地域包括ケア時代に、医療と介護は何を求められるか?―1.「患者中心のケア」

投稿日:2016年1月1日 更新日:

医療や介護など、多職種がともに学び、よりよい在宅医療を目ざす定期研修会・在宅医療カレッジ。その特別企画として、10人のパネリストが、ラウンドテーブル方式で熱くディスカッションする研修会が2015年12月10日東京国際フォーラムで開催された。題して、『地域包括ケア時代に求められる医療と介護の役割』。各界の個性的な専門職が本音で語る議論は、介護業界の経営・管理者必読といっていい。そこで、3つのテーマについて、それぞれのエッセンスを3回に分けて実況してみた。リアルな意見はきっと、経営指針のヒントにもつながるはずだ。

在宅医療カレッジとは?

よりよい在宅医療、地域連携を実現するため、在宅医療に関わる多職種がともに学び、知識や交流を高めていく定期研修会。医療法人社団悠翔会が企画・運営。

 

今回のパネリスト(50音順)

●浅川 澄一 ジャーナリスト(元日本経済新聞編集委員)

●加藤 忠相 株式会社あおいけあ代表取締役・慶應義塾大学客員講師

●亀山 大介 厚生労働省医政局地域医療計画課 救急医療対策専門官/医師

●川島  実 前本吉病院院長/医師

●木村 弥生 衆議院議員(前日本看護協会 政策秘書室長)

●小早川 仁 学研ココファンホールディングス代表取締役社長

●下河原忠道 株式会社シルバーウッド代表取締役社長

●西村 周三 医療経済研究機構所長(前国立社会保障・人口問題研究所所長)

●平井みどり 神戸大学医学部教授・神戸大学医学部附属病院薬剤部長

●野島あけみ 楓の風グループ副代表/保健師

 

モデレータ●佐々木 淳(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長/医師)

カレッジ学長●町亞聖(フリーアナウンサー)

 

高齢者も「自分の体は自分で守る」時代に・・

小早川 「患者中心のケア」を我々の事業で実現していくときに、難しいと感じるのは、我々にとって、患者とは「入居者」であること。入居者が医療にどう向き合い、入居者としてどう生活するのか。ホームの中で多職種連携を機能させることが、実現に近づくヒントに思える。

小早川 仁さん(学研ココファンホールディングス代表取締役社長)

 

平井 ご本人の決定が何よりも大事です。「高齢者は弱者だからお世話して保護する」という意識を変えていかねばならない。また、高齢者側も、好き勝手やって体が壊れたら病院に行けばいい、という考えを改めるべき。「自分の体は自分で守る」の意識を持てば、「先生にお任せします」という高齢者も少なくなるのでは。

平井みどりさん(神戸大学医学部教授・神戸大学医学部附属病院薬剤部長)

 

西村 僕らがどうして、ここに今日いらっしゃる加藤さんがやっているケアを評価するのかというと、エンパワメントであるから。通常は、薬にしても、もらった薬が効くのかどうかという疑問があっても、「医者が偉い」から聞けない。でも、こういったことを疑問に思うことはむしろふつうであって、間違ってはいない。高齢者は、かつて貧しい時代、医師がいなくてなかなか診てもらえなかった経験がある。だから、そういう感覚から抜け出ることができないのでは? しかしながら、加藤忠相さんや小早川仁さん、下河原忠道さんが運営するホームにいる高齢者は生き生きしている。そうあってほしいと願う。

西村周三さん(医療経済研究機構所長/前国立社会保障・人口問題研究所所長)

 

だれもが地域で生き生きと暮らすためには、多世代交流がカギに

小早川 それと、地域で高齢者が生き生きするためには、多世代交流がカギになる。子どもにとっても、高齢者との交流の効果は、はかり知れない効果がある。

 

下河原 うちのサービス付高齢者向け住宅では、駄菓子屋を併設しているところがある。ここには多いと50人ぐらいの子どもが来る。高齢者に「うるさい!」と言われるぐらい来る。そういう形が一番自然なのではないか。たとえば、特養に地域交流スペースつくってみても、子どもたちが自然に足を運ぶには敷居が高い気がする。もっと自然に地域の人が集まれる場所が必要では?

下河原忠道さん(株式会社シルバーウッド代表取締役社長)

 

川島 地域でのお年寄り世帯は、老老介護になっている。街には若い人たちがいるのに、交流がない。若い人たちの力をどう介護に活用するか――。学校教育として取り組むべきではないか。実は今日、講演をして、「『あなたたち(若い世代)だって、歳いったらボケるんだ』と、学校で教えればいいのでは」という話をしてきたばかりでした。

川島実さん(前本吉病院院長/医師)

 

浅川 少子化で小学校の教室はガラガラ。それは当然で、学校は昔の団塊の世代に合わせて造っているからだ。第3理科室などという、使い道がわからないような教室にしている。文部科学省は、「空き教室」という言い方がきらいで、「余裕教室」などという言い訳をして、なかなか開放しない。それらの空き教室を、ショートステイやサービス付き高齢者向け住宅に使えばいいのではないか。そうしたら、施設が足りないなどと言わせないのに。

浅川澄一さん (ジャーナリスト/元日本経済新聞編集委員)

 

木村 小学校の活用については、なかなか難しい面もあるかもしれないが、高齢者側も、高齢者然とするのではなく、就労が求められている。価値観を変える必要があるだろう。

木村弥生さん(衆議院議員/前日本看護協会政策秘書室長)

 

佐々木 患者中心のケアを実現するためには、まずは患者自身が、自分自身の健康管理、そして人生の主役なのだという意識をしっかりと持つことが前提として重要になると思う。専門科診療は病気の治療を確実に行うが、患者全体を診ることが不得意。結果として高齢者は病気の数だけ薬が増え、副作用のリスクが増大し、飲み切れない薬を抱えることになる。医療の優先順位はその人の人生のフェイズによって変化するはず。

また、その人の機能障害だけに着目した介護は、その人に「支えられる側」というレッテルを張る。たとえ機能が低下しても、その人にも何かを支える力があるはず。高齢者を隔離するのではなく、コミュニティの中で強みを生かせるようにコーディネートする、介護にはそのような役割も期待される。

モデレータ 佐々木淳さん(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長/医師)

 

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