人口で、高齢化率が23%と全国平均を下回るが、その市でさえもこれだけの一人暮らしの認知症高齢者がいる。

安心して暮らせる地域包括ケアを築くためには、こうした一人暮らしの認知症の高齢者も支えていける仕組みと体制を作り上げねばならない。

 

嚥下障害となった場合、胃ろうに頼るのか。ガンや骨折などで手術の必要が出たとき、誰が判断するのか。終末期の延命治療はするべきか。

こうした判断に迫られても病院や医師が判断できないし、すべきでもない。その結果として逆のケースが起きている。三重県桑名市では、医療や介護についての意思決定をできる身寄りがない場合、サービス提供を拒否するケースが相次いだという事態も起き、対応に苦慮し、県に対し早急に対応策を取るよう申し入れたという。どの自治体でも、同様の問題を抱えている。

 

本人だけでなく意思決定できる身寄りがいない場合、医療や介護サービスの提供が拒否されることがあってはならない。ケアマネやヘルパー、訪問看護師に無理やり同意書を書かせるような事態を繰り返してはならない。国が、厚生労働省が早急にガイドラインをまとめるべきだろう。

 



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