株式会社カラーズ(東京都大田区)Vol.2 質の高いサービス提供を生み出す研修


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「身内や大事な人に紹介したい会社であること」を理念に掲げるカラーズでは、独自の研修方法で人材育成を行っている。テキストを用いた通り一遍の研修ではなく、スタッフたちが自ら考え、意見を述べ合う研修だ。その狙いは何だろうか。代表取締役田尻久美子さんの答えは明快だ。

「伝えるとはどういうこと?」をテーマに議論。考える力をつける研修を展開

カラーズでは月に2回、研修の機会を設けている。

その内容は、出席して講師の話を聞いておけばよいという従来型の楽なものではなく、研修テーマについて意見を発表する参加型だ。それにも関わらずスタッフの参加率はほぼ100%。自分の都合に合わせて2回のうちのどちらかに出席すればよい。

 

「伝えるとはどういうこと?」といった抽象的なテーマで、全員が意見を出し合うこともあれば、以下のような具体的な事例が挙がることもある。

 

「介助時に利用者にふらつきが見られました。これは今までなかったことです。利用者の夫は隣室で横になっています。あなたはどうしますか?」

参加者は、「まず体調をたずねて状況確認し、次に夫に知らせて……」などと対応の仕方を自分の頭の中で組み立てていく。それを順に発表し、意見を述べ合う。

 

田尻さんがこうした研修方法を行うのは『考える力をつけるため』にほかならない。介護現場では、予期もしない出来事がしばしば起こる。そうしたいつもと違う事態に遭遇したとき、スタッフに考える力があれば適切に対応できるからだ。

 

「どうしていいかわからないと丸投げするのではなく、こういう状態なので、こうしたらよいと思います、と言えるスタッフの育成を目ざしています」と田尻さんは強調する。

 

自己覚知のための「ワンストライク・ワンボール」で対応力をさらに磨く

研修では、自分がサービスを受ける立場だったら何が嫌で、何が嬉しいかを文章にまとめてもらうことも行っている。

カラーズでは、訪問時に私服ではなくユニフォームを着用し、靴下を訪問先ごとに取り換え、エプロンも身体介助用と料理用で分けるようにしている。しかし、スタッフでこうした決まりを面倒と思う人は、一人もいない。

利用者の立場から考える習慣が身についているので、「おむつ交換したエプロンのままで、ヘルパーに料理を作られるのは嫌なはず」と感じているからだ。靴下の履き替えについても同様である。

 

また、ヘルパーはときに、「自分には理解できない・受け入れられない」という利用者に出会うこともある。そのようなとき、どういう反応を自分は起こしやすいのか、自身で知っておくと、実際そういう場面に遭遇したとき、スムーズに対応しやすいという。

つまり「自己覚知」が重要なのである。

そのため、スタッフ同士がお互いをどのように見ているかを記入し合う「ワンストライク・ワンボール」という研修を取り入れて、スタッフが自分自身をもっとよく知る手がかりとしている。記入方法は、「明るい・暗い」「積極的・控えめ」などの相対する項目を並べ、よりどちらかに近いかに印をつけるというもので、「こうしたらもっといい」ということも、自由記述式で書いてもらう。無記名なので、誰が書いたかは本人にはわからない。

 

これは全員が行うので、「自分ばかりが言われる」という不満も起こらない。また、上司、スタッフそれぞれが相手に対して、「もっとこうしたほうがいいのに」と、思ってはいたが言いにくかったことも、「ワンストライク・ワンボール」を通すと伝えやすい。また受け取った本人も「そう思われているんだ、そういう印象を与えているのか」と、すんなり受け入れやすい。

 

さまざまな研修を積み重ねていくことで、カラーズのスタッフたちは、自然と質の高いサービスを生み出している。

ケアマネジャーからの評価も高い。

「あなたたちが最後の砦だから・・」と困難事例を頼まれることも多いという。

今回の取材先:株式会社カラーズ

 



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