地域包括ケア時代に、医療と介護は何を求められるか?―3.「持続可能性」

投稿日:2016年1月12日 更新日:

在宅医療をけん引する悠翔会の理事長であり医師の佐々木淳さんが主催する在宅医療カレッジ。医療や介護など、多職種がともに学び、よりよい在宅医療を目指す定期研修会だ。その特別企画として12月10日に開催されたディスカッションが刺激的だ。10人の個性豊かな専門職が、3つのテーマについて、歯に衣着せぬコメントを放つ。特に3つめの「持続可能性」については、管理者、経営者の関心が高いのではないだろうか。今後の経営にも大いに役立つ意見のエッセンスを紹介しよう。
在宅医療カレッジとは?

よりよい在宅医療、地域連携を実現するため、在宅医療に関わる多職種がともに学び、知識や交流を高めていく定期研修会。医療法人社団悠翔会が企画・運営。

 

今回のパネリスト(50音順)

●浅川 澄一 ジャーナリスト(元日本経済新聞編集委員)

●加藤 忠相 株式会社あおいけあ代表取締役・慶應義塾大学客員講師

●亀山 大介 厚生労働省医政局地域医療計画課 救急医療対策専門官/医師

●川島  実 前本吉病院院長/医師

●木村 弥生 衆議院議員(前日本看護協会 政策秘書室長)

●小早川 仁 学研ココファンホールディングス代表取締役社長

●下河原忠道 株式会社シルバーウッド代表取締役社長

●西村 周三 医療経済研究機構所長(前国立社会保障・人口問題研究所所長)

●平井みどり 神戸大学医学部教授・神戸大学医学部附属病院薬剤部長

●野島あけみ 楓の風グループ副代表/保健師

 

モデレータ●佐々木 淳(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長/医師)

カレッジ学長●町亞聖(フリーアナウンサー)

 

西村 今の医療と介護は、このままでいくと10年先にはパニックが来る。財務省はもっと危機感を感じているようだ。破たんを避けるには、「患者や利用者の自立を、専門職がどう仕掛けていくのか」がカギになる。

 

亀山 救急外来には、自宅や施設からの高齢者がほとんど。金曜日の夕方は列を作って待っている。現場の人間は、今の救急医療でこの状況を受け止めるのは無理と感じている。東京の八王子市では、医師会や消防、役所と連携し、できるだけ急性期病院で受診しないよう、さまざまな工夫をしている。救急車ではなく、医師会が用意した病院の車が迎えに行くなど、今後、他の自治体も新しい取り組みが必要になってくる。

亀山大介さん(厚生労働省医政局地域医療計画課 救急医療対策専門官/医師)

 

「まずは病院で死なないこと」が地域包括ケア構築のポイント

浅川 日本は8割近くが病院で亡くなっている。オランダは3割をきっている。国際的にみても非常に多い。まずは病院で死なないことを目標にすべき。

また、現状では、地域包括ケアシステムに医療は入りにくい。高齢者はちょっとした風邪とかでも専門病院や基幹病院に行ってしまう。こんなふうに医療が野放しになっている状況のなかで、地域包括ケアが構築できるか疑問。かかりつけ医、家庭医のシステムが医療として地域包括ケアに組み込まれていないのが大きな問題だし、この点を克服すべきである。家庭医、かかりつけ医の存在が機能していれば、90%ぐらいの問題は解決するはず。だが、いまはすぐに大学病院に行けてしまう。

三角点の頂点に医師がいて、下に介護職で真ん中の看護職が右往左往しているのでは、うまくいかない。

また、そのためには、訪問診療、訪問看護を中心とし、小規模多機能型居宅介護を利用するのがよい。また、拠点型のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)と分散型サ高住が協力と連携をし合えば、特養でなくても終末期に対応できるのでは?

 

佐々木 西村さんは「主体性が大事」と語る。亀山さんは「急性期医療だけでは、高齢者の医療は支えられない」と語る。浅川さんの「サ高住の拠点型と分散型の連携」のアイディアもとてもすばらしい。こうした観点での取り組みの集積が、「ケアの持続可能性」につながっていくのではないか。

国も持続可能な社会保障費のコストについてもっと研究すべき

浅川 安部首相は、「サ高住を推進する」と“三本の矢”にきちっと盛り込んだ。なのに、特養だ老健だと取り上げることに矛盾を感じる。

 

小早川 サ高住を経営していて思うのは、要介護3の入居者が、地域の医療支援と連携することで、介護保険が月10万円ぐらいの使用となること。これが特定施設だと20数万円、特養は25万円程度。住むところによって医療のコストは変わる。持続可能なコストをしっかりと研究していくことが大切だ、と思う。

 

佐々木 私自身、特養で嘱託医をつとめ、今月だけでも3名をお看取りした。在宅ケアにおいては、看護師と介護職とでほぼ管理ができる。だから、同じように特定施設でもサ高住でも看取りはできるはず。在宅医療の中心は看護師で、看護師が中心になってケアしているのがすばらしいことだと感じている。

浅川さんは、「持続可能性」について、経営の視点から語られた。効率とか競争の概念が走りにくいことに着目している。そこで、下河原さんや加藤さんが挑戦的な経営をしている。それをモデルにしてもよいのではないか。

いずれ私たちも、老人になって死んでいく。これらの問題を、自分の問題として考えていく必要がある。課題に対して、客体から主体に変わらないといけない。そのためのモチベーションを保ち、いかにサポートして跳べるようにするかが、我々の課題でもある。

主体はだれか? 医療と介護の連携のテーブルに本人と家族がつくことの重要性

在宅医療カレッジ学長 町亞聖 私自身は、介護保険もない時代に末期がんの母を自宅で介護し、看取った。当時は看護師さんと医者だけと連携していたが、今は本当に多職種の連携が必要で、それは簡単なことではない。医療と介護が同じテーブルにつく、本当の意味で言いたいことが言えるのが、真の連携。家族が医療や介護にお願いばかりしていては、在宅での看取りは増えていかない。浅川さんの言うように、本人と家族の意志を分けるべきで、本人が最後までその人らしくいられるようにするには、家族も覚悟が必要だ。

地域包括ケアはマニュアルではなく、地域をデザインすること。自分たちの住んでいるまちに何が必要かを考えること。だれもが自分自身の問題として、できることから実行していきたい。

 

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