厚労省が示す2020年代初頭に向けた介護人材確保対策の方向性


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総額444億円の財源内容の内訳

一億総括社会のなかで政府として新たに掲げた「介護離職ゼロ」の実現に向けた対策の強化を図るため、平成27年12月18日に発表された平成27年度補正予算において、2020年までに求められる介護サービスを提供するための人材の育成・確保、生産性の向上として総額444億円の財源が確保されました。

 

内容としては下記3点の視点にたって追加的・緊急的な取組を講じた形となっております。

(1)潜在介護人材の呼び戻し

(2) 新規参入促進(若者、中高年齢者)

(3) 離職防止・定着促進

今回の財源の中での目玉としては、「介護福祉士修学資金等貸付事業」として261億円を確保し、離職した介護人材の再就職準備金の貸付制度の新設や、介護福祉士養成施設の学生に対する学費等の貸付制度の拡充を行う形となっております。

 

また、「地域医療介護総合確保基金」については119億円を積み増しし、将来の就労を視野に入れている中高年齢者に対する入門的な研修、職場体験等の実施や、資格取得のための研修受講の際の代替要員確保や、医療的ケア研修の受け皿の整備、介護施設・事業所内保育所の設置の加速化や子育て支援のための代替職員のマッチングにつなげるための仕組みづくり、雇用管理改善に取り組む事業者のコンテスト・表彰の実施を行う形となっております。

 

更に、「介護ロボット等導入支援特別事業」として52億円を確保し、介護従事者の介護負担の軽減を図るため、介護施設等が一定額以上の介護ロボットを導入する際の支援や、高齢者と関わる家族等の介護負担の軽減を図るため、介護ロボット等を活用した見守りを支援する機器を導入する際の支援を行う形となっております。

 

潜在介護人材の呼び戻し

離職した介護人材の再就職準備金の貸付制度の内容としては、離職した介護職員で1年以上の経験を有する者に対し、1回を限度とするが再就職準備金として上限20万円の貸付を行う形となっております。

 

資格要件については、『介護職員とは介護職員処遇改善加算の対象となる職種をいう』という文言が掲載されておりますので、介護福祉士だけでなくヘルパー2級の方や資格を持っていなくも介護職としての経験が1年以上ある方であれば誰でも対象となることが伺えます。

 

再就職準備金としての使い方ですが、子どもの預け先を探す際の活動費、介護に係る軽微な情報収集や学び直し代(講習会、書籍等)、被服費等(ヘルパーの道具を入れる鞄、靴など)、転居を伴う場合の費用(敷金礼金、転居費など)、通勤用の自転車・バイクの購入費などとなっており、ほぼどんな使い方をしても問題ないように思えるような形となっております。

 

再就職後2年間介護職としての実務に従事することにより再就職準備金(上限20万)の返還義務を免除となっておりますのでばら撒きと捉えられても仕方ないかもしれませんね。

介護職を目指す学生の増加・定着支援

介護職を目指す学生の増加と入学後の修学を支援するとともに、卒業後の介護現場への就労・定着を促進するため、返還免除付き学費貸付(介護福祉士等修学資金貸付制度)の実施のための財源を確保しました。

 

内容を見てみると介護福祉士又養成施設修学者への貸付として、学費を月額5万円(年間60万)、3年間通うことを仮定すると180万円の貸付をしてくれることになります。また、その他にも入学準備金20万円、就職準備金20万円、国家試験受験対策費用4万円(年額)を貸付する形となっております。全額免除の条件は5年間、介護の仕事に継続して従事することとなっております。

 

事業実施イメージ

離職防止・定着促進

事業者さんに直接影響しそうな話としては、介護人材の離職防止・定着促進するために介護人材の離職事由の上位を占める要因に対し、総合的な対策を実施する内容です。表4をご覧頂くと記載されておりますが、介護施設・事業所内保育施設の整備・開設・運営を支援や雇用管理改善に取り組む事業者のコンテスト・表彰の実施、介護福祉士を目指す現任介護職員の実務者研修受講機会確保のための代替要員の雇上経費を支援、喀痰吸引等の登録研修機関の開設を支援などがその内容となっております。

たびたびこちらのコラムでも話題にしておりますが、2025年段階での介護労働者の需給ギャップでは37.7万人不足するという予測が出ております。今回の内容は不足する介護人材に対して、厚労省が示した2020年代初頭に向けた介護人材確保対策の方向性となっておりますが皆さんどのように感じられましたでしょうか?

 

私はこれらの政策が勿論悪いとは思いませんが、対症療法的な感じがしてこれで実際に解消するのだろうかと疑問に思ってしまいます。介護職の収入向上や労働環境の改善など介護人材確保のためにいろいろな政策を打ち出すことに反対はしませんが、経営をしている経営者側にもっときちんとメリットが出るような政策も今一度検討するべきではないかと思います。

 

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